第二章 - 道導べ
1 ~強の剛少女~
五月十三日。
スピーカーから鳴るチャイムの音と一緒に中間テスト最後の科目が終わり、担任の先生が教室に入ってくる。
この後は、また小学校に行って
昨日は結局
そんなことを考えていると、今週の日曜日から始まる修学旅行の確認や注意事項、他にも色々と先生は話していたけれど、気付けば解散の号令が掛けられていた。
一息遅れ慌てて立ち上がり、クラスの皆に合わせてあいさつをする。
階段を下りて昇降口に出た
その時だった。
「おい急げ。早くしないとカードの
「まだ昼前だろ誰がこんな時間に買うんだよ」
「そりゃ仕事もしてない転売ヤーとかニートに決まってんだろ!」
声変わりもまだ途中のような低くも高い男子の声が二つ、後ろから聞こえてきたかと思うと、
「きゃあ!?」
「
不意に衝撃を受けた
「わっ、っと、おっ、おぉ……セーフ……」
「ちょっ。お前何やってんだよ」
「やっべ、サーセン!」
何か急いでいるのか、二人
しかし。
「おい。
昇降口の方から響く男声に
驚き昇降口を
「ただ謝ればいいってもんじゃねえぞ! お前が今ぶつかったのは階段。それも自分からだ。そのクセにそんな適当な
振り返った小階段の上、昇降口の入り口に立っていたのは、同じクラスの男子生徒、
「す、すいません――」
「俺はお前にぶつかられてない!」
「はっ、はいっ!」
謝りかけた一年生男子は、
「え、えっと、その……後ろからぶつかって、その階段で、すみませんでした……。えっと。お、お
「う、うん。大丈夫だよ。ちょっとビックリしたけど。君こそ、飛んで降りてたけど、足は問題ない?」
「は、はい。ダイジョブっす」
顔を上げた男子生徒は、
それを見た一年生男子は、もう一度
それを見送って、小階段の上を振り返る。
「
「勘違いすんな
「あ……う、うん」
それだけ言って、
少ししてから、そういえばこの玄関道の先で
「
「う、うん。大丈夫だった?
「うん。ダイジョーブ!」
校門の少し手前、並木に沿って立っていた
高学年の授業が終わるタイミングを計って、
すると
「買い物? それなら
次々と食べ物や生活用品を
商店街の端から端へ、徐々に荷物が増えていく
商店街も終わりの方、ドラッグストアから出てきた
「……? 何を買ったのかしら」
「さ、さ~、なんだろ……?」
「――? どうして
「あっ、ちょっと待ってこの服を戻して……ってあっわあ!」
買い物客を装うために、
「ああもう何やってるのよ。ほら
そう言って、
「
「分かった」
ハンガーラックに服を戻して、
「せーの」
「ふぬぬ……」
しかし、中に金属でも入っているのか、あまりの重さに女子中学生二人の力をもってしても、半分くらいを起き上がらせるのが精一杯だった。
もはやここまでか、と、魔法少女に変身することも頭に
「ちょっとかして」
「え?」
「ふん!」
「うっそ……」
「うっそだぁ……」
「…………」
「…………」
金剛像かとも錯覚するほどの重量のマネキンは、いとも
予想外の力持ち具合に、
悠然と持ち上げられた重量級マネキンは、ゆっくりとお店の床に下ろされた。
一仕事を終えて両の手を叩く
「お、重くないの?」
「これくらいやったら、なんとも」
「これ、
「
「そこに引っかからなくていい。あんたより《重い》から五十キロ以上って言ってるんでしょ」
「ということは
「えっ、なんでわ――いや違うよ!?
「……別に
言及する
「ちっ」
「今
「そんなことは今どうでもいいでしょう。早くしないと
どこか
ダークブラウンのランドセルを携えた少年は、大小様々な荷物を持ったまま、商店街の外、住宅街の方へと歩いて行っていた。マネキンを倒してしまったことをお店の人にひとまず謝ってから、
なんとか距離を取られ過ぎないよう適度に詰めながら商店街から数分歩いたところで、
正確には、橋があった。
長袖のパーカーを
見つからないように離れて様子を
内容を確認するのに、もう少し近付こうかと提案しようとした時、か細い二つの声が耳を打った。
「「い、
「イワオくんって、あのパーカーの男の子のコト?」
「うん」
言われ、改めて顔の良く見えないパーカー姿の少年を見やる。
ちょうど二人の会話は終わったところのようで、
「あら? イワオくん、足でも怪我しているのかしら?」
「ほんとだ。どこかで
「
「へ?」
「
今度は
それを聞いて、数週間前の世界的なディザイアーの事件を思い出す。が、それは即座に否定された。
「まぁ事故言うても、誰が悪いとかじゃなくて、
お姉ちゃんの
「でも、それなら何故
そう言いかけた
「
「それは、先月辺りから見かけなくなったっていうイワオくんのお姉さんのこと?」
「「うん」」
ということは、お姉さんの
つまり、
真っ先にその結論へ結びついたのであろう
「だったら、それならそうと素直に言えばいいものを。まったくあの子は。私がダメだと言うはずもないでしょうに」
普段、あまり聞き馴染まないその口調に、しかし
「私の方の謎はある
近くのマンションへ入っていく幼馴染の後姿を眺めながら、
そうだ。
弟の同級生達の反応を肯定と
「そう。ならあなた達が満足するまで付き合ってあげるわ。どっちみち、こちらも先輩二人が
「あっ」
「そういえば、そういう身の上だったわね。私達」
成り行きで忘れていた
誰にも見られないような、小さな体の影で、
そして、そんな
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