雪解けてⅥ
こんな美人で優秀な先輩と一緒にいるだけでいろんな
「なら、
「ほう、私の姿を見破るとはお主はこの私と同等、いや、それ以上かもしれない。だが、私はそれだけで相手の実力を判断する男ではない」
いきなり姿を現したうざい口調の青年は、雪菜を小馬鹿にしている態度を示した。
古びた着物を着ており、眼鏡をかけた
「
「夏帆、お前は頭が固すぎるんだよ。周りはお前みたいに頭が良くないんだ。いつも言っているだろ? もう少し、皆の輪の中に入ったらどうだって……」
「ほほう? それは私に対する反抗って言いたいのかしら?」
「馬鹿馬鹿しい。お前と喧嘩して俺に何の得があるんだ? 後になって部屋が汚れるだけだろうが……」
夏帆と月詠は、互いに両手を合わせていがみ合っていて全く話が前へ進まない。
雪菜の事などもう忘れているようだった。
「
隣に座っている雪菜が、小声で訊いてくる。
「まあ、いつもの事だから大丈夫だと思うよ。中学からこの二人を見ているけど、いがみ合っていない日を見たことが無いから」
「それって犬猿の仲じゃ……」
雪菜は夏帆と月詠を交互に見て、本当にこの二人は主従の関係があるのだろうかと思っていた。
周りの本棚には、この世に出ている本が並んでいつと思ったらそうでなく、霊力者やそれに近い者が扱う道具や本がずらりと並んでいた。どれもすべてが彼女、夏帆の物ばかりである。
吉岡家は、古くから代々その家系で
この部活の表向きは文芸部となっているが、裏の顔はこういった妖の視える人間の集いの場である。部長は夏帆で、部員は灯真ともう二人在籍しているが、この場には未だに顔を出していない。
「さて、それでは本題に入ろうか。灯真、何か私に相談したいことがあるんじゃないの?」
「はい。夏帆さんは川沿いにある小さな小屋を知っていますか?」
「ええ、あの汚い使い古された小屋の事でしょ。それがどうしたの?」
「あの近くに今朝、美少女の妖が現れたんですよ。ああいう場所に現れる妖って知っていますか?」
「なるほどね。美少女の妖か……。灯真はその子が気になるんだ」
夏帆は面白くなさそうな態度を取り、灯真に対しての当たりが強い。隣では雪菜が灯真の横腹を抓っている。確実に
「気になるというよりか、どこか遠い目をしていたんですよ。あれは、何か未練があると思って相談しているんです」
「夏帆、たぶんそれは
「川姫? 月詠、誰よそれ……」
夏帆は隣で立っている月詠に訊く。どうやら彼女も把握しきっていないらしい。
「川姫というのは、高知県
「それで、他には?」
「ああ、福岡では、若い男たちが水車小屋の近くに集まっていると、いつの間にかに現れるらしい。男たちはその
「なんだか、
「だったら、その仮説が本当だとしたらあいつは俺を誘き出そうとしてるとでも言っていいのか?」
「おそらくはそうだろうな。俺だって実際に見たこともないからどういう妖なのかは知らないが、たぶんそうだろうよ」
月詠は、棚から取り出した本を読み始めた。
「
「大げさだな。
「ふむ。手出しをしないことに関しては認めてもいいけれど、その代わり、私も同行するわよ。彼女一人に任せてもしもの事でもあったら私にも少しは責任があるからね……」
夏帆は言葉とは逆の態度を取っていた。目の輝きが幼い少年の目をしており、好奇心で満ち溢れていた。それを見ていた
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