第11話 はた迷惑なジャーナリスト



 「どうもっ。毎度おなじみ、世界のニュースを誰よりもどこよりも早くお届けマホークス新聞社社会部記者、アオマ=チュチュリーです!」

 

 胡散臭く思えて仕方ない笑顔を輝かせて、その少女は3人に敬礼した。

 半袖の白いブラウスに膝まであるキュロット、グレーのキャスケット、丸メガネに袈裟懸けの大きなショルダーバッグと、ラフな服装。しかし、首からぶら下げる撮影機器らしき四角い物体が、彼女を単なる来客と画した人物であることを示していた。

 

 だが、何よりも目を引くのは、彼女の後方。閉じていても尚大きい、青みがかった黒い翼が背中から露出し、アオマの動きに合わせてゆさゆさと揺れている。

 

 明らかに普遍的な人間とは異なる存在。そんな彼女に対し、チェロットの反応は冷ややかだった。

 

 「わざわざ自己紹介しなくても知ってますよ。それで? 今日は何しに来たんですか?」

 「んんー、冷たいですねぇ。いえね、なんでもこの店で爆発騒ぎがあったらしいじゃないですか。ここは私も大変お世話になっている行きつけのお店。ああ、オーブルさんは無事なんでしょう? チェロットさんは悲しんでいやしないか! そう考えると居ても立っても居られずに、こうして様子を伺いに来たんですよぉ。それなのにその態度は酷くないですか?」

 「嘘を言わないでください。どうせ面白半分で来たんでしょう? 新聞のネタになればと思って」