4 ~巫の告少女~



 永未えいみちゃんと夢香ゆめかちゃんの幼馴染である、海老浦えびうら五和夫いわおくんという男の子の様子が、どうも数週間前からおかしいらしい。

 以前は双子ちゃんがよくお世話になっていたというイワオくんのおねえさんも、先月のなかごろからあまり見かけなくなり、そのあたりから、彼の様子が変だと感じだしたのだと双子ちゃん達は言う。

 最近になって、彼の変調が違和感から確信にうつり、それとなくさぐりを入れていたけれど、これといって収穫はなくどうしたものかと二人で話し合っていたところに、あたし達が不審者ふしんしゃとして現れたのだとも。

 そしてあたし達にとっても有益だと言うのが、イワオくんとあきらくんは小学校の内外にかかわらずなかが良く、あきらくんの変わりようにも何か関係があるかもしれない。というのが双子ちゃん達の申し出だった。


 深輝みきちゃんの家のアパート付近まで歩を共にしながら、あたし永未えいみちゃん達の話を改めてまとめる。

 永未えいみちゃんと夢香ゆめかちゃんのお願いもとい脅迫に協力することになったあたし達は、あきらくんの調査をメインに、イワオくんの方も調べていく方針でとりあえずお話は落ち着いた。通報はされなくて本当に良かった。

 結局、公園に場所を移動したことから今日はあきらくんの行動を把握はあくするのをあきらめ、家が学校に近い小鞠こまりちゃんは双子ちゃんと学校付近の捜索そうさくに当たっている。

 場合によっては、明日も試験しけん期間は続き中学校は早くに終わるため、また小学校前に張り付きあきらくんを尾行すればいい。とはいっても、明日は試験最終日だから、終わりは今日より少し伸びるかもしれない。チャンスとしては一回きりだ。これをのがせば調べる手段はある程度ていど減ってしまうだろう。

 そんなことを考えていると、隣を行く黒色長髪の後輩ちゃんから声が掛けられる。


「色々と思考を巡らせるのは構いませんが、ぼーっと歩いていると転びますよ」

「やだなー、深輝みきちゃん。あたしそんなにドジっ子じゃなッわぁっ――!!」

「……フラグの回収が早過ぎます」


 良く分からないことをつぶや深輝みきちゃんにブレザーのえりを掴まれ、あたしは前につんのめった形で片足つま先立ちをたもつ。

 合わせて立ち止まってくれた深輝みきちゃんが支えてくれなければ、昨日に続いて顔面を固い地面に打ち付ける羽目はめになっていただろう。まだ夏には少し早いが、頬を冷たい汗がつたい落ちる。

 汗が落ちた少し手前。何とか地面に着いている左足のスニーカーの先は、ちょうどその部分だけ色が違う、工事中の簡易かんいアスファルトの境目だった。


「あ、ありがと。深輝みきちゃん……」


 えりが破れないようにゆっくりと引き上げてもらい、深輝みきちゃんにお礼を言う。

 行く手の方から歩いてくる犬の散歩をするお姉さんにも、さっき深輝みきちゃんに吊るされているときに笑われてしまった。悪気の無い微笑ほほえみ方だったけど、見られてしまったのがはっきりと分かるぶん、恥ずかしいことこの上ない。

 ほのかに熱くなる顔をおおいたくなるのを我慢して、足先が詰まった左足のスニーカーのかかとを外し、再びいた靴を地面にトン、トン、と当てて履き心地を直す。

 それを確認して歩き出す深輝みきちゃんを追うように、開いた二人の微々びびたる距離をけてめる。

 そのタイミングで先程の犬――改めて近くで見ると、テリヤキよりはやや薄いちゃ色の毛並みをした小型犬、確かジャック何とかテリアという犬種だ――を連れたお姉さんが、あたしの右手を歩く深輝みきちゃんのそば、道路の右側を通り抜ける。


 その時だった。


 深輝みきちゃんの隣をれ違おうとしたところで、急にワンちゃんがあたし達に向かって吠え出したのだ。

 後から聞いた話だと、深輝みきちゃんのそばをすり抜けるときにお姉さんがリードをわずかに引いたようで、それを危険人物に対する反応とワンちゃんはかんちがいしてしまったかもしれないのだという。

 しかし、この時は、それがただの笑い話に収まる結果には、残念ながらならなかった。


「こ、コタロー? どうしたの急に――きゃあ!!」


 小型犬とは思えない鳴き声で低く必死に吠えるその身体が、いきなり膨らみ出したのだ。しろちゃ色の奇麗だった毛並みは、光をまったく寄せ付けない漆黒しっこくに染み渡り、可愛らしいデザインのハーネスを内側から引き千切ちぎる。それに繋がれていた伸縮性のあるリードが、重力に引かれて摩擦まさつの少なさそうな黒い体から滑り落ちた。小さい体から発せられていたうなり声は、見る間にマイクロバス程にまで膨張する影の身体にともない、さらに低く、獰猛どうもうになっていく。


「でぃ……ディザイ、アー……?」


 それがかすれがすれに自分ののどから漏れ出たものだと気付く前に、隣に立つ女の子が、反応を示した。


「そ……そんな……私……わた、わたし………!」


 隣に居ても微かにしか聞き取れない、弱々しい声だった。普段のしっかりとしたいの見る影もない黒髪の少女は、おびえとはまた少し違う声色こわいろで呟く。その胸には、彼女の通学かばんがきつく抱き締められていた。

 深輝みきちゃんは焦点のさだまらない二色のむらさき色の瞳孔どうこうを見て取れるまでに拡縮させ、カチカチと歯を鳴らし腰の引けた身体を戦慄わななかせる。そして色白の少女は、痙攣けいれんでも起こしているようなその手をゆっくりと動かす。

 些少さしょうなほどに伸ばされた左手に収められたのは、鞄にむすび付けられていたお守りのような紙の切り抜き。

 それに呼応してかいなか、焦げ茶色の小動物だった影の異形は、威嚇いかくときかの唸り声をあたし達へ向かって叫び放つ。


「っ―――!!!」


 ビクンッッ!!! と一際ひときわ大きく身体を震わせた深輝みきちゃんは、左手の紙の切り抜き、人形ひとがたのようなそれを左手と身を守るように丸めた体で握り締めた。

 その瞬間、どこからともなく耳を打つ『くらきその心を、私がしろあからめさせましょう』という声と共に、強く閉じたまぶたから雫を数滴すうてき宙へ弾き出した黒髪の後輩少女の全身がまばゆく光り輝き、彼女の鞄や制服が白くはじけたかと思うと、今の今までそこに居た深輝みきちゃんの姿が消え去った。

 代わりに、どこから現れたのか、薄くはかなしろ色の和服めいた衣装を身にまとった魔法少女が、ひかり残滓ざんしが微かにまたた深輝みきちゃんの居た場所、あたしのすぐ隣に片膝を着いていた。軽微にうつむき、閉じていたまぶたおもむろに開いた黒髪の魔法少女は、首を起こし、眼前の中型ディザイアーをむらさき色の瞳にうつす。


「ルナ、ちゃん……?」


 突然あたしの目の前に現れた野生の魔法少女の名前を口にすると、敵意を向けていた視線を幾分いくぶんやわらげ、薄白はくびゃくの少女はこちらに顔を向ける。


「何をしているの、トモナ? あなたが変身しないで誰があれを始末しまつするというの」

「え……? あっ」


 声を掛けられてようやく、ルナちゃんは魔力が極端きょくたんに少ないから変身直後はまともに戦えないのだと、いつか言っていたのを思い出す。

 変身直後。

 それはつまり。

 変身する前は、その場に居たのは、深輝みきちゃんだった。やはり名古屋なごやのときにルナちゃんが深輝みきちゃんとして見えた通り、深輝みきちゃんが、ルナちゃんの正体ということだろうか。でも。このあいだルナちゃんは、深輝みきちゃんと自分は別の人物だとはっきり言っていた。ルナちゃんの言葉を――。いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。

