一人の季節Ⅻ

 灯真は難しそう顔をしながら想像もしない事を想像していた。


 それからは一階の売店で飲み物を買い、来た道を引き返す。今度こそ、灯真がほとんど通っている公園を訪れる。

 公園内にはフットサルができるくらいの広さの広場と、ブランコ、滑り台、登り棒など他にも色々と遊具が設置されていた。

 灯真と同じ学校のクラスメイトや他のクラスの知っている顔が何人かいる。

 だが、灯真に話しかけてくる奴はいない。

 空いている場所も少ない。

 主に桜の木の下はほとんどの人が場所を取っており、灯真は周りを見渡した。

「ママ、場所が無いけどどうする? 僕、一応お気に入りの場所知っているけど……」

「……そこって何があるの?」

「桜だよ。それもそこそこ広いし、あそこだったら誰も知らないと思うよ。今日は、人が集まっている方にみんな流れて行っているから……」

「そうね……。じゃあ、灯真の意見に賛成しようかな」

 美咲は、灯真に手を引かれてその場所に案内される。崖との境目に設置されている手すりと茂みの間にある細い道に入る。

 少し奥に入ると、一本の満開の桜が見えてくる。

 本当に人が座ったり横になったりできるほどのスペースがあり、静かで落ち着いた場所であった。

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