5 ~醒の二少女~
突然の連続だった。
気持ちの悪い大きな音が鳴り響き、
城北公園に来てからは影の怪物に
頼みの
無情に広げられた闇の
かと思えば、どこからともなく
もう何が何やら、感情も思考も追い付かない。
だが、なによりも一番
「まったく、今日は随分と
探偵さんに
そのまま体を立たせ、
我らが日本の民族衣装、振り袖・着物。今の今まで着ていた、
場違いでありながらもこの場に
「
目の前の後輩の変わりように、親友の
今しがたの衝撃で転んだ状態のまま声に出す私に、全身
無造作に結ばれた
彼女の見下ろす視線は変わらないが、目線は私と近くなる。
まっすぐに私を見つめる、その綺麗な
「
それだけを言いきると、
「あ、あれ……のら、ちー? じゃん。てかなんで
「一応、あなたも敵ではないということにしておいてあげてはいるけれど、私は毛ほども信用していないから。
「あ、あっははは……。ま、魔法少女ちゃんもおひさー」
「ボクも、あんたの顔は覚えてるよ。
いったい何をしたというのだ、この女子高生探偵は。
その得体の知れない高校生の引きつる顔の隣、
「……スゴい! 魔法少女が二人も!」
「ミキちゃん魔法少女やったん!?」
「一応あーしも魔法少女なんけどな……」
「だから双子。今はそこに問答を……」
「……《ミキ》?
しかし、薄ピンク魔法少女を襲う影の衝撃波が、それを途中で
巨大な鳥の影は、その余波だけでのっぴきならない現状の空気を呼び戻させ、私達の斜め後ろ、広場を囲む木々を
「ボクっ
「だい、ジョーブだ……よ。それよりもあんた、こいつらとは戦えるの?」
お尻を地面に着けたままの私の元まで転がされた薄ピンクの魔法少女は、駆け寄る
しっかりと広場の芝を踏み締めて立ち上がる、薄ピンクの魔法少女から
「……ええ。と言っても、戦力になるまでには時間がかかるわ。経験だけならある、といったところかしら」
「分かった。じゃあ、少しなら時間をかせいであげるから、なるべく早く戦力になってほしいかな」
この男を自分へ寄こすなら、これ以上、彼自身は何もしない、と。その、イワオくんと対峙していた男は、彼女が飛び去った後も、状況の変化に追い付いてないのか、廊下の壁に背を預け、黙って座り込んでいる。
「こう、すけを……どうする、つもり?」
その声は、彼女自身がこれほど怯えるまでに何かをしたという相手を、気にかけているようだった。
「いいっえ、
ただ、と不自然なスーツの男は続ける。
「そう。
気持ちが悪いくらいに表情が死んだ顔から吐き出す、ミスマッチも
薄ピンクの
しかし、魔法少女の戦いに慣れていない私はもちろん、ディザイアーの意表すらも
「――!!!
助手のスポーティ少女は探偵の指示を耳に受けるが早いか、シャツの下、背中から取り出したロープを、電光石火の
魔法か何かで飛び出した
そのすぐ後だった。
薄ピンクの小さいリボンが付いた白い靴のつま先。
恐らくは、そこが境界線。
突飛な攻撃を仕掛けてきた魔法少女に対し、樹木の中に
その衝撃波はなぜか目に見え、ピンと張られたロープに勢いを殺された薄ピンクの魔法少女に届く寸前までの範囲全てを、喰らい尽くした。
まだ生きている公園の照明に薄暗く照らされる、広場の芝や、影の怪物の周りに立つ木々。ほの
それに
「再生、捕食……? っ、生存本能――『生存
曲解の余地もなく、緊迫した表情で探偵さんが口にした言葉の意味は、すぐに呑み込めなかった。けれど、現状を見ればこれだけは分かる。
理屈はともかく、今のディザイアーの攻撃を察知した探偵さんは見事だ。ほんの少しでもタイミングが遅れていれば、彼女は衝撃波の餌食になっていたのだから。
不自然に線分けされた枯草の手前の芝生に、薄ピンク色の魔法少女は落ちる。それを
それを、私がはっきりと分かったのは、
「「
そして姉妹が声をかけた途端、薄ピンクの魔法少女はここにきて一番の
「エミユメ?!?! なんで――近付いちゃダメだ!!!」
魔法を使ったのかと見紛う、恐らくは反射的な動きだったのだろう。影の怪鳥から完全に外した視線ごと、謎の魔法少女は
私が、謎の薄ピンク魔法少女を目にしたのは、それが最後だった。
「おっほほほほ。まーっあ、私がこっこへ来た目的はとーぅに無くなっているンのっで、
「無くなったって、いったい何をしに……」
「おっほほほほほ。あなンたにぃっは、感謝しておりますっよ
不幸屋は確かに言った。自身の本来の目的は、すでに達成しているからと。
彼から買い取り、売りつけた不幸は、ある条件をもって不成立となるから。
普段は眠っている彼らが、《 彼女 》と共に、《彼女たちの元へ》向かった時点で。自然にそうなる、と。
激しく
その視線の先に突然、薄ピンク色のドレスに身を包んだイワオくんが現れる。
驚きに誰もが声を出せない中、今しがたの
「あら懐かしい魔力を感じると思ったら」
「懐かしい顔が僕たちを覗いているね」
花びらやツタのような綺麗な台座に、無骨な石がはめられた指輪だ。
そこから、二つの声がする。
「本当だ。帰ろうか、私たちのもと居た場所へ」
「そうだね。
「っっ!! 待って!!」
イワオくんの抵抗をすり抜けた光は二つに分かれ、ロープを握る助手少女の左右の背後へ飛んで行く。
片割れは
片割れは
それを見て、一足先に真相へ足を踏み入った探偵さんが、
「まさかとは思ってたけど、やっぱり、しょーゆーことか! 不幸に不幸を掛け合わせて極上の不幸を……ってか。いかにもあの
するとそれを待ってたとでも言うように、道端の粒石を調達したと思わせるネックレスと、草花をこしらえた髪留めが、
変わらず意識を向けていたはずだ。なのに、私の隣
先ほどの
片や
いったい何が起こったのか、さっぱり分からない。
私以外の、
そして高校生探偵魔法少女が口にした、先の真相の続きでようやく、私は彼女たちの正体を理解した。
「あーしの読みがちょっちズレてたんは、こーゆうコトだったん。
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