　圓（まどか）社長は神妙な面持ちのまま話を続けた.

『実は、新卒を採ったのは初めてどころか、当社は立ち上がって一年目の生まれたての子鹿会社です！』

　！！！！

　新人5人はざわつかないが, 目が点になっている. 僕たちはこの会社のことを知らなさすぎる. まさかノンキャリアの会社だとは.

『私は当社を-（ハイフン）アプリがリリースされて間もなく立ち上げました。歴史が浅い理由はこれに尽きます。しかし、起業して1年、何の実力も実績も無いわけではありません。

　-（ハイフン）のアプリがインストールされる人間が選択されるパターンはまだ判明しておりませんが、"善"側の人間はもれなく採用させて頂いております。

　当社の理念はまさしく、突如現れたダンジョンから国民を守ることです。人々を未曾有の危機や窮地から救い出します。その為パトロールが主な業務になります。そのついでに最果てを目指す形をとっていますが、それはあくまで付加価値です。』

　初めて自分が入る会社についての詳しい説明を聞いた. 僕は運動神経は頗（すこぶ）る悪いのだが, まさかパトロール業務だとは. 今更だが信念が揺らぐ. 信念も何もなかったが.

『諸君らの、いわゆるチュートリアルは終わっていると把握している。が、ダンジョン内で"力"を既に行使できる人は、もういるかな？』

　一人, 手を挙げた. 横目で見たが女性だった. 力？まさかあの狐さんの言ってた事は本当。。。

　思考を巡らせていると, 横目で見た視覚情報が, 僕の記憶を劈（つんざ）いた. あの女性は, ダンジョンで僕を殴った。。。

『皇（すめらぎ）汐華（きよか）です。』

　やっぱり. 同じ会社に同期として入社するなんてどんな奇跡だ. というか同い年だったことに今世紀最大の驚きを隠せない.

『 ……優秀ですね。もう貰った方に入社して頂けたのは本当に喜ばしい限りです。皇さんには後でお話をお聞きします。

　さて、皇さん以外には説明が必要ですね。研修で体感して頂いた方が早いので、内定式はこれにて締めさせて頂きます。

　皆様-（ハイフン）の起動をお願いします。今回ダンジョンには私、圓（まどか）神猿（まさる）、人事部新卒担当の槐（えんじゅ）日南子（ひなこ）、さらに君たちの先輩の春夏秋冬（ひととせ）宍道（しんじ）が同行させて頂きますのでご安心ください。では、参りましょうか。』

　研修！？

　そんな内容頒布（はんぷ）資料には, いや, 資料も配られていなかった. 電話でアプリを再インストールして来てくださいと伝えられた以外何も用意していない. 僕は引越しを済ませた新居の掃除や荷解きをしたかったので, そそくさと帰宅する心構えしかしていなかった.

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