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『こちらエアX、ジェットライン588便！　管制局応答求（もと）む！　滑走路の誘導灯が。いや、街中の明かりが一つも確認できない！　我々は今、いったいどこを飛んでいる！？！？』

「ちょっと！　どうして照明が点いてるのにスタジオがこんなに真っ暗なのよ。こんなんじゃ収録にならないじゃない！！」

『空軍統括基地（きち）本営！　一部の計器や稼働系に異常アリ！　仮想敵機はおろか、地面の方向さえ分からない！！　街灯りは、星々は、当機はどこだ！？』

「クソ！　どいつもこいつもどこ見て運転してやがんだ！　そもそもなんだこのくらさは。どのライトも全く意味をなさねぇじゃねぇか！」

『こ、こちらスペシャル（S）・スペース（S）・セレクト（S）・ステーション（S）……。ASAN（アサン）通信本部、ち、地球は今、大規模停電でも起こしているのか……？　それとも、昼でも喰われたのか？　大地も、海も、何も見当たらないぞ…………』

「おうい。そっちはどうダァ。羊っこ居（お）ったか！」

「ダメだ！　どれだけ照らしても周りが一切見えねぇ。お前ぇこそ今どこいる！」

『お客様にお知らせいたします。只今（ただいま）、外部のあらゆる視覚認識手段が確保できない為、当列車及（およ）び鉄道線系全線が運転を見合わせております。多大なご迷惑をお掛けしますことをお詫び申し上げます。また、車内の照明設備は最大稼働させていることをご承知ください』

「所長！　ユーロトンネル内で多発している事故に、イギリス側から迅速に対処しろとの打診が再三に渡って来てます！」

「バカヤロウ！！　んなこたぁ分かってんだよ。ったくブリテンのクソ共が。トンネルどころか俺らフランスだって右も左も見えない状況で救助もクソもねぇんだよ！」

『島内にいる皆さん！　昼頃から活動していたキラウエア火山の噴火が突如観測できなくなりました。見えない溶岩に最大限警戒してください！　繰り返します！　キラウエア火山火口から流れ出た溶岩が確認できなくなりました。屋内外に関わらず最大限注意して、警戒を怠（おこた）らないでください！』

「Shit（シット）！　何よこれ。どこの国の魔法少女がやらかしたのよ！　これじゃおちおちと朝のワッフルも焼けないじゃない！！」

『世界は闇に包まれた。主の与えられる最大の試練が始まったのだ。今は祈る時。ああ、天上の主よ―――』

「おいなんだってんだ！　空から急に蕎麦（そば）が降ってきやがったぞ、どうなってやがんだチクショウ！　どっかで兄ちゃんが自転車転（ころ）ばしてやがるし、さっきからスマホーンの画面明るくして照らしてんのに何にも見えやしねぇ！！」

『市警察全職員に通達！　正体不明の完全暗転現象が発生。各地で様々な混乱や騒動、事故、そしてそれらに便乗した犯罪が頻発に発生することが予想される！　各員取れ得（う）る手段を以（もっ）て全力でこれらに当たれ！！』

「マムーリャ！　朝だったのにいきなり夜になったよ！　ジャルプチツァがおこっちゃったの？　なんにも見えないよ！　マムーリャどこにいるの？　バーチコぉ！？」

『滞空中の全避難ヘリに告ぐ。市街の建物や機体同士の衝突を防ぐため、各機体ごとに別々で一定高度を保て！　我々もこの現象を確認している。これがいつ収まるか分からない。なるべく落下時の対処できる高度を稼ぐんだ！　各高度は振り分けはこちらがする。感覚と経験で飛べ！！』

「なんじゃこりゃあ！　まさか東京に出たっちゅう、ごっついディザイアーが起こしよったでもいいよるんか！？　さっきからずっと魔法ぶち光らせちょるんに、なんも見えよらん！」

『———……——こちら南極観測基地。地平の向こうの太陽も、さっきまで瞬いていた南十字座や他の星々も、一瞬にして消え去ってしまった。………世界は、終わったのか――——————？』

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