雪解けてXIV
「なら教えよう。私の本当の名は朧だ。月の龍と書いて『おぼろ』と読む。かっこいい名だろ?」
川姫=
妖が自分の本当の名を話すのは信頼している証拠である。
元々妖は、自分の名を明かしてはならないのだ。明かしてしまえば最後、
だが、主である灯真に名を明かせば、それを防ぐことができるのだ。だから、『契約の儀』という術がある。契約を交わした
吉岡家次期当主である
「おほん。改めて、朧。これからもよろしく頼む」
「ああ、私の主よ。喜んでその頼み、聞き入れましょう」
朧は正座をしたまま手を床につき、深々と頭を下げた。
すると、雪菜が目をこすり、欠伸をしながら丁度起きた。
「ふわぁ……。あれ、いつの間に眠っちゃたんだろう。あれ? 灯真様! いつの間に起きていらっしゃったんですか!」
いきなり灯真の体を強く揺さぶった。
「ちょっ、雪菜、止めろ! か、体が……」
「あ、すみません。でも、本当に良かった……。もう、そこまで回復して入れば一安心ですね。もう、倒れないでくださいよ」
「できれば俺もそうしたいんだけどな……。そう言えば、俺が倒れてから短い時間で何かあったか?」
灯真は、雪菜に訊く。
「そうですね。倒れた後、あの女が治癒の術をかけてくれて、その後は私が灯真様をおぶって家まで送っていきました。まあ、途中で色々と変な目で見られたんですけどね……」
なぜか、声のトーンが後々低くなっている。
どうやら帰り道に何かあったらしい。灯真は、どんな様子で家路も着いたのだろうか。
「ああ、それは大変だったな。その間、朧は何をしていたんだ?」
「私はその後ろで歩いていた。雪菜が灯真を家まで送っていくまで……」
「この女、薄情者ですよ。今すぐに契約を切るべきです!」
雪菜は不服そうに言う。
「それは無理だ。灯真には本当の名を言ってしまったからな……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます