2 〜無能の少女〜
江戸川を越えた
猫や犬のようにお尻を落とし、首との境が見分けられない頭を乗せたスラリとした胴を
「あれはイタチ型じゃないかしら」
近くの商社ビルの屋上で様子を見ていた
「えっ。フェレットじゃないの?」
「人に飼育されている生物がディザイアー化したのなら、あなた達
「そっかー。フェレットじゃないかー。………フェレットじゃなくていたちなの?」
「あなたのそのフェレットに対する思いは一体なんなのかしら………」
ため息と共に吐き出された言葉に、返事は不要と言うように
「ところで、私がこれに気が付いてここへ向かって来るまでにそれなりの時間があったと思うのだけれど、他の
ルナちゃんに向けていた視線を外し、いたち型のディザイアーの
警戒避難誘導のアナウンスが江戸川の向こうから聞こえてくる。
今こうしていたち型ディザイアーの動向を
「うん、
「……………っ」
言葉は口にしなくても、ルナちゃんが
それとも、前に言っていた”守りたいもの”が危険に
「大丈夫だよ。療養中って言ってもほとんど治ったようなものだし、魔法少女は
言ってはにかんでみせると、
夕日ももう山の向こうに隠れて表情は見え
「…………だとしたら、あのディザイアーは私の手で
「えぇ? もしかして一人で戦う気!? 危ないよ。ルナちゃんは確かに強いかもだけど、一人でディザイアーと戦うなんてそんな危ないことはさせられません!」
「問題無いわ。これまでもそうだったし、今回も今まで通りやるだけ。それに私一人の方が下手に連携を組むより効率的で安全よ」
「だったら
「(あなたという人は、やっぱり他の狗共とはどこか少し違うわね)」
「……ん? 何か言った?」
「あなたみたいな甘い人間がよく今まで生きてこれたものだとある
「ホント!? えへへぇ、そんな程でもないよ」
「
ルナちゃんはまたも左手で頭を抱える。むぅ~、と
「………別に無茶な戦い方をしようと言っているわけではないわ。第一、あれが病院の上に居る以上こちらもそうそう手を出せないでしょう。それにあれも
「と………?」
「関係無いから無視してちょうだい」
「わぷ……!」
ふい、と
なんの負けるか! と、それを逆に押し返す。ふんぬぬぬ。
「ちょ、なに頭を押し付けてこようとしてるのよ! この………!!」
ぐぐぐ……、と双方引かぬ押し合いの綱引きが繰り広げられる。右手を左手で支えるルナちゃんに、両足をしっかりと踏みしめて顔を突き出す
ふとそれを見ていた―――目のようなものは
「わきゃっ!? っぺぶ!」
「………こんなことをしている場合じゃないでしょう! まったく……あなたと居ると調子を
「いたたたた………。
「そうね。ディザイアーは
「あんなにじっとしてるなんて、どんな欲望からディザイアー化したんだろう」
「それについては
「「!!」??」
後ろからふいに声が掛けられて、慌てて起き上がって振り返る。
半身だけ回して構えるように背中を
「あれっ。
「いやぁ~~。なかなかに
「………誰?」
警戒心を隠す気配もなく、ルナちゃんは怪しい雰囲気が
「あっはっはっはぁ。おじさんはひどいなぁトモナさん。私はこれでもまだ、二十代ですよぉ」
「で、その雑用係の国の狗がここへ何の用かしら」
頭を
ルナちゃんに
「そ~うでしたそ~うでした。今回はトモナさんとお会いしに来たんでしたぁ。ところでトモナさん、本題とあのディザイアーについて、どちらから先に聞きたいですかぁ?」
楽しそうな調子で両の手の人差し指をそれぞれ順に立てて
そういえばさっき情報がどうだとか言っていた気がする。
「あっ、そうだ。あのディザイアーの情報って?」
「そんなものよりももっと重要視するべきものがあるでしょうに………」
「えぇ~えぇ。まぁ情報と言いましても、
「えっ、それってあのディザイアーはそのお婆さんのお見舞いがしたくてああなっちゃったってこと?」
「あくまで噂からの推論ですが、そういった
後ろの病院を振り返り、その屋上のディザイアーを見つめる。ディザイアーはただただ座ったまま、小さく「くぁ……」と
今まで戦ってきたディザイアー達とは違い、暴れるような
その
その時、ルナちゃんが
「トモナ。例えどんな事情があろうとも、相手は怪物と化した
「………うん。あの時の暗闇のせいで、世界中で
病院の屋上にディザイアーが出現した以上、移動が可能な患者さん達は避難しているだろうし、そうじゃない人も何かしらの防衛処置で
それに
ルナちゃんは
「あの
「ああぁ。そうですねぇ。実は、先日の一件でトモナさんが魔法を覚えられたとの報告がありましたので、もし可能であれば今回の戦闘などで
「あー! そうだ。そういえば忘れてた!
国家機関所属の魔法少女は、自身の魔法や魔力のパターン等を国に報告して、ディザイアー
それに、
「トモナさんは今まで魔法を使用なさらず純粋な魔力だけで戦ってこられたので、現場状況や自己申告、居合わせた魔法少女さん達による証言から戦績等を
「もー。
「今から
「まったく、仕方がないわね。あなたのあの魔法なら、私も余裕を持って戦えるでしょうし………」
ルナちゃんに
杖の
光の色は魔力の流れに
溢れ出す魔力で商社ビルの屋上が揺らされ、風に運ばれて来たのであろう小石や枯れ枝に葉っぱを
空気に緊張が走っていくのが分かった。
その空気も
「……………………………………トモナ?」
ルナちゃんがちら、と
「………………あ」
「あ?」
「あ………あれ~~~~~? 魔法が、出ない?」
「は?」
「おやぁ?」
「ていうか、あの魔法ってどうやって使ったんだっけ………」
杖に
すっかりと
「は……はぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ??!!」
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