第一章 こっぺ、ふたりのご主人様と出会う

第2話 かみのけ

 わがはいは仔にゃんこである。なまえはこっぺ。そう、こっぺです。そらに付けてもらいました。気に入ってます。

 あの日、かなたとそらに拾われてから、僕は二人のお家で暮らすことになりました。

 朝起きたら、四つの目が僕を覗き込んでいて、それはもうびっくりしました。

 警戒心まっくすな僕に、かなたとそらはご飯を食べさせてくれて、おしりを拭いて、トイレもさせてもらいました。


 そのあと僕は、かごに入れられてに動物せんもんのお医者さんに連れて行ってもらいました。

 体中を調べられて痛い針を刺されて、苦い何かを飲まされた時は、本当に駄目かと思いました。もう行きたくないっ!


 そうそう。そらとかなたの家には、僕の先輩がいるんです。それも二人も。

 まずはこの人、黒い毛並みの先輩にゃんこのめろんさん。めろんはとってもやさしくて、物知りなんです。僕のお母さんには負けるけど、お姉ちゃんみたいな感じ。

 もう一人は、めろんよりも年上で一番先輩の猫にゃんこ、かれーです。

 かれーはとっても無口で、何を考えているかわからないけど、僕とめろんを見守ってくれてます。僕が高い所に上って降りられなくなったら、助けに来てくれます。お父さんを通り越して、お爺ちゃんみたいな感じ。


 さて、僕は今、ご主人様の眠る布団の上に居ます。

 抱き合って眠るかなたとそらは幸せそうで、夫婦のようです。けっこんはしていないとかれーは言ってましたけど。めろんはベッドの下で、かれーはかなたご主人様の胸のあたりで丸くなっています。

 僕はみんなを起こさないようにそうっと歩きながら、二人のまくらに辿り着きました。

 まずかかなたの髪の毛をクンクン。鼻先でさわってみた感想は、固くて太い。匂いはあんまり無いけどすーすーします。

 つぎに、そらの髪をクンクン。同じように鼻でさわってみたら、細くて、やわらかい。甘くて優しい匂いがします。なんででしょうか?


 さんざん迷って、僕はかなたの髪で遊ぶ事にしました。かじかじ。む。

 やっぱり固くて、口の中がチクチクします。でも、匂いはするのに味が全くしないんです。なんでぇ?

 手で触ってみたり、噛んで思いっきり引っ張ってみたけど、抜けません。あ、いっぽんだけ、真っ白な髪がありました。えいえい、あむ。

 白い毛をいじったら、簡単に抜けちゃいました。……味がしない。ぺっぺっ。

 飽きてきて、次はそらの髪で遊ぼうとしたら、いつの間にか起きていためろんが待ったをかけました。


 『こら、あんまり遊ばないの。二人とも、寝てるんだから』

 『あ、めろんお姉ちゃん』

 『こっぺだって、寝てるときに悪戯されたら嫌でしょ? そっとしておきなさい』

 『はーい』


 めろんは僕の首を咥えて、かれーのところに行きます。かれーは少しだけ目を開けると、尻尾を揺らしました。めろんいわく、ここで一緒に寝よう、という事らしいです。

 ぼくはめろんとかれーの間にはさまれて、もう一度眠る事にします。

 外は雨が降っています。雨の音を聞くと、僕は少しだけぶるーな気分になります。お母さんにお父さん、僕の兄弟たち。みんな、どこにいるんだろう? 元気にしているのかな?


 目は閉じたままでいると、雨の音の他に、めろんとかれーの胸の音も聞こえてきました。かれーはゆっくり、めろんはちょっとだけはやい。

 ……ふああ。ああ、だんだん僕も眠くなってきました。きっとこれは、ふたりのご主人様とお布団のせいです。それと、めろんとかれーには僕を眠くさせるまりょくが備わっているに違いありません。この魔力には、抗えません。そーじょーこーかというやつです。だから。

 おやすみなさーい♪

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