6 ~決意の少女~
「魔法少女フレアだ!!!!」
「っげあァァァああああアアアアアアアア!!!」
「くらえぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇえぇえええええええええええ!!」
杖を振り下ろし、すぐそこまで
その
「ぅ……ぅぁぁぁああああああ―――!!」
ディザイアーの吸い上げる力と、
「ぐッッげぇぇぇぇぇぇぁああアああああアアアアアアアア!?!?」
「―――ぃぁあああああああああ!!!!」
あり
「グ……ゥ――」
「ふっ!」
落ち行く瓦礫の数々を足場にして突き進む野生の
再び地面に打ち付けられた影の巨人は、短い悲鳴を漏らす。
「グゲっ!?」
人型ディザイアーの足元に着地したルナちゃんは、その隙に近くのビル群の
良かった。
また無茶をしないか少し心配だったけど、ちゃんと後のことを考えているようだ。
高速環状線の下、粉々に
今度こそ起き上がり、巨影の怪物は強襲者の
「グ……グゥ、ガァあああああアァアアあああ!!」
目の位置の
けれど、そんなことは、出来はしない。させは、しない。
「トモナ!!!」
高速環状線の上、黒い怪物の狙いに気付いたリサ先輩が、防音壁に
見上げ、その
右手に持つ杖の先、
胸の内に、
「えぇい!!」
杖を背後に振りかぶり、
勢い
持ち上がった足を一歩前に出し、もう片方もそれに並べ立ち、黒い影の巨人へ向けて叫ぶ。
「
「グ……ルぐ、が……」
倒れ込んだ人型ディザイアーは上半身を持ち上げ、感情の図れない黒眼をこちらへ向け、
その時、すぐそばの大きな瓦礫の上に、誰かが立つ気配を感じる。
「それは、あなたと
「ち、違うよ! ルナちゃん。そんなつもりで言ったんじゃ………!」
「………あれ? 前から気になってたんだけど、ルナちゃん、ドレスの色、変わってない?」
「え?」
「そうなの、かしら?」
「そ、そうだよ!? さっきとか初めて会った時とかは
「そ、そう。私は服のことなんて気にも留めていなかったから、今
顔に人差し指を当て、真剣に考えるルナちゃん。
どうやら、本気で気が付いていなかったみたいだ。
「グルるるゥ………」
ルナちゃんの方に顔を向けながら、尻目に
「……無駄口を叩いている
「え――?」
「――それなら心配いらないわよ。
ルナちゃんの反対側、
「言っても、少し前の情報だし、さっきの
「リサ先輩!? 大丈夫なの?」
「大丈夫。……とは言い切れないけど、問題ないわ。私だって国家魔法少女の
リサ先輩はそう言い、左手に剣を下ろし、右手を上げる。
「セレナ」
「
「そう。私の契約する魔法精霊獣。っていうか精霊そのものか」
ルナちゃんの
「ええ分かってる。トモナ。そいつとは別で私もあいつの隙をついてアンタの手助けをするわ」
ルナちゃんを
「トモナ」
その
「
「できるわけないだろ
「そ、そっか……」
「ぐるうるるるるぁあああああ!!!」
「!!」
しびれを切らしたのか、人型ディザイアーは大きく
それを魔力の塊で叩き落とし、
「
「ふん。アンタこそ、野生の魔法少女だからって手を抜くんじゃないわよ」
「がんば」
リサ先輩は遅れて
ディザイアーは、吸い込み攻撃は逆効果だと学習したのか、
それをルナちゃんやリサ先輩がいなし、時には自身の炎で迎え撃つ。だけど、やはり人型ディザイアーも
なるべく街への被害を
「っ! しまっ――」
「ルナちゃん!」
「
リサ先輩と声が
徐々にだが、人型ディザイアーも
リサ先輩がディザイアーの注意を引き付けてくれている隙に、
「だっ、大丈夫?」
「……く、いててだわ」
「る、ルナちゃん、かわいい?」
「っ! な、流してくれて構わないから!」
「えー?」
思わぬルナちゃんらしからない可愛い反応に、つい戦いの中だということを忘れてしまう。
「大丈夫か?」、と近くに居た
「やっぱり、トモナの一点攻撃だけではキリがないわね。自衛隊の兵器攻撃でもあれば別だけど、魔法少女が張り付いていたら手を出せない。かといって今
「アンタ達、喋ってるヒマがあるなら動きなさいよ」
ため息混じりにルナちゃんが言ったところで、リサ先輩が人型ディザイアーの攻撃をかいくぐってこちらへ跳んできてそう言う。
リサ先輩の契約精霊セレナは、先輩の
そのセレナが、事態の変動を
「っ――――――――
っぱあああああああああああん!!!
という
リサ先輩が立っていた場所にあるのは、勢いよく撃ち合わされた重量感の塊の黒い両の手。
その影の両手から、
神経が
「―――!」
「〇ミった!?」
「〇ミっとらんわボケェ!!」
中から出てきたのは、交差させた両手で
「まったくもう。念のためでセレナ呼んでなかったら今ので死んでたわよ!」
「トモナ!」
「っ。うん!」
ルナちゃんの呼び掛けに応じて、
それを
「てっきり○ミったかと思ったのだけれど」
「
すかさずリサ先輩がツッコむ。
「ど、どういうこと………?」
「アンタは知らないままでいいわ。トモナ。普通じゃないのはこいつらの方だから」
リサ先輩の
「そう言うあなたも普通じゃない側でしょうに」
「私は
再び襲い掛かってくるディザイアーの魔の手から散り散りに跳び
遅ればせながら
しかし、飛び出そうとしたその足を、形容するのも難しい硬くも柔らかい、ゾワリとする何かが
「きゃあ!?」
跳ぼうとした
掴まれた足はどうやら大丈夫みたいだが、少しでも動かすとすぐに
引き返してきた
「「トモナ!!」」
リサ先輩とは別に、
ルナちゃんが建物の
それでいい。ルナちゃんは、恐らくもうあまり魔力は残っていないはずだ。ルナちゃんをこれ以上危険な目に合わさせるわけにはいかない。
「くっ………!」
至近距離に迫る人型ディザイアーへがむしゃらに炎を撃ち込むが、まるでビクともしない。
「ぐぅゥゥ……ああ、グぁア」
同じだ。さっき、
本来、
「いっっ―――!!」
足を捕らえる影の手の力が強まる。
今日
ミシミシと音と感触を伝えてくる足が、それに逆らうように熱くなっていく。その足と胸で、気持ち悪いくらいに強く、
恐い。怖い。恐い怖い恐いコワいコワいコワいコワいコワいコワいコワい!
本当は初めっから恐かった。
初めてディザイアーと戦った時も。犬型ディザイアーが目前まで迫った時も。魚ガエル型ディザイアーに吹き飛ばされて体育館にぶつけられた時も。いたち型のディザイアーが現れた時、ルナちゃんが来るまでの間も。名古屋城の屋上で人型ディザイアーを初めて見た時も。ルナちゃんが人型ディザイアーに勇み行った時も。テリヤキが居なくなっちゃう時も。
ずっと。ずっとずっとずっとずっと! 恐かった!
けど、違う。
ダメなんだ。
もう二度と、
だから、戦わなきゃならないんだ。
テリヤキに
鉄の味がする程に、
その時。
「
鼓動の外。耳を
上げた頭、涙で
それは
解放された足は、地面を
手をついて立ち上がる
「笑いなさい。国家魔法少女フレア。あなたが
「ルナ、ちゃん? ど、どうして……どうして出てきたの!? 魔力はちょっとしかなかった、ううん今のでもうほとんど―――!!」
「フレア!!」
「――っ!」
「フレア。あなたにこの名前と魔法を託した魔法猫の意思を。あなた自身が
「………え?」
人型ディザイアーは。視界の
だが、そんなこともお構いなしに、
「あなたは、ここに
ルナちゃんの言う横、少し視線を移した先の影の怪物は、もう
少し離れたところでは、大ダメージを受けた
「フレア」
優しい。この戦場で聞こえたとは思えない優しい声が、
「あなたは、私の大切なものを共に護ると言ってくれた。ならば私はあなたの笑顔も守ってみせる。だから、あなたはその笑顔で、あなたの手が届く範囲だけの笑顔を護りなさい」
言われて、数人の人達の笑顔が頭に浮かんだ。さっき、ルナちゃんに伝えた、失いたくないもの。
「………人は全てを
目の前の彼女は、一瞬だけ、声音と同じ優しい笑みを
そして、すぐさま
「決めなさい。全てを護るなどという人の身に
意識の遠くで、怪物の
それを押しのけ、少しのわがままを、正面に立つ少女に答える。
「違うよ。ルナちゃん」
彼女は間違っていない。間違っているのは、
「最低じゃなくて、最大。
「……………」
帰ってきたのは、
「まったく、相変わらずという言葉が、あなたのためにあるように感じられるわね。けれど、そうでなければあなたじゃない、か」
「うん」
驚き戸惑いつつも、それを握り返す。
「それじゃあ、さっさとあの化け物を倒すとしましょう。ぐだぐだするのは日本史だけで十分だわ」
「え……? ど、どういうこと?」
ルナちゃんのセリフに困惑していると、握った手を強く引かれる。
「わっ!?」
「私に合わせなさい。フレア。戦いなら私の方が慣れている。それくらいやってのけてくれるでしょう?」
「っ! うん!
杖を握り、ルナちゃんの手を強く握り返して、導かれるままに
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