14% 猛省会

 狐さんによる研修が終わった後, 皇さんは僕をつれて皆とともにログアウトを果たしていた. 詰まる所僕はまるきりの足手まといになったのだ. 何故かと言うと, 僕は猿になったあと自分の力をまるで制御することが出来ず, 暴れ回ろうとした所を皇さんに成敗されたから. ここまでみっともない気持ちになったのは久方振りである. しかし, ここで下ばかり向いてても何も進まない.


 えんじゅさんにこれからのことを尋ねるとすぐ答えが返ってきた.


『まずはお疲れ様。あなたとは内定を通知した電話の時以来ね。そんなことはさておき、貴方はまずダンジョンへ赴いたことを省みて”巡警日報”を作成しないといけないわ。そのためにも、チームで反省会しなきゃね。』


 これはやはり仕事なので, どんな形であっても形に残して次に繋げないといけないらしい. それをまとめたものを”巡警日報”と呼ぶ. 僕は手当してくださった槐さんにお礼を伝えてさっさと医務室を後にした.


 会社のミーティング室に行くといい, と先ほど教わったのでその通りにして向かった. 目的の部屋に到着すると, 記憶に新しい面々が待っていた.


『無事だったんだな!よかったぜ信楽!』


 僕の安否の心配を第一声にしてくれたのはもちろん愛葉くんだった. 八月一日さんも同様に反応だったが, 藤堂くんや皇さんからは叱られた. 無責任な力の暴走を当たり前のように責められて耳が痛かった. 怒涛の追求を制止してくれたのも愛葉くんだったので, これからはこの人の有事の際に率先して命をさし出そうと思った.


『まぁ、でさ。信楽を虐めるのはそこまでにして、反省会始めようぜ。』


 議論はもちろん徳のことだった. 護華と呼ばれる徳の解放によってダンジョンの中で僕たちは信じられないような超人的能力を手にした. 個々の能力をまとめると, 皇さんは何でも掴める拳, 藤堂くんは大きい鎌, 愛葉くんは瞬間移動, 八月一日さんは描いたものの具現化だった. 狐さんの話によると, これらはそれぞれの魂の優秀性つまり, 僕らそのものらしい. 僕たちはこれからの目的, 目標を話し合った.


 皇さん, 愛葉くん, 八月一日さんはピュアクライアント. 世界の存在理由について深い関心を持って入社してきた. 最果ての地がゴールである..


 藤堂くんはデバッグクライアント. ただただ非日常的な戦闘を楽しむ. 誰も寄せ付けない強さで他者を先導する.


 僕はサポートクライアント. デバクラとは異なり, 他者への援助をメインに戦う.

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る