5 ~薄白の少女~
やや
そこにある屋上スペースには、やっぱり誰も
辺りを見回すと北の方に、関東平野には異色な、平地に一つだけポッコリと顔を出す
その時のディザイアーは、日本史上でも記録的な強さと大きさの超大型ディザイアーだったと、二年生の地理の時間に習った気がする。あれ? 日本史の授業だったかな? 経済……ではなかったハズ。
カエルかアンコウのようなずんぐりとした図体に、魚のようなヒレで地面を
「な、
「現実をあるがままに受け入れろ。
「っ! 分かってる!」
テリヤキの遠回しな
離れた学校の屋上から見えただけでも、十人以上の魔法少女が集まっていた。それなのに、あの大型ディザイアーは警報が出てから数十分でこんな内陸まで上がってきている。多少は足止めできているみたいだけど、それでも
関東は日本でも指折りのディザイアー出現スポットだ。そんな関東やその周辺を守る
たった一つの魔法も使えない
色んな路線が乗り入れる
もう正面には、
『アンタはここらじゃ
お昼休み、リサ先輩に貰った自信が胸を
その高鳴りに
そうだ。私は、魔法少女になったばかりの半年前とは、違う。たとえ未だに魔法が使えなくても。
「
自分に出来ないことをアレコレ考える必要はない。
みんなが攻めきれていないなら、
魔法が使えなくても、いや、魔法が使えないのなら、魔法が
「理解しているのなら、特には何も言わん。だが、魔力とは己の気力も源とする。いくら貴様のそれが膨大と言えど、気落ちすれば、
頭に乗っていたテリヤキが、渋声を鳴らして前足で
「わ、分かってるよ! ていうかテリヤキが余計なこと言うから、せっかくの気合が紛れちゃうじゃん!」
「なんだと小娘!
「なにおう!? テリヤキこそハチョーが合う女の子が他に居ないって半べそかいてたんじゃん」
「だっ……! 誰がそんな情けない
「言われなくてもやるよ! ていうかテリヤキがわざわざ言うからやる気そがれちゃったよ!」
「何を
「ちょっ。どこ見てるのテリヤキのエッチ!」
頭の上の
それに対し、テリヤキは
「誰が貴様の
「そうだった!」
テリヤキに言われ、改めて
テリヤキがいつものように
右手に握る杖に左手も
環七に出たすぐその先に、何度と見た
大きな怪我はないみたいだけど、衣装や体はもうドロドロだ。
「リサ先輩!」
「っ!!」
「まったくアンタは、不用意に突っ走るなっていつも言ってるでしょうに。でも、いいところに来た」
その苦笑いを含み笑いに変えたリサ先輩は、大きく息を吸い込んで、様々な攻撃を繰り出す色とりどりの少女達へ
「みんな! トモナが来た。とりわけ大きいのをブチかますわよ! 一点集中で道を
「「「おぉ――!」」」
少女達はすぐに声を
それでも、魚のような大型ディザイアーは
「「させるか」ない!」
が、止まない魔法少女達の総攻撃によってすぐに地面へ撃ち落された。
「——―の
体勢を
「今だ!」
レモン色の少女が叫ぶ。
ここに来てから、
その一撃一撃は、
もうこの場の誰もがすぐには動けないだろう。
「はぁぁあぁあああああああああああああああああああああああ!!」
皆の想いを魔力に乗せ、力強く大地を蹴る。
「「いけぇ!!」」
杖から尾を引いて
今まで
狙うはリサ先輩が繋いでくれた大きな頭の
「いけっ、トモナ!」
「ぉぉおおおおおお! ――あたしの! 今の、ありっったけを!! くらええええええええええええぇぇぇぇえええええぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇええええ之えええええええええええええ!!!」
杖の先の玉に込められた、はち切れんばかりの魔力を凝縮して
バリバリバリバリバリィィィイイイ!! と耳を
万力のような衝撃が、大型ディザイアーにぶつけた魔力から伝わってくる。少しでも気を抜けば、魔力ごと
空気を
「こ……ん――の、ぉぉぉおおおおお!」
「くげぇぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁっぁっぁっぁっぁっぁっぁっぁっぁ」
がむしゃらに放ち続けた魔力の
シロナガスクジラもかくやといった超重量を受け止めた環状七号線に浅草花やしきよりも大きいクレーターを空けて、魚ガエルの大型ディザイアーはゆっくりと宙を舞い踊る。そのまま地面に落下しその巨体に見合った
対する
「あたっ、あでっあだっだだだ………」
クレーターにあわや落ちると思うギリギリ手前、ゴロゴロと転がる
「まったく、最後まで締まり切らないわね、アンタは。
寸でのところで
「えへへ………」
猫のように首根っこを掴まれ、力の抜ける
その場に居た全ての魔法少女が、空気の凍り付く感触を共にした。
肌という肌が痛い。無意識にそれから
「
「—————ッッ」
昆布を腕に巻き付けた
どこかで水の
「…………くぁ、っっぁっぁっぁあ」
パラパラがらがらと、
良く晴れた午後の日差しがその異様で不釣り合いな黒い体を嫌にはっきりと映し出す。
遠くで
何か考えなきゃと停止した脳で思うも、思考回路は時が止まったように顔の表情を奪い去る。
「ッぁッぁッぁッぁッぁッぁッぁ………」
「
「あ――――――――――――――」
閉まらない口から音が漏れ出る。
普段は
いや、飛んだとようやく認識できたのがそこだったのだ。
「トモナぁ!!」
けたたましく過ぎ行く風切り音の向こう側、数メートル隣から聞こえる声に顔を向けると、そこには同じく空を飛ぶリサ先輩の姿があった。
私と共に居たリサ先輩も、一緒に飛ばされたんだ。
「り、サ……せんぱ―――」
徐々に離れていく先輩魔法少女を呼ぶ声は
「——ッあ、がっっ」
吹き飛ばされた反動で少なくなったなけなしの肺の空気を吐き出し、背中から建物にぶつかった衝撃で一瞬気を
「
「壁が崩れる! 全員すぐに離れろ!! 早く!!」
パートナーの
「……あ゙……がふっ」
がらがらと音を立てて壁が、天井が、
「きゃあぁあああ!」
「うあわぁぁ!」
男女の叫び声と崩壊音が混ざり合い
生物と無機物による騒ぎが収まり、一時の静けさが辺りを包み込む。しん……、と耳鳴りでも聞こえそうな空気の
「……」
「ん……けほっ、こほ」
建物に打ち付けられて、
魔法少女の肉体は基本的に生身の体だけど、変身の時に
気合で痛む体に力を
そこで初めて、自分がどこまで飛ばされたのか辺りを振り返る。
「ん……えほっ。ここ、は…………
見覚えのある体育館の中で、また静かになったパートナーの代わりに
「
「……こまり……ちゃん?」
人だかりを
「
なんということか、
振り出しに戻るとは正にこのことか。
親しい人たちに不意に会えて気が緩み、ズレた思考が巡る頭だったが、周りや足元に転がる瓦礫がすぐにどうしようもない現実を思い出させる。
「っ! そう――― ———だ」
自分の吹き飛ばされてきた先。大きく空いた壁の外に顔を戻したそこには、
ダメだ。避けてる
そうじゃない。それ以前に、あれが向かってくるのは。
「ディザイアーが来る! みんな逃げて!!!」
間に合わない。頭でそれが分かっていても、
「
直後、南向きの壁と天井を半壊させた体育館を、とてつもない衝撃波が襲う。
ビリビリと大気が鳴り
白い少女に受け止められてもなお、膨大なエネルギーを振り撒く大型ディザイアーは学校や近隣住宅街に衝撃波をしばし放ち続けた。
ぶつかり合う
「—————————、ふんっッッ!!」
一息の気合と共に魚ガエル型の大型ディザイアーを突き返した。
真っ黒な影の巨体はヒレをバタつかせるも、学校を囲うフェンスと道路を
「………ふぅーふう。……………はぁ、は、はぁは、はぁは―――」
「……あな、たは」
大型ディザイアーを投げ飛ばしたその少女は、
そこではっきりと記憶が繋がった。
間違いない。
「昨日の……、それに
過去二度の襲来ともその
そこへ、
「トモナっ。大丈夫!? 今ディザイアーが……って、アンタは……!」
「はぁ……はぁ——―。……まったく、情けない。
リサ先輩は
そんなリサ先輩には目もくれず、野良の魔法少女は白い衣装に
「ふん……。これ程までの個体はそういないでしょうし、倒しきれないのも
「そ、そんな―――」
「そんなことはない! みんな必死だった。少なくとも後から
「はぁ……負け犬がキャンキャン
彼女の
それを見て、野良の少女は
するとすぐに野良の少女は、
「馬鹿な……! あれはどう見ても魚類系のディザイアーのはず………。あれは、
「———? いったいどうしたって――」
その時、リサ先輩が疑問を口に出し切る間もなく事は起こった。
魚ガエル型の大型ディザイアーが
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