第二章 - 絆
1 ~奇行の少女~
「み~きちゃん!」
学校の
「…………
肩越しに
先日地球
「えー、そんなこと言わないでよ。お
「あれは先輩が勝手に突っ込んできただけじゃないですか。勝手に変な
振り払ってもなお
「えー? ………………………………………………………………………………やだ」
「今の無駄に長い
後ろ手に
押し寄せてくる
「この間の階段の時は
「え? 私
「あれは痛かったぁ………。
この先輩、意外に力が強い………!
「あれはあんたがいきなり公衆の面前で青少年に
「いったい何を言おうとしたんですか………」
「聞きたい?」
「いえ、放送禁止事項に抵触する発言はどこかとは言い切れませんがマズい気がそこはかとなくするので遠慮しておきます」
「なんか
「確かにあの時
「うぅ……
「
「知らない言葉じゃないけど、それ自分で言うやつじゃなかったと思うよ!?」
トモナ先輩———六日前、階段の踊り場で彼女のことを見かけた時、
それなのに、翌日の五日前に再び顔を合わせた時には、きれいさっぱりとまではいかなくとも、マイナスの感情は全く出てこなかったのだ。
それから何度か
「そうだった。
「
思い出したと言わんばかりに手を叩き、明るい茶髪の先輩は楽しそうに切り出す。
「
「もー、固いなー
「
「くぅ………
「深輝さんはどうする?」
「え? ……はぁ。まあ
財布の中身を確認し始める
私はあまり名前で呼び合うのを好まないのだが、
「やった、そんじゃ早速行こ―――! ――あー!」
大手を振って喜び
あまり遅くならなければ。そう言いながらも、『ただ私は飲み物を頼んで、それを飲みきればその時点で帰るだけです』。足元に転がってきた貨幣を
道中、道路の
「はぁ………。
「そう? 楽しかったかな」
「まあ
「《悪質》という単語を聞かなかった風に話を進めないで下さい」
嬉しそうにはにかむ
ちりんちりりん、と来客を知らせる棒状のドアベルが、心に透き通るような音色を
カフェの内装は二十一世紀も終盤の近年には珍しい、木の
放課後の混雑する時間にも
ドアが閉まり、中の様子を
「いらっしゃいませ。三名様ですね。空いているテーブル席で自由におくつろぎください!」
それに対し
十帖
「おねーさん!
「私はエスプレッソ。
「え、えっと……
私達の注文が来たのは、入店して五分とちょっとと言ったところだった。オーダーが通ってからは早く、若いが年相応とは少し言い
「わぁ! これ面白い。上の甘いコーヒーの下に別のコーヒーが二段になって入ってる! 甘くなった口の中でほろ苦いのが広がっておいしいー!」
目を
私の頼んだ抹茶ラテは、ココアをベースに抹茶とミルクが
「おい、しい………!」
「このエスプレッソ……! あの店員、できる!」
どうやらこれに関してはあまり深く触れない方が良いようだ。
その後は今度行われる中間テストは
気付けば、BGMとして店内放送で流れる穏やかで
目の前には、いつもと変わらず閉まらない顔をしている
数口ほどを残し、始めの温かさを
「あー。おいっしかったー! ——―あふ、ふあぁわ」
一人早くにカップを空にした
「ぶふっ、ふふぉ……げっ、ごほっ! えっほ、かひゅっ……げほっ! ぉほ!!!げひゅっ、けはっ! けほっ―――!!」
それを紙一重で何とか
「何やってんですかこんな人前で! 来年には高校生になるっていう女性が
「ばわっ! わっちょ、わっわっ、あーっ―――」
「かひゅ――、かひゅ――、かひゅ――、かひゅっ、ひゅ――、かひゅー…………」
頭を丸々ブレザーで覆われた
「なんだどうした。
「あったたたたた………? へ? だれ……?」
「あれ………? どっかで、見たことあるような?」
ブレザーを手に独り言を漏らす
「む。
「す、すみません。
「俺の名前は
「うちのクラスでは《
「なんでそこで予想されるものより一段下げて名付ける!? あれか、俺が
「あっ。ごめんなさい………。まだ先生の名前は皆覚えきれていなくて。その、どうせなら、
「多分そういう意味ではないだろうが……。はぁ、入学して
悩ましそうな
「も、申し訳ないです。えっと、タイ……
「ああ。ここは俺の双子の
「なるほ―――えぇ? もしかして、先程からお店の中を行ったり来たりしている女性店員さんの事ですか?」
「それ以外の他に誰が
当たり前のことに何を言っている、とでも言いたそうな顔で頭を傾げる
「あら、もしかして
いつも間にか女性店員さんが
「
「にい、さま?」
「い、いえ、はい……私は先生のクラスの、その、生徒です」
「ううむ、世話をしているのどちらかといえば俺の方だが……」
倒れたまま起き上がろうとしない
「そいうえば、
「え? 先生、一年生の先生なのになんで
「いや、『
「
「限りなく近いっていう表現から目を
おほん、と
「それより、さっきの騒ぎは………また
入り口のドアを肩越しに
店内に飾られている細長い
学校の先生のもっともな言い分に、私と
「ホントだ、もうこんな時間だ。クッキーもコーヒーも美味しかったし、また来たいな」
「そうですねー。先生が
「あら。気に入ってくれたのかしらね。だったら今度いらした時は、声を掛けていただければお菓子をサービスしますね」
「ありがとうございます。その時はぜひ最後まで味わわせてもらいます」
「…………あ、えっと。そ、それでは、今回はお言葉に甘えさせて、もらいます。
そこはかとなく目を
「ははは。気にするな。この辺りは他の学校の生徒も多く居る。遅くならなければ制服で来ても多めには見るさ。もちろん別の所に行くのなら私服に着替えてからにするべきだがな」
「は、はい」
その後は、
「それでは失礼します。
「俺は
「先生ごちそうさまでした!」
「
「いつでもいらしてくださいね」
店先まで見送りをしてくれた
「あー! そうだ忘れてた。急用があったんだ!
それを
「いえ。大丈夫です。……私もこの後近くで用事があるので。
渡された硬貨を押し返し、一歩下がって頭を下げる。そそくさと下り坂から横道へ足を向け変えた。
「あの、今日は全然、嫌とかそういうのではなかったので、その、誤解なさらなくても………えっと———」
言葉を上手く
「うん。私も楽しかったわ。
「いえ、そうでは―――。し、失礼します」
頭がぐるぐると混乱しだすのを振り払うように
胸の奥をチクリと刺す不安を
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