9% 壱番目の華

 社長が話を続ける.


『 授与と言っても、貰えばすぐに武器として使える代物ではありませんが、そのへんは狐さんに説明して頂きましょう。』


 信楽はふと思う. "狐さん"とは一体何なのか. それも本人?に聞いてみよう.


『 それでは私たち社員は遠くから見守りますので、ご武運を。』


 そう言い残しまどか社長たちは, 春夏秋冬ひととせさんの背中から勢い良く生えた翼に乗り見えない方へ消えた. 愛葉あいばくんが驚きながらも語る.


『 おいおい、春夏秋冬ひととせさん、羽が生えてたぞ……何なんだありゃ。』


 愛葉くんに1番に反応したのは, 1番小柄な八月一日ほづみさんだった.


『 ……ああいう、世界なんでしょ。いちいち驚いてたらキリないわよ。』


『 ああいう世界ってどういう世界だよ!チビ!』


『 はい?あなた初対面のお嬢様に向かってなんつった?』


「ちょっ……」


 愛葉くんと八月一日さんの小競り合いが勃発しそうな場面を仕留めたのは, 僕ではなく過去に僕を拳で仕留めた皇さんと少し怖い藤堂くんだった.


『 はいはい、行くよ皆。』


『 じゃれ合いに来てるんじゃない。すぐ済ませるぞ。』


 そんなこんなで, 愛葉くん八月一日さん皇さん藤堂くんと僕のパーティはダンジョンの床を踏んだ.


 会場を出てやや無言のまま歩きを進めると, 異次元を感じさせる光景が広がる. 全てが歪んで見える. 会場の外は, 現実世界と似ておらず, いびつさが濃く表現されている.


 白いはずのビルは紫とピンク色の雑な塗装で地面に斜めに突き刺さり, 青い空はどす黒く, 信号機は3色とも虹色に輝いていた.


 太陽と月も隣接していて月の方がまばゆい. そして, 月光にさらされたアスファルトに君臨するのは, "狐さん".


『 また会ったなあ少年。どんな腹づもりか知らんが他の人間なんて連れてきて何しに来た。』


「お久しぶりです狐さん。あの時もらい損ねた武器を取りに来ました。」


『 あぁ、武器か。ついに力を欲したか。まぁそりゃあ欲しいよなあ。。。隣の奴らも同じか?』


 皆が同時に頷く。


『 くれてやってもいいんだが、面倒だなあ。』


「それだったら前と同じじゃないですか!」


『 おうおう。威勢よく叫ぶな。耳に響くだろう。お前も前と同じで何も成長なんてしてないくせに。』


「成長……?それは武器をもらってこれから……!」


『 ……片腹痛い。そうだな。5人まとめてくれてやる。』


 狐さんは元々高い口角をさらに上げてこう続けた.


『 最近なまってるからなあ。まとめてかかってこいや愚民ども。壱番目の華が咲くのは誰だろうな。』

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