2 ~笑の護少女~
地震かと思うような気味の悪い振動が響いた。そしてその振動が来たと思われる方向、
それはむらさきに
それは閉め切ったカーテンの
ディザイアー。
さっきの振動から遅れて、待機モードから緊急起動したテレビが緊急警報を
いったい、なんだっていうんだ。
どうして僕の周りでばかり、
ましてや一か月前と同じ、姉さんに危険が迫る場所で。ついでに言うと、よりにもよって、家の近所でだ。
でも、今回は学校や街に居た時とは違う。いま一緒に居る姉さんを、避難させるんだ。
姉さんは
十年近く前から日本で開通された電話番号が、頭によぎる。
自宅療養者や寝たきりの
けれど、それは姉さんには使えない。対象者ではないから、ではなく、誰が来るか分からないからだ。もし救助に来た人が男だった場合、姉さんはパニックを起こしかねない。
「姉さんっ。……行こう」
「い、いわ……お」
家のすぐ近くに現れた影っぽい怪物。
なにか――。
なにか、嫌な予感がする。
早く避難をしないと、取り返しのつかないことになる。
恐怖が支配しているであろう心で、
すぐに重心を
いやダメだ。
あれは姉さんにゴミを近づけさせないための、姉さんを壊したゴミを掃除するためのものだ。姉さんを守るのは僕自身でないと。
そんな考えの中、気を持つように姉さんを元気づけながら、玄関のドアを開く。
そこには、絶望が居た。後ろの、ベランダの向こうの怪物とは違う絶望が――。
「はっ。やっと見つけたぜ」
力無く嫌がる姉さんを
身体を支える姉さんが、ピシっという効果音でも鳴ったかのように
「――コースケ……っ」
「ったく、
コースケのそのセリフと被さるように、
それに
「こういう時なら、顔を出さざるをえないもんなあ。
「――――ッッ……」
そう遠くない場所に、怪物がいる状況で、その顔は歪んでいた。
なんで、コイツはこんな状況で笑える。
なんで、コイツはこんな状況で、このタイミングで、ここに
「……ャメロ」
また一歩、近づくコースケに、乾いた声しか出ていかない。
その声に体中の水分でも持っていかれたかのように、身体が軽く――いや違う。いつも僕を困らせる左手足の
日が落ちてもまだ暑い空気に、汗が体中から
そうだ変身だ。
あれに――『魔法少女』に変身しろ。
何のために手に入れたチカラだ。
ここはマンションの角部屋で、すぐ
違う。この時だ。こいつと、コースケと対面した時のために――いや違う。このチカラは、なんのために。
コースケが近づく。
やめろ。
姉さんに
変身しろ。
よろける体が、今出てきたばかりのドアに姉さんごと背中を打ち付ける。そこへ、僕よりもずっと背の高い、今度は
触るな。
「おい」
「……ヤメロ」
手が伸びる。
変身しろ。
姉さんに触れるな。
「彼氏が来てやったってのにそんなつれねぇ顔すんじゃ――!!」
「ぃゃッ」
へんし――――
「待って!!」
「――――っ?!」
姉さんの目前。僕の目横まで
「はぁっ、はぁっ、はぁっ――」
「あぁ?」
男の手を
「んだガキぃ――!」
「ガキじゃない!」
イラ立ちがふんだんに込められた
エレベーター側から現れたコースケとは反対の、
ともなだ。
「はぁ……はぁ――
「…………ト、モ、ナ……?」
姉さんの、今まで
小さくもはっきりとした呼び名に自称魔法少女は姉さんへ優しく
「な……なに言って――」
「あなたがお姉さんの――イワオくんとお姉さんの笑顔を
ともなの体が、あっという間に光に包まれた。かと思った次の瞬間、ともなの――魔法少女の衣服とまとう空気が、ガラリと変わった。
《魔法少女》を目にしたコースケは、わかりやすく
「んな……!? ……んで、なんで魔法少女が
「関係なくない! イワオくんは
ぎりぎり、と
魔法少女の左手には、さっきまでは無かった
「
勢いを
たった数歩。助走も何もいらない距離にある小さな頭へ大人の男のこぶしが振り下ろされる。
「(柔らかい、マシュマロのイメージッ)」
見ている以外できなかった、いきなりの暴力。
それが
肩を引き首をひねる。そのわずかな動作でパンチをよけたともなに、コースケが勢いそのままにおおい
そして次に魔法少女が「ゴム」か何かと
正確には、何もしていないんじゃない。魔法だ。
ともなが、魔法少女が【魔法】でコースケを受け止め、弾き飛ばしたのだ。
よたよたと浮いた足取りで、コースケは後ろに倒れ込む。
「っ……く。オマエ……国家魔法少女だろ!
声がガラガラになるほどに怒りを乗せて叫び上げるコースケに、ともなは僕や姉さんの前を越えて立ち
「
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