一人の季節XIII
二人は大きめのシートを芝生の上に敷き、靴を脱いで荷物を置くとその場に座った。
「桜の木の真下でご飯を食べるなんて何年ぶりかしら……。いいわよね、風情があって」
「…………」
弁当を開いてお昼の準備をする。紙で出来た小皿と割り箸を用意して、コップにお茶を注ぎ、手を合わせた。
「頂きます……」
灯真は、小さく会釈をして言った。
「はい、召し上がれ」
美咲も手を合わせて、灯真の感謝の言葉に優しく返した。
弁当の中身にはおにぎりや卵焼き、ウインナー、唐揚げなど子供が好きそうなおかずばかりが入っていた。
一つ、一つずつ箸で取り、食べ始める。しっかりと味付けされた料理は美味しくて、次々と口の中に入っていく。
「美味しい?」
「うん、美味しいよ……」
食べ始めると集中してしまう灯真に美咲は話しかけた。
すると、そこに誰かの人影が見えた。
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