第3話 はな

 長いお布団のとんねるを抜けると、そこは枕でした。どうも、僕はこっぺ。仔にゃんこのこっぺです。大事な事なので、二回も言っちゃいました。えへへ。

 もうかなたご主人様も、そらご主人様も仕事に行っちゃいました。なので、家には僕とかれーとめろんしかいません。


 かなたご主人様は小説を書くお仕事をしています。自分のたいけんだんをもとにした恋愛小説を描いて、それがひっとしたそうです。今は、いせかいモノって言うやつを書いてます。

 そらご主人様は、週に何日か近くの大きな建物で働いているそうです。めろんいわく、『れじ』っていうヤツ、らしいです。それ、美味しいんでしょうか?



 なので、今日の僕の仕事は無し!



 ……とでも思っていませんか? ざんねん、ちゃんとありますよーっ!

 僕がほんかくてきに動くのは、ご主人様が寝た後です。僕たちにとっては、夜が本番なんです。今日も寝かせませんからーっ!

 そんな事を考えていると、まずそらご主人様が帰ってきました。りびんぐにばっぐを置いて、手をみずでゆすいで。僕たちを撫でるのかなって思ったら、すぐにお料理を始めちゃいました。

 とっても良い匂いです。少しだけ、おすそ分けしてくれないかな?

 そう思ってそらご主人様の足元に行くと、ご主人様は眉を下げて一言。


 「ごめんね? これは私と奏太のご飯だから。玉ねぎ入ってるから、食べちゃだめだよ?」


 …………そっかー。食べちゃだめなのかー。

 僕が少しだけ落ち込んでると、めろんとかれーが僕に寄り添います。


 『……こっぺ。あれを食べると、俺たちは死んじゃうかもしれないぞ』


 ええっ? そうなの!?


 『そうよ。それに、ご飯ならいつももらってるじゃない。おやつだって。……まあ、ぜんぜん足りてないけど』

 『うん。僕、もっと食べたい!』


 そう言うと、めろんは僕の顔を一舐め。


 『でも、前にご主人様のサンマを食べようとしたら、私怒られたわ』

 『……俺もだ』

 『こっぺ、怒られるのは好き?』


 いやっ! 僕、ご主人様に怒られるの嫌だ!

 僕がそう思ったのを察したんでしょうか。かれーは『……俺もだ』と言うと、尻尾を振ってご主人様の足下にに行って、ご飯の催促をします。めろんも同じように催促。そらご主人様は上にある棚から僕たちのご飯を取って、僕たちせんようの皿に入れます。かれーとめろんは同じ分量、僕には少なめにして、お湯を入れてふやかしたやつ。やっぱりこれが美味しいんです!


 ご飯を食べていると、かなたご主人様が帰ってきました。今日は、しゅっぱんしゃにお出かけだったようです。そらはぱあっと嬉しそうにして、テーブルの上にご飯を並べます。いただきます、と言って食べる二人は、まるで夫婦のようです。結婚、してないはずなんですけどね。



 さあさあ、お待ちかね。僕のお仕事の時間ですっ!

 そらご主人様とかなたご主人様が同じふとんに入って、眠るしゅんかんを狙います。

 狙いは一点、そらご主人様の小さいお鼻。僕が噛むのに丁度良さそうで、まん丸い穴が二つ空いていて、爪を引っかけるのにも良さそうです。

 しゅうちゅうして、おしりを振って、ねらいをさだめて――。


 ひゃっ! ちょくぜんで、かなたご主人様の手にふせがれてしまいました。むう、僕の動きは、かなたご主人様にばればれのようです。でも、かなたご主人様のお鼻は僕には大きすぎるし、むーー。

 そんな事を考えてたら、僕ももうすぐ寝る時間です。かれーが言ってました、寝る子は育つそうです。僕はいつもの定位置、かれーとめろんの間に収まります。あったかーい!

 それじゃあ、今日もひとはたらきしたことだし、ね!

 お休みなさーい♪

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る