8 ~間の穏少女~
今日は、久々に静かな一日だった。
あの人が
いつしかあの
最初こそは
休み時間にクラスメイト達がユウウツだと
一年生の教室が並ぶ三階から、階段を下りて
そしてそれに
今日の
そろそろ冷蔵庫の中身を
家とは反対方向に歩きながら買い足しておくものを頭の中で整理する。
今日の目当ては、お
特に卵は、月に一度の
お肉のタイムセールは、午後四時から五時までの一時間。良いものを買いたければ始まってすぐに行くべきだけれど、今日だけは
携帯端末の
カゴを取り、
最近、イワオくんの件とは別に、
受け取った整理券に書かれている数字は、15。この数は、自分の後の整理券の数。ここのルールは少し
つまり、私の番で十七パック以上
タイムセールのベルの音が店内に響き渡る。
もはやタイムセールではなく限定セールになりつつある
時刻は四時三十九分。
二十四分に終わってしまった卵と、まだ時間の残っているお肉のタイムセールの戦果は、取りつ取られつ。
けれど、お
あとは、アプリクーポンの対象商品のティッシュと、値引きされている野菜を少し買い込んで、今日の買い出しは全部だ。
お肉は、また
今日のセールよりは減率は低いが、水曜日も安売りをしている。
そう心のメモ帳に書き
帰宅の途中、直線ルートを少し
年代を感じる
「……」
入店の音に視線を持ち上げた店主のおじいさんは、
私はそんなおじいさんへ
以前、このお店の窓から『商品』を
お店に入ってすぐ、右手の
右手側の鳥かごは手のひらサイズの青いお
子猫から成猫まで、色々な子たちが居る。
そんな子たちに指先から私の匂いを嗅がせていると、背後からガチャガチャといったケージを揺らす音が鳴りだす。
音がする方、入り口からカウンターまでの
こちらはうって変わって
そのとき、ふと猫たちのケージの端っこ、見慣れない新入りさんを目に
茶色い毛並みのぶち猫だ。ケージに
よく見ると、小さい照明と
焦げ茶色の猫。
そういえば、同じ焦げ茶色の
目の前の新入りさんを見ていると、不意に彼のことが思い浮かんだ。
そういえば。
私は
私は、彼とは面識は、無かったはずなのだが。
彼――。彼? テリヤキさんは、
そこで、
「そいつは、去年から
振り返ると、ホロウィンドウから視線を外して、おじいさんは
そしてその瞳は特に感情を見せずに私へ
「お前さん、連れて帰るか」
「え? い、いえ」
本来の客として出入りしていなかった私が感じて良いものか分からないが、今まで一度も聞かれることのなかった意外な問い掛けに、
今
「……ウチは、飼育できるような環境や余裕はないので」
「そうか」
私のありきたりな理由に
店主のおじいさんにはこう答えたが、猫が嫌いなわけではない。口にした通り、飼える環境や
まあ。動物を
それに、どちらかというと私はウサギ派だ。
そういえば、
そう、あの人のことを考えていると、ここ
以前は
とは言っても、今の双子の問題にけりが着くまではそうそう行けそうにもない。
この件が片付いたら、
「……別に、追い出したりはしない。いつでも見に来たら良い」
私がまた
正直、全く別のことを考えていた私は、それに対し「は、はい」と
私の
「そういえば、珍しく
「あ……」
言われ、私は思い出したように左のもみあげを
それから今まで、特に気にすることもなく過ごしていたから、リボンを着けていたことをすっかり忘れていた。
本来はもっと多い、太めの
とは言っても
「
私がリボンを振れたまま、また
そのとき、どこか気持ちの悪い。いや、気持ちの良い、よく分からない感覚に
そんな感覚など忘れて
私は、嬉しいんだ。
恐らく学校の誰かや見知らぬ人間にそう言われても、心は微動だにしないだろう。
昔、あの人から言われた時のような、そんな感情が、
「……ありがとうございます。今日は、もう遅いので、失礼します」
「……また気が向いたら来なさい」
「…………」
顔を動かさずに掛けられたおじいさんの声に
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