4 ~連襲の少女~
ルナちゃんが単独でディザイアーを引き付けていた――実際には暴走していただけだが――のと、
今回は、初めから日本全国の国家魔法少女に召集命令が出ている。
ルナちゃんの暴走というアクシデントはあったものの、ゆっくりとだけど
「トモナ」
そんなことを考えていると、
「もう戻ってきて大丈夫なの? 思ってたより結構早かったけど」
「うん。回復の方は早いから問題ないって。だから
リサ先輩が聞いているのは、
「そ、そう。ならまだ戦力にはなるようね」
あれ? リサ先輩ってこんなツンデレキャラだっけ。
などと
「――っ! トモナ!」
リサ先輩の張り詰めた
「ぉぉああああぁぁぁぁぁ………!!!」
そしてこの場に居る魔法少女達がその衝撃と
「く………。 一体何を―――ッッ!! まさかあいつ、名古屋城を!?」
「ああもう! ちょこざいな! あんなもの壊されでもしたら、ただでさえ
リサ先輩の
だが、いち早くディザイアーの動向に反応できた魔法少女達は
なんとか出遅れずに駆け出せはしたが、
そんな中、辺りの動揺を
「お~っほっほっほっほっほっほっほ!! 今こそ
『ヒヒヒ――――――イィン!!』
そう言って馬の
「は………はぁああ!?!? ちょ、なにあいつ―――魔法精霊獣に、乗ってるぅ!?」
そう。乗っている。馬のような魔法精霊獣の
「いきますわよ
「違う! それは乗られる方じゃなくて乗る方! しかもウマじゃなくてクマだ!」
「
詠唱途中ということも吹き飛んだリサ先輩のツッコミが聞こえていたのか、前方を
契約者を背に乗せた、白い毛並みが無駄に
「さあ
ヒサキさんが手に持った鞭を空中で高らかに打ち鳴らすと、
「パーティの始まりでしてよ! お
ヒサキさんの号令と共に、オフホワイトの
「そんな馬鹿なですわッッ!?!?
「アンタの乗ってる
本物の
「それもそうですわね」
「納得すんのかい!」
「そう言えば『金太郎』って、大昔の貨物列車の名前だっけ?」
「ズレてるから。
「テリヤキ?」
「勝手に
「ちょっとテリヤキ、胸のとこから
「話をすり替えるな。そも、ならばその前に、その仕様もない呼び方をどうにかせいと毎度
「分かったから。そこから話さないで!」
「キサモが――!」
また長くお説教される前に、焦げ茶色の頭を押し込んで体の中に戻させる。
そんな話をしているうちに、人型ディザイアーは
「って、ちょいちょいちょいちょい! このままじゃあいつ高速道路突き破んじゃないの!?」
リサ先輩の
高速環状線に続き現代日本
下手をすれば
「クソ! ふざけん
本町通を
後ろから追いかけてくる
数歩
「遅ぐなっですまね!」
そんな聞き慣れた声とセリフが、同じく土色の、いや
声の
「クォ………ッッ!?」
腕を弾かれた人型ディザイアーは、上体を
しかし振り上げから返す
二度もの
「
「まだ遅ぐなっでしまって
「
飛び付くリサ先輩を抱き止め、再び謝るもう一人の先輩魔法少女、
リサ先輩が抱き付いたところで、
「ん……すまねぇ。今のんで魔力ば切れちまっただ。
「山形と静岡から走ってきて、その
「んだら、これ躱すのんも任せっべ」
「へ」
リサ先輩が振り返ったそこには、大きく振りかぶった頭上から、怒りのパンチを叩き込まんとするディザイアーの姿が。
「ちょ、待っ、
「ガァアアアアアア!」
「くれるわけないでしょねーっ」
叫びながら、リサ先輩は
周りの魔法少女達も、加勢に回ろうとするがその大半がディザイアーを追いかけるのに出遅れた後発組であるため、高速環状線
「えーっと! 『
「リサ!」
「リサ先輩!!」
はずだった。
「はぁ!!!」
ズドッゴンッッッ!!!