 雑念ざつねんを振り払うように両手でほほたたくと、胸に集まる熱く練り上げた魔力へそれをかざして凝縮ぎょうしゅくさせる。双腕を緩めて魔力を体中に行き渡らせると身にまとう中学校の制服は光に溶け、それぞれが色のファイティングドレスへと換装かんそうされていく。

 最後に、衣装ファイティングドレスから弾けた光がつま先から全身を包み込み、一メートル弱の色の杖を形作る。

 胸の内に宿やどす熱い存在を感じ取りながら、全身にほとばしる魔力を杖の先端へたぎり込ませる。

 その様子を確認した野良のらの魔法少女は、心なしかいつもよりにぶく感じる動作で、巨影のそばで重力に引かれて地面にれ落ちるリードを力無く握り茫然ぼうぜん自失じしつとしているお姉さんの手首を掴む。そしてお姉さんをなかば引きずる様に元小型犬のディザイアーから引きはなす。


ふところに潜り込んで上に向かって思い切りはなちなさい! それなら周囲への被害はもっとも少ないわ。あなたはそうでないと心置きなく力をるえないでしょう」

「っ、うん!」


 ルナちゃんのするどい指示に、返事と共に全力で中型ディザイアーの足元へ駆け寄る。

 生まれたばかりのディザイアーは、緩慢かんまんな挙動ながらもあたしの動きに反応しようとするが、しかし一歩遅かった。

 ゼロ距離に詰め寄られた影の怪物がそのあぎと禍々まがまがしく広げたところで、あたしあかい灼熱のほのおを怪物のいたお腹に、はからずもはっしていた雄叫おたけびとわせてこれでもかとき上げる。

 ディザイアーは勢い良く周りの建物より高く吹き飛ばされ、漆黒しっこくの身体をに染め上げたかと思うと、辺り一面に断末魔を振りまく。


「ギ……ギゃゥォォオおおオオオオオおオオオ!!!!」


 しゅ色の体から突き抜けて飛び出した真紅しんくの宝玉は亀裂きれつを発し、そこからディザイアーのがらと共に空中へ崩れ去る。

 炎の軌跡きせきかすみ、瞬時にねっせられた空気が元の陽気ようきの温かみへ落ち着いていく。

 それをながめていたお姉さんは、ルナちゃんに掴まれている右腕以外を地面へ崩れ落とす。


「こ、たろー……? ……………あ、あぁあああああぁぁあああああああ!!!」


 ゆらりゆらりと落とされる視線がり散りになったリードの先の無残なハーネスをとらえたその瞬間、お姉さんの両目から、大粒の涙が次々とあふれ出していく。

 それは数秒か、あるいは一分ほど経った頃か。ディザイアーの痕跡こんせきも全て風に消え去ったのを見届けた野良のらの少女が、視線を上げたまま右手に掴む女性の耳へつぶやける。


「………言っておくけれど、あなたの犬がディザイアーとなったのは偶然ぐうぜんでしかなければ、あなたの犬が悪いというわけでもない。ただ、あの子が倒していなければ被害ひがいが出て犠牲者もあらわれたかもしれないわ」


 美麗びれいな顔に、眉がかすかにひそめられる。


「だから、どんな姿でも生きていてほしいと思うのは当然でしょうけど、あなたの家族だった怪物ものが人を殺すことは無かっただけでも、しとすることね。………簡単に割り切れるものではないと、分かった上で言うけれど」

「っ…………っ……、―――」


 乾いたアスファルトに、そこだけ雨を降らせるお姉さんは、もう一度目線を上目うわめらせる。

 お姉さんは強かった。

 下唇を甘く噛みしめると、またうつむき、しゃがれかかった声を漏らす。


「……ぇえ。―――っ。分かってる、わ。ありがとう。あの子を、コタローを人殺しに、させないで、くれて……」


 手首を握るルナちゃんの力がゆるめられ、お姉さんは右手に握ったままのリードを両の手で顔にうずめ、すすり泣く。

 それをチラ、と視界に収めた野生の魔法少女は、反対側へ顔をらす。


「それに、ひとけものも、ディザイアーとなった時点で死亡扱いとなるわ。魔法少女フレアが手を下そうが下しまいが、もうおねぇさんの犬はくなっていたのわ。もし誰かをうらむというんだったら、魔法少女フレアじゃなくてそれをさせている政府を恨むんだわ」

