第4話 ひげ

 僕はげきどした。必ずや、かのじゃちぼーぎゃくの限りを尽くすご主人様を倒さなばならぬと決意した。

 どうも、僕は仔にゃんこのこっぺです。突然ですが、僕は今、すごーく怒ってます! ふんす!

 どうしてかというとですね、原因はかなたご主人様にあるんですよ。というか、じゅっちゅうはっくご主人様が悪いんです。


 今日のお昼ごろの話です。何時ものように、小説を一通り書き終えたかなたご主人様が書斎から出てきました。髪はぼさぼさ、服はよれよれ。空っぽになった小さな茶色いビンを三本持ってます。いつもは四本なんですけどね。


 大きなあくびをして、そらご主人様に挨拶をして、めろんお姉ちゃんとかれーお爺ちゃんもといお兄ちゃんに挨拶をして、最後に僕に挨拶をする。ここまでは良かったんです。

 でも、きょうはちょっと違いました。突然僕を捕まえて、高ーく持ち上げて、僕の顔にぐりぐりーって。

 いつもなら何ともないんです。ちょっとくすぐったいなーってくらい。でも、今日だけは違いました。痛かったんですよ。


 そう。ひげですよ、ひげ! 外国の言葉で言う所の、べあーどです。


 じょりじょりーって。ちくちくーって。僕の顔にほっぺをこすりつけてくるんですよ。それも何度も!

 そらご主人様のほっぺに顔をこすりつけても、痛くもなんともないのに。かれーやめろんとほっぺをこすりつけても、ふさふさであったかいのに。なんでぇ?

 とにかく。僕はとっても痛かったので、爪を立てて逃げたという訳です。かなたご主人様はとっても寂しそうに午後の仕事に行きました。

 ……ちょっと悪い事をしちゃった気もしないような、するような。


 でもでも。これはきっと、かなたご主人様が汚いっていうしょうこですね、間違いありません。最近は夜も帰って来るのが遅いし、朝も起きるのが遅いし、一日中眠そうにしてるし!

 かなたご主人様なんて、ふえーせーにして風邪ひいて、そらご主人様に治してもらって結婚しちゃえばいいんです! まったくもーっ!


 僕が怒りをあらわにしていたちょうどその時です。そらご主人様が炬燵から立ち上がってこっちに歩いてきました。多分、食器棚の上の棚から、ポテチなるものを取りに来たんでしょう。これはチャンスです!


 『あっ、そらご主人様! かなたご主人様ったらひどいんです。ちょっとやっつけちゃって下さいよー』

 「んー? なに、こっぺ。ああ、おやつが欲しいのかな?」


 ちっがーう!!!

 全然ちがいます。さんびゃくろくじゅうさんど違いますよ、まったく。


 僕があんまり怒っていると、めろんとかれーがご主人様の書斎から出てきました。今日は二人とも、そっちで遊んでいたみたいです。

 二人は僕に近づいてくるなり、顔をすりすり。心配かけちゃったみたいなので、僕もお返しにすりすり。

 んふー、二人ともふわふわ♪


 もういいです。

 かなたご主人様の所には、明日の朝になるまで絶対に行きません。……やっぱり、今日の夜まで絶対に相手しません。

 僕はこのまま、めろんとかれーの間に挟まって、そらご主人様の膝の上で眠ることにします。

 おやすみなさーいっ。

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