一人の季節XVI
「何が黙っていろだ? そもそもなんで俺がお前の指示に従わないといけないんだよ!」
「いいから静かにしろって、今、本当に危ない状況なんだよ!」
灯真は、必死になって将気を説得する。
口を塞いで、さっきの妖がこっちに来てないのか確認する。まだ、少し遠くの場所にいるようだ。
「なぁ……一体どうしたんだよ。お前、何に怯えているんだ?」
「それは……」
「はっきりしろよ。何も分からないとこっちだって分からないだろ‼」
真剣な目で将気は灯真を睨みつける。
「だったら、お前は妖が本当にいると思うか?」
「はぁ? 何を言っているんだ? いるわけないだろ?」
「だよね……」
灯真は溜息をついて、目をつぶる。やはり、誰も妖を視ることは出来ない。
「お前は妖を視ることができるのか?」
灯真は小さく頷く。
「マジかよ……」
「あそこにいるだろ?」
灯真の指差す方向に目を凝らして視てみると、なんとなくぼやけて見える。小さい頃はこういった現象を視ることができるが、歳を重ねることによってその力は薄れていく。
「……何となくというよりかボヤッとした何かは分かるような気がする」
将気は何度も目をこすりながら視る。
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