9 ~鹿の恐少女~
五月十八日。
授業を終えて校門を出ると、そこには雰囲気だけが
昨日に引き続き、二日連続だ。
最初に会った時点で
「……今日も、三人で調べるのかしら」
「そらまぁ」
「ウチら調べ事ヘタっぴやし」
目の前の
そう。私と
その成果も、
活動がお休みとなった一昨日を
「調査に付き合うのは
「「
「違う」
双子の軽口を
「今日は大事な用事があるのよ」
「「
「だから違う! というかそんなのどこから覚えてくるのよ……」
「ミキちゃんかて
「いっこしか
「…………」
その返しに
中学生と小学生と言っても、
「確かに、その手の知識において、私が知っていてあなた達が知らないという
「じゃあ」
「やっぱり」
「
顔を見合わせ
最後の私の
調査、と言っても、あまり大したことはしていなかったりする。
近隣住民
昨日は
今日も、張り込みを初めてかれこれ一時間弱だ。
今日は五時限授業だったからこの時間を付き合っていられたが、
通学鞄の外ポケットに収めている
「ごめんなさい。私は今日はここまでだわ」
「「延長料金は?」」
「レンタル
「ミキちゃんかてなんのことかすぐ分かってたやんな」
「なー」
「…………」
口の減らない双子に言い返したいのを押さえ込み、私は三人で隠れ
明日ならば時間は作れることを伝え、帰るのがあまり遅くならないように双子へ
そして。
「あ!
一昨日に買い
その予感に振り返るも声の
そんな私の背中に、
「
「――!?!」
私の警戒をものともせず
「あー。久しぶりの
「たった今
背中に張り付くショートヘアーの先輩の顔面をメリメリ、と押し返しながら、ほど近いと言っても、
「むぐごぁ……き、
「それなら、家の近くのお店で
「んー。そうなんだけど、定期券で
「確かにそれはそうで――」
「うん? どうしたの、
途中で言葉を途切れさせた私を
大丈夫だ。あそこ以外にも、スーパーは近くにある。まだ同じ場所だと決まったワケではない。
「い、いえ。
「えー? 駅前のスタイリッシュアオンってとこだよ。
同じだぁぁぁぁぁアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!
……いや落ち着け。
こんなことがあるのだろうか。
よもや
正直、この人には同じ店を行きつけにしていることをあまり知られたくない。
だが、今日を
いやしかし、育ち盛りの
どうしたものか。
ジレンマに
そして
「「!?」」
そのすぐ後に、
様々な防犯・
そこで、隣に立つ一人の女子が動いた。
「
「え?」
左肩に
「ま、待ってください! まさか
「うん。誰かの笑顔を
「ち、ちょっと。まさかこのまま変身して
「あっ」
私すらも引きずり進もうとするその足が止まった。
「やっぱり考えてなかったんかい!!」
「ど、どうしよう……」
「私に聞かれましても――」
私がそこまで言いかけたところで、こちらを振り返った彼女の視線がさらに私の後ろの方へと
「ちょーっと待ったぁー!!」
商店街の奥へと逃げていったひったくり犯を追うと、
どうやら、被害者らしき女性の声を聞きつけた、メイン通りよりも少し多い通行人や商店街の利用客に行く手を
しかし、状況は最悪に近しい形で
「く、来るな! この
「――!?!」
二十数人
男のハンドバッグを掛けている方の手には、
だが、
「あー、えっと……あんた
高校生くらいだろうか。身長170センチはありそうな男に対して二回りほど背の低い人質の少女は、若干の
「え? う、うん」
「なら、
「はぁ!?」
短く答える魔法少女に、
「てめぇクソガキ何を
腕を
「え、えぇ~~……。うっそぉ」
そんな先輩の感想と同じような表情をこの場に
ひったくり犯の男が、胸の痛みからか一息、「けほっ」と、
「えっと、気を取り直して。
ひったくり犯の男や周りの通行人達も、この
一歩踏み出して声を
「そ、そんな……」
ひったくり犯の男の目の前に、燃え上がるような
「そんな《
人質を取っていた半
「し、
「知るか! それにしてももっとマシなモンがあっただろ!」
「それはまぁ、
「くっ……」
「…………」
「…………?」
一秒一秒と、沈黙が流れる。
「…………えっと、どうしよう」
「
「いやだって、
「
「しょーがないじゃん! こんなこと初めてなんだから!」
立場が逆転した被害者と加害者になってしまう危険性に、両者は動けずにいる。このまま停滞し続けられれば、ひったくりの被害女性か誰かが通報しているであろう警察が
そして、それに私が気付いたのと同時に、
ひったくり犯の男は十徳ナイフの先が人質少女との
それに合わせて間合いを
そう。ひったくり犯の男の背後には、彼を包囲しているはずの
もちろん、男を取り囲む彼らも、
先程から一転したように見えて、その
「なに……? この人だかり。ロクに買い物もできないじゃない。よいしょ、ちょっと失礼――って」
ひったくり犯の男の後ろと左右を囲む
「し、
「り、リサ先輩!?」
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