第一章 - 災禍と希望
1 ~重の少女達~
五月十二日。晴れ渡る春の
「………ねぇ
交差点の先、とある小学校の校門を
「んー。なんだっけ」
「言い出しっぺの先輩が忘れてどうするんですか。何もしないなら帰りますよ」
「わー!
上の少女に
それを
「あぎゅ」
「せっかく隠れているのにあんたが
「はぁ……。しっかりと隠れられているのかどうか、
若干
そこからは、
一、二年生の授業はとうに終わっているらしく、見受けられるのはどれも中・高学年のものばかりだ。
それらを見ていた
「あれ?
いつの間にか
「シトラスの香りよ。昨日から変えてたのに、
「あー、なんとなく
「テスト期間だから、気合入れるためにこの間
「先輩、コンディショナー付けてたんですか?」
先輩二人の緊張感のない会話に、聞き流し程度で耳に入れていたサラサラの黒髪ロングの後輩少女は、不意に加わった。
それを驚きつつも嬉しそうに、一番上の
「そうよ。というか、そう聞くってことは
「はい。……ウチの家計はあまり余裕があるものではないですから。基本シャンプーだけです。ボディーソープとしても使える兼用のヤツを」
「あー。
「
それに対し
「んー。小学校の内でもやってた子は多いと思うけれど。
「そう、なんですか」
「ええ。私も自分のお小遣いで買ったりし出したのは中学に入ったくらいかしら。まぁ、家にあるので小さい頃からずっとやってる子がほとんどでしょうけれど。……
「……はい。今は、母は入院していて、
「そうなの……。えっと、なんだかごめんなさいね」
上段の少女はややしおらしく
だが、下段の少女はさして表情を変えず、前を注視したままそれに
「いえ。……お気になさらず。物心ついたころからずっとですし、母のことも………もう長いものですから、それ
「でも
抱き着くショートヘアーの少女は、そんな沈みかけた空気を変えるためか、はたまた何も考えず、言いながら黒髪の少女のそれに
そんな
「おい
「鳴らせー!」
「ち、違いますー! 不審者っていうのは、こーんな目で、こーんな顔をしてる人のことですー」
しかし、
「ぎゃはははは! 変な顔ー。ぶっさいくだー」
「あはははは」
「ち、違うもん。
「
「………」
上下の少女達にはいつも通り
「ほらあんた達。学校が終わったならさっさと帰りなさい。この間お母さんが、すぐに帰ってこないからどうしたものかって言ってたわよ」
「コマリ
「私はこのお姉さんが変なことしないか見張っているのよ」
そう言って、
「あ、あたひ?」
「ほら、分かったなら道草食わずにさっさと帰りなさい」
「へーい」
「じゃあまたね。コマリお
「はいはい。またね」
その手慣れた様子を見て、赤茶毛の少女は疑問を口に出す。
「
「あれはウチの町内の子たちよ。私は一人っ子。
「そ、そっか。結構好かれてるんだね」
「ええ。誰かさんのおかげで、子供の
「へぇ……」
「あなたが『へぇ』ではダメでしょう……」
「どうゆうこと……?」
「何でもないです……」
本日三度目のため息を吐きかける
その時、彼女達の背後から、やや大人びたものと幼さの残るもの、か細いものではなくしかし威勢の欠片もない二つの女児の声が、重なる少女達の
「「あんたらそんなとこで何してんの?」」
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