~奮の進獣医~
「どうしたの? わー、大っきい猫ちゃん」
「えっ?」
夕日の
彼女の視線の先、
背後から覗く女性の注目に気付いた
「……あ、こ、この子、
「な、ナーォ……」
「あ、あれ……?」
「あらぁ、体に
少女の台詞を
「私は
「あ……
「トモナか。私、この近くの友達のお菓子屋さんで働いているんだけど、こう見えて
「ぬ……! な、にゃ、にゃごー……」
カーディガンの女性、
「あらぁ。もしかしてこの子、病院とかそういうの分かるのかな。ダイジョーブ大丈夫。今ここで
あれこれと苦戦しながらも、
その手際の良さに、
抵抗しても無駄かと悟ったか、あるいはもがく体力もすり減ったのか、焦げ茶色の猫は
「うん。色んなところをケガしてるけど、目立った傷とか症状とかは無さそうだね。
「あったあった。この傷薬、動物と人の両方で使えるヤツなんだ。まぁ両用だから専用のヤツよりは応急用って感じだけど。ちょっと
そう言って、
多少
その治療すがら、
「ふふ、夕焼けに当てられてるのもあるけど、この子、
「……」
「――トモナ。何かあった?」
「……え?」
一瞬
「いやね、
「…………」
続けられる
その間に治療を終えた
その様子を視界の
「……小さい頃、お母さんが、しん――亡くなっちゃったん、です。それで
ぽつ、ぽつ。と、とめどなく言葉を落としていく
少女に抱えられる
「色々あって、立ち直れるようには、なったかなって、思ってたんです。最近は、そうでもなかったんだけど、でも、このところ、おばあちゃん、よく息を切らしたり、いつもより、疲れやすかったりして、て……ちょっと、しんぱいで――
次第に
「そっか。……置いてかれるのは、ちょっ……と、
「……」
耳元に紡がれる
身動きが取れない
過去数年、
「ダイジョーブ大丈夫。一度は、立ち上がれるようになれたんでしょ。トモナは強い子だ。友達のことも考えられてる。あんたは一人じゃない」
「私にも、一人、居るんだ。トモナよりちょっと小さいけど、危なっかしいけど、頼れる子が。何かあっても、トモナは一人じゃないよ。友達を頼っていい。その時は、私のお店にも
顔を上げた少女の、
そこで、芝生に置かれたトートバッグから短く響く
「……?」
「あー。多分あいつかな」
「あいつ?」
顔から離れた人肌の温度に
「あー。ちょっとね。……うん、私の元カレ。良いヤツなんだけど少しメンドクサくてね」
画面を半分だけ覗かせた
「それじゃ、私は行くね。その子、とりあえずは大丈夫だと思うけど、少しでも具合悪そうにしたら病院に連れてってあげてね」
「病院。えっと……
「いや
「あ……そ、そっか……」
小さく動物病院、動物病院、と
それから、
様子を見てこまめに包帯を取り替えるように、と言い聞かせた
「一人じゃ、ない」
彼女から受け取った言葉を、口の中で
思い浮かぶのは、小学校から中学まで変わらず
自身を支える腕から、少女の
この短い時間で
「
「わっ。やっぱり
「そうか」
「……? きみは。きみはなんていうの?」
「ワタシか。今のワタシに、
「そっか……」
「じゃあ――――
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