~狩の頃合い~
夏の気配をチラつかせ始めた、春も終わりな陽気が午後の東京に降り注ぐ。
電光表示が3の数字を
マンションの角に
少年は右腕にビニール袋を抱えて昇降場を真っ直ぐに抜ける。外の道路に面した共用廊下をゆっくりと歩き、玄関ドアを二つ通り過ぎた三つ目のドアの前で足を止めた。少年はそこで、パーカーのフードを
そして右腕に抱えていたビニール袋の持ち手をそれまでだらりと垂らしていた左腕に通すと、少年は左手を右の手で持ち上げ、パーカーの左
カシュッ。という金属とカーボン繊維が
閉まるドアに右手をあてがい、優しく元の位置へ落ち着かせる。機械的な自動施錠のモーター音と解錠コードの
ため息を押し殺し、少年は玄関
「ただいま、
声を掛け、ドアノブを右手で
「ッッ――――!!」
「っご、ごめん、姉さん。僕だよ。ただいま」
少年はすぐさま部屋の主に謝り、先程よりも
締め切られたカーテンの隙間と開けられた廊下からの
『姉さん』と呼ばれた女性は、暗がりに身を起きながら、
「はぁは、はぁは、はーぁは、、はーぁは、はーぁは、、はーは……。――ご、ごめん、なさい」
お互いに短くも長くも感じた時間の中で、女性はなんとか
「ううん。僕の方こそ、驚かせちゃってごめんね」
少年は、女性の
「食べ物買ってきたから、ご飯にしよう」
「う、うん」
部屋の中へ進み
部屋を出るとき、羽織っていた毛布を部屋の入り口に落としたまま、女性は両頬を空いている方の手で擦った。
全身を光の
「いつも……ありがとう、ね」
そう言いながら、女性は袋から出したものをいくつかをキッチンへ運び、調理の準備を始めていく。
「ううん。……大丈夫」と返して、テーブルに残ったものを少年は各それぞれの保管場所へ片付ける。
「…………そろそろ、いけるかな。また、お金を集めなきゃ……」
静かに、小さく、
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