8% 徳の獲得

 およそ半年ぶりの電脳世界ダンジョン. そこへ向かうのは僕だけではなくて今回は会社の同期が4人と先輩が1人, 人事が1人, それに社長という異様な面々である.


 懐かしく思える落下の感覚. 大所帯で向かう先は, 何が起こるか判らないゲームの中の世界.


 先程の社長の話から, そこダンジョンはバグと呼ばれるモンスターが現れたり, 犯罪目的のクライムクライアントに襲撃されたりなど多くの危険があることが分かった. また, ゴール地点には神のみぞ知るはずのこの世界が作られた理由が置いてあるらしい.


 自由落下しながらも社長が思い出したように口を開いた.


『 あぁそうそう!それから言い忘れてたことがありました。赤い大男を見つけたらすぐ逃げなさい。我々はそれを達磨大師だるまだいしと呼んでいますが、あれはバグとは比べられない程強いのですぐに殺されてしまいます。


 空間ダンジョン内では、心臓が止まっていなければ脳死していようが現実に戻れるのでそこは理解しておいて下さい。』


 達磨大師?そんな物騒な設定があったのか.

確かに前に皇さんが言ってたような.


『 要点は達磨大師には見つからない、心臓は守れ。この2点です。』


「もちろん逃げますが、僕はそのバグとやらにも恐らく勝てる気がしません……」


『 あはは!そのための、研修ですよ。』


 何を笑ってるんだこの社長. まだ見た事もないモンスターに生身で勝てるほど僕は武術は極めていない. なんて話をしてる間に, に着いた.


『 ……もうお気づきかと思いますが、カメラで撮ったオブジェクトから侵入するためその撮影地点からスタートになります。』


 僕が初めに-ハイフンを起動させたのもダンジョンに入ったのも, 確かに研究室だった.


『 今回の目的は、今日得るものが無いとこれからの仕事が成り立たないからです。分かりやすく言うと武器を仕入れて頂きます。


 そして、今回の研修はグループワークで行います。新卒組の"信楽しがらき 雪慧ゆきさと"、"すめらぎ 汐華きよか"、"愛葉あいば 颯叶はやと"、"藤堂とうどう じん"、"八月一日ほづみ くるる、この5名1組です。』


 皇さん以外の名前を始めてここで聞かされた. この会社は珍しい苗字の人間しか採らないのだろうか. それよりも, 僕はグループワーク系は大の苦手だ. いつも話すことが見つからない.


 すめらぎさんから挨拶が始まった.


『 よろしく。』

『 よろしくな!』

『 よろしくね!』

『 ああ。』

「……よ、よろしく。」


 藤堂とうどう君だけがぶっきらぼうにやりすごした.


『 君たちの初ミッションは、狐さんに会いに行き、全員"徳"を解放することです。』

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