一息の気合が、リサ先輩と高速環状線を殴り砕く寸前でそれを阻止する。
空から降ってきた白いハイソックスパンプスの
その
名古屋高速都心環状線の向こう、その場の
倒れ行く巨影を避けるように、
それらを見て、
「生物ではない馬の大群に戦闘メイドって、ここには歩いて行けない
「ルナちゃん! それに
高速環状線の直前の
リニアで駆けつけてきた、関東の国家魔法少女達だ。その中に、ちゃっかりと
先ほどチラっと見えたのは、彼女達を乗せたリニアモーターカーだったのだ。
ルナちゃんは自分の背後に国家魔法少女達が集まるのを
日本の魔法少女の
その時、
再三に渡り強襲を受け、自身の
ギリ………。
と、聞こえるのも不自然な身の毛もよだつ歯ぎしりが、全ての魔法少女達の
この感覚に、
数日前、一瞬にして目の前が真っ暗になったあの時と同じ―――
「――っああアァァァァアアアあァァァああああああアアアアアアアああぁアアあぁああアァァぁぁああアああァあぁあぁアァアァアァアあああああアああァアアあぁァあアッッッ!!!!!!!!!」
びりびりと空気が
機能として存在する意味があるのかもわからない、影の怪物の黒い眼が、怒りにチラついたかのように見えた。
「くグくぅウ………ガあァァァああああアアアアアアアア!!」
まるで台風の中に居るかのような突風に包み込まれ、身体が人型の怪物へと吸い寄せられていく。だがそれ以上に、紛れもない違和感が深刻な事実を突き付けてくる。
「――!? ま、
誰かが叫ぶ。
肉体だけではない。
身体の内に
「ま………まさかこいつ、魔力を、私達の魔力を吸い取ってる!?!?」
高速環状線の防音壁にしがみ付くリサ先輩が叫ぶのが、疾風に紛れて聞こえるのが分かった。
誰かがこの嵐の中、魔法を
誰もが、逃げられなかった。
怪物が吸い込んでいく物をよく見ると、吸収される寸前に、粉々に分解されているのが
このままでは、いずれみんな力尽きてしまうのは誰の目にも
ふと、隣に立つルナちゃんを見る。
ディザイアーの特殊な攻撃、《
そう思った
「ぅ……ルナ、ちゃん………?!」
左手に拳を作り、固く握り
瞬間的に悟った。彼女の、成そうとせんとすることを。
「っ! ダメ、だよルナちゃん! 確かにルナちゃんの力は凄いけど、相性が悪い! 頭の良いほうじゃない
「
化け物の
その
「あなたに私の何が分かると言うの! 私には、まだ失うものがある。無くなってしまうのが恐いものがある! もう何も失うものが無いお前とは違うんだ!!」
「―――――――っ!!」
その感情は、
その感情にも、
かつて、自分が
もう二度と味わいたくない、誰にも味わわせたくない、
「…………違うよ……」
気が付けば、
それに気付き、だけど止まらなかった。
「っ何が違うと―――」
「
「―――っ………」
「確かに
次々と、言葉が
「ルナちゃんが居るって!!」
「――!?」
「
「
「前にも言ったでしょ。ルナちゃんの大事なものは、
力をゆっくりと吸い取られていく
「だから、行かせないよ。だってルナちゃん、笑ってないもん。ルナちゃんの笑顔を
「……………なら、どうすればいいのよ! あなたにならどうにかできるの?」
その目には
そんな大切な友達に、
「分からない。でも、ルナちゃんは一人じゃないよ。ルナちゃんと一緒なら、
「………それは根本的な解決に繋がってないでしょう」
薄く
「――まったく。あなたはいつもそればかりね。……私を笑わせたいと言うのなら、まずは考えなさいよ。あれをどうするのかを」
言って、野良の魔法少女は気配を落ち着かせる。
認める。とまではいかなくとも、彼女なりに、受け入れてくれたのだろうか。
そんなルナちゃんのためにも、どうすればいいか考えなくちゃ。
だが、この絶望的な状況で、打開策なんてものは
その時。
「
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