「っっ!?」


 が、美人さん顔はすぐに、背後から不意ふいに掛けられた女の子の台詞せりふの方へと向けられた。

 ルナちゃんとお姉さんの後ろ。あたし深輝みきちゃんが歩いてきた道の脇のT字路の角に、したらずさがわずかに残る声の主は立っていた。

 石楠花シャクナゲ色の衣装を身にまとうその少女は、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。


「この近くを歩いていたのは気まぐれの偶然だけど、ディザイアーの気配とがらの声の元へ来てみたら、あなた達が居るなんて。思わない出会いだわ」

「止まりなさい。この一般人に危害を加えられたくなければ」


 大きいひとごとのように呟く石楠花シャクナゲ色の少女に対し、野良のらしろ色少女は、そばのお姉さんには特に何もせず、刺々とげとげしく言葉を吐き掛ける。


「見たところあなたも国家魔法少女国の狗のようだけれど、話ならそこでもできるでしょう。……私達に、何の用かしら」


 ルナちゃんの制止のうったえに素直にしたが石楠花シャクナゲ色の少女は、はば五メートル程の道路の真ん中、野生の魔法少女から道幅と同じくらい離れたところで立ち止まる。


「国のいぬ……。国家魔法少女ではあるけど、確かに私は他の魔法少女なんかより、文字通りいぬいぬだわね。魔法少女ノラ」

「………野良のらと呼べとは言ったけれども、別に名前が野良のらというわけではないわよ、私は………」


 石楠花シャクナゲ色の少女の、のほほんとした空気に毒気どくけを抜かれたのか、警戒の色は残したままあきれ気味に息をこぼすルナちゃん。

 言われ、石楠花シャクナゲ色の少女は少し考える素振そぶりを見せる。


「……じゃあ、野良の魔法少女。とりあえず、そのおねぇさんにはどっか行ってもらってもいいのわ?」


 少女が指をパチン、と鳴らすと、黒いスーツのいかにもな男性が、彼女の来たかどから現れる。

 瞬時に身構みがまえる野良の魔法少女に、「大丈夫」と石楠花シャクナゲ色の少女は純粋無垢じゅんすいむく声色こわいろで落ち着かせる。男性は優しくお姉さんをうながし、T字路と反対の方に現れ路肩へ着けられた黒光りの乗用車に連れ添っていった。

 お姉さんを乗せた車は、同乗者をいたわるようにゆるりと発進し、低いモーター音を残して走り去っていく。

 やがて大通りの方へ曲がったそれを見送った石楠花シャクナゲ色の少女は、ルナちゃんに、そしてついでにわたしにも語り掛ける。


「今回は私の個人的なお話だけど、他の人に聞かれるのはダメなのわ」


 いや、正確には、ついでなのはルナちゃんの方か。

 おさなさが色濃く残るつぶらなひとみは、あたし赤茶あかちゃ色の瞳に向けられている。

 あたし達の反応は意識せずに、石楠花シャクナゲ色の少女はマイペースに続ける。


「このところ、断片的だんぺんてきに感じられた因果律いんがりつの揺らぎが、ある魔法少女の魔法まほう覚醒かくせいの報告をに安定したんだわ。魔法少女フレア。あなたは気付いているのかは知らないけど、魔法少女トモナの最初の覚醒かくせいを始めに、この間の名古屋なごやでの再覚醒までに三度、この世界の因果いんがはズレたわ」

「………っ?」

「え……っと? それって、どういう、こと?」


 因果律いんがりつ。クラスの一部の男子達が話してるのをちらっと聞こえたことがあるくらいで、よくは分からない。難しそうな響きだけでお腹いっぱいだ。


「コンドーの報告からそれが野良のらの魔法少女と一緒に戦ったからなのか、よく分かんなかったけど、因果が安定したことから、魔法少女フレアが要因だと分かったのわ」

「待ちなさい」


 あたしの頭がから回りし始めかけたところで、ルナちゃんがややいらった声で割って入ってくれる。多分、あたしのためではないだろうけど。


「あなたの話は唐突とうとつ過ぎて何を言いたいのか見えないわ。そもそも因果律いんがりつってどういうことなのかしら。あなたは何者なの? 順を追って話しなさい」

「ん……。分かったのわ」


 ルナちゃんにたしなめられ、くにいぬの少女はふてくされるようにほほを膨らませる。


「えっと……。”日本にっぽん大戦たいせん”は知ってるのわ?」

「んー? んっと、なんだっけ」


 どこか聞き覚えのある気がする言葉だけど、すんなりと記憶の引き出しから出てきてくれない。

 一休いっきゅうさんのように両の人差し指で頭をこねくり回すあたしを差し置いて、ルナちゃんはすらりと応える。


「数十年前に、関西かんさい地方で起きた”日本にっぽんだいディザイアーそう抗戦こうせん”の事かしら」


 それなら分かる。


 【日本にっぽんだいディザイアーそう抗戦こうせん


 旧近畿きゅうきんき地方を主戦場に世界中の魔法少女が総動員された、複数体の大型ディザイアーを討伐した歴史的な出来事だ。旧近畿きゅうきんき地方が関西かんさい地方に置換され、言葉通り日本地図が書き換えられた、当時とうじ世界をおびやかせた大事件。

 その頃はディザイアーが出現し始めたばかりで、今なんかよりも苦戦を余儀よぎなくされたのだと。

 中学校に上がってすぐの歴史れきしの授業で習って、小学校の社会しゃかいの時間にも少しだけ触れられる。歴史れきしぎらいの小鞠こまりちゃんでも、多分知っているはずだ。

 石楠花シャクナゲ色の魔法少女はうなずき、肯定する。


「そうだわ。ディザイアーの存在が確認かくにんされて以来、、人類史上指折ゆびおりの大事件。結果的に日本のいち地方で治まったものの、戦力不足で本来ほんらい大戦なのわ」

「「………!?!?」」

「……それって、どういう……?」


 授業では聞き及ばない内容に、あたしとルナちゃんはそろって息を飲む。そしてルナちゃんは、一呼吸おいて問い掛けた。

 それに、石楠花シャクナゲ色の国家魔法少女は静かに続ける。


「私は日本にほん政府せいふかかえの魔法少女、川村カワムラつなぎ。二十六年前に途切とぎれかけた歴史を繋ぎ止めた大魔法。未来みらいの強力な魔法少女達を過去かこ、当時の現代に呼び寄せる魔法をやってのけた、ときの魔法少女のむすめなのだわ」

「ま、まさか……」


 石楠花シャクナゲ色の魔法少女/つなぎちゃんが言わんとすることをいち早くさとったルナちゃんが、あるいは疑念が確信へ変わったのか無意識のように声をらす。


「魔法少女フレア。先月から三度に渡って歴史の因果いんがらめかせた魔法少女。この時代の送り手にして選別者のときの魔法少女である私は、あなたを時空渡りの候補者として考えているわ」

「「……………!!!」」


 つなぎちゃんが何を言っているのか、いまいち良く分からなかったけれど、この時のあたしにはなぜか、それは希望のようにも思えた。

 いずれ、時代の未来を担うかもしれない、強力な魔法少女。

 そんな魔法少女になれるかもしれない。その可能性。


「今日ここで会えたのは本当に偶然ぐうぜんだけど、それだけは言っておこうって、思ってたのわ。当人なのか、それとも他の誰かに関与しているのかは、まだ分からないのわだけど」


 その場にそれぞれ固まる私とルナちゃんへ最後にそれだけ言い残して、つなぎちゃんは現れた時と同じようにのほほんとした空気をまとったまま歩き出す。

 そして変身を解きながら、石南花シャクナゲ色の国家こっか魔法少女まほうしょうじょ黒光くろびかりの車が曲がっていった角に消えていった。






第一章 - 災禍と希望         完











「ん? 何これ。ルナちゃん、何か変な紙が落ちてたよ」

「……? あぁ。それは私達には必要のないものよ。捨て置きなさい」

「はーい」





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