一人の季節XIV
「あ……」
目が合った。
それは隣のクラスの男子生徒だった。その後ろには母親らしき女性が姿を現した。
「あ、え、と……」
その男子生徒は、言葉が空回りして黙った。灯真と同じくらいの身長で長袖半ズボン姿の少し落ち着いた少年だ。
少年サッカークラブに所属しており、小学生の中では特にサッカーがうまいと聞いたことがある。そんな少年が灯真の目の前に現れた。
「ええと、隣のクラスの……」
「浦原です。浦原将気の母、
と、若い母親が軽く会釈をした。美咲をあまり歳は離れていないくらいの美人な女性で、茶髪を腰の位置まで伸ばしている。
優しくおっとりとした性格であり、上品なお嬢様な感じがした。
「有馬灯真の母、美咲です」
美咲も取り皿と箸をシートにおいて、挨拶を返す。
「浦原さん、どうしてここに?」
「うちの将気がこの場所が一番桜の木が綺麗に見える場所だと言っていて、それで……」
泰子、将気の頭を優しく撫でながら言った。
「同じですね。うちの灯真も言っていたんです。いつもこの公園に来ているらしくて、ここが綺麗だと……」
二人は何となく会話をしていた。
「…………」
「…………」
灯真と将気はお互い黙ったまま、目の前にいる者を見ていた。
どこか似ている二人だが、何も接点も持たない二人。相対する二人は、どこかにてない所もある。
「お前、隣のクラスの有馬灯真だろ?」
「そうだけど……」
灯真は、将気に興味すら持たず、ウインナーを食べる。
将気は、少しイラっと来た。
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