2018.11.2.家賃(金縛りについて)



うたた寝の中での夢



同居人A

「あれ?」


「あん?」


髪を揺らして首をかしげるいつものしぐさ

「今月家賃払ったっけ?」



(覚えているのはこれだけ)



久しぶりに金縛りにあった。


思春期ぐらいから始まった金縛りは、

近頃あまりなかった。


でも一時期かなりそれに凝ってた。


霊的なものではないと理解してからは、

それほど恐怖も感じなくなった。


意識のある夢、ということで、

金縛りの映像(自分の部屋)に、

自分の好きななにかを投影させるすべを、

真剣に練習したこともあったっけ。


そういう経験があったから、

長編の

『ベッドサイド・ナイトメア』

を書くに至った。



いまだに慣れないのが、

金縛りからの抜け出し方。


あんまり不真面目にやったり、

恐怖感ゼロだったりすると、

眠りに落ちてしまう。

(ある意味それは金縛りの脱出だけれど)


金縛り状態から、

覚醒するのがなかなか難しい。


霊的な金縛りの話をきいていると、

おへその下、丹田に力を入れると抜けられるとあるが、

そうそううまくいかない。


結局、金縛りの中で叫び散らして、

体を起こそうともがいて、

そして、フと目覚める。


目覚めて、「はぁ疲れた」となる。




私がなぜ

金縛りはこわくない、霊的ではない(あくまで自分のは)

と気がついたか。


はっきりと覚えている。


学生時代だ。

自室の床に祖父の使っていたマットレスを

ぼんっと置いて、その上に布団を更に敷く、

という半ベッド的な寝床で寝ていた。


ピンクのコンポで

syrup16g の Hell-see のアルバムを

音量1 という限りなく小さいレベルでかけて、

いつも寝ていた。


私が悪夢と金縛りにうなされていた時期だ。

異形が部屋に入ってきたり、

足のない女の子が真横にいたり、

てるてる坊主みたいな目玉の化け物に組み敷かれたり、

そういう経験をしていた。


「まただ……!」


とその夜も金縛り到来に恐怖した。


けれど、おかしな点を発見する。


私は体にタオルケットをかけて寝ていたのだ。

その時期は真冬で、

私は羽毛布団をかけているはずなのに。


「ああ、これはただの夢なんだ。

ドアがゆっくり開いて、

幽霊が入ってくるなんて、

いつも夢だったんだ」


と。


それから

部屋の出入り口から何かが来るということは

減った。


恐怖心が、やつらを生んでいた。



20歳を超えて、

いま下北沢のアパートで久しぶりの金縛り。


怖いものは来なかったけど、

思い返すと、

私はいまだにドアの方を気にしていたな。

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