余章 ‐ 始まりの終わり

   〜金鯱の呟影~


 夕陽ゆうひに暮れる名古屋城なごやじょう天守閣てんしゅかく。金のしゃちほこの影にひそみながら、一つの白い手がそれに伸びる。

 白い手をやす影の眼下には、夕陽に染まるオレンジ色の細長い車体がしん名古屋なごや駅のホームへ入っていく。

 遠目では振袖ふりそでのようにも見えるその影は、空虚くうきょの右肩を左手に添わせた名古屋城の象徴にもたれさせる。


「……これは、ほんの始まり。無意識でしか分からないでしょうけど、あなたは気付いている。因果いんがの変わりゆくさまを」


 徐々じょじょに速度を落としていく近代車両の向こう、ビルの合間あいま合間に見え隠れする陽に染まる薄白はくびゃくの衣装が小さくうかがえる。


「あなたはまだ知らない。これから立ちはだかり続ける困難を。だけど、大丈夫。あなた達は、ちゃんと乗り越えられるから。……絶望に負けないで」


 陽が沈み、わずかに陽光が当たる口元は、やわらかく微笑ほほえんでいた。



「いつかまた、あなたと会える日を楽しみにしているわ。フレア、トモナ」

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