10 ~憧の鹿少女~
「こら! 学校以外の場所で私の名前を勝手に
商店街に
「え!? ――あっ、ご、ごめんなさい? リサせんぱ、あ。えっと……アリサ、先輩」
普段呼び慣れたものとは違う、二重の意味での先輩の
遠くの地方から来ていることが多い
「で。この状況はなんなの? その頭は……まぁうん、とりあえずいいとして」
「あ、
「あー……」
「よーするに、魔法少女になってひったくりの男を追いかけたはいいけど、不器用なアンタのことだからこの人だかりも巻き込んでしまう。ってとこね」
「う、うん」
そう。
今の
それを
「お巡りさん、あの男! あいつが私のルヴィーウィントンのバッグを奪っていったの!」
先程も聞こえた女性の声に、
バッグを奪われたという彼女が叫びながら指を
「ちっ。クソッタレが!! ポリ
「っっ!! アリサ先輩っ。危ない!!」
警察官を目にして、やけになり
「――てめぇの手足を
しかし、
「ッッ。すました
「リサ先輩!」
普段の呼び方に戻ってしまっているのにも気付かず、駆けだそうとするも動揺に足を取られ、たたらを
「私が来る前に何があったか知んないけど、この時代に
力任せに握っていたであろうひったくり犯も、自身の体の方へ押し戻される力を上手く
「んなっ?!」
「女子供だからって下に見てるから、こんな小娘に
「っの、クソ
「
高々と振り上げられた白い足が、怒りに身を任せた男の側頭部をしっかと
その
「――ナメんじゃないわよ!!」
「ぁ、しましま……」
ポツリと呟く
「男だろうが女だろうが、結局は自分の
それを
「いいぞ姉ちゃんー!」
「カッコよかったぜー!」
「ナイスキック!」
「鹿の姉ちゃんも途中までは良かったぞー」
「姉ちゃんいい回し蹴りだったぞー!」
「ひゅーひゅー!」
ひったくり犯の男の人を取り囲んでいた人達が、次々と歓喜に
すると
「言っとくけど事故だから! サービスとかじゃないからな!」
その後は、駆け付けたお巡りさん達に
事情聴取については、お巡りさんに顔見知りの
ある
「トモナからちょろっと聞いてたりしてるとは思うけど、私は
「一年の
「あー。さっきのは忘れてー……」
そんな
「スカートの下に短パンを
「日常的に
「あと蹴るときは『ちぇいさー!』と
「だから自販機を蹴る習慣なんて私には無いつってんでしょ!」
「自販機?」
「アンタも反応しなくていいから」
「『ちぇいさー』がダメなら『ちぇりお』でも――」
「刀も集めてないから!! いい
しかし
「まぁいいわ。そうだ、アンタたち、こんなトコで何やってたの? 中学の校区からはちょっと
「ちょっと、近くのスーパーにタイムセールのお肉を。といっても、この時間ですともう目当てのものはないでしょうけど」
頭上に浮かぶ商店街の
それを聞いた
「おー。すっごいタイミング! 私もさっきココとは違うとこでウチのお使いしてたんだけど、
そう言いながら、エコバッグにガサゴソと手を突っ込む
「
それに対し、
「ちょっと、離れて下さい
「なんでそんなんでテンション高くなってんのよアンタら………」
そんな
「だって
「右に同じくです。……それよりも、こんなに良いお肉を貰ってもいいんですか?」
なおも
それに
「あー。いいわよ。別に
「「
「牛肉……っておいしいのかな?」
「牛肉は高いんですから、多分おいしいのでしょう」
「でも牛肉って、凄く
「なら
「なるほど、ガムみたいな感じか」
「ですかね」
「二人してアホなこと言ってんじゃないわよ」
真剣な表情で語り合う
「牛肉くらい、小学校の給食とかで食べたことあるでしょ……アンタら」
「そうなの?」
「なんでたった三年前の六年間のことも忘れてんのよ!」
「全部おいしかった……くらいのコトしか
「
「
「そういえば
「まさかとは思うけど、アンタも
「いえ私は、小学校は私の代までお弁当
「あー、そっか……まぁなんていうか……おおよそは理解したわ」
なんとも言えない一瞬の
それから少しだけお話をして、
数日後に
そよ風に
「セーラー服、いいかも……。
脳裏に焼き付いた、先程の
「……高校……の話ですか?」
「え? ……うん。ちょっとだけだけど、進路が決まったかな、って」
「そうですか。……それは良かったですね」
結局、時間的にお肉は諦めるしかない。いいなぁ、豚バラ肉。しかも286g。
駅の前までお見送りをしについて来てくれた
「それじゃまた明日ね。なんか色々あったけど、今日は
「
そこで
「――で。まさかその
言われ、自分の頭に手を
鹿。
「あ」
第二章 - 道導べ 完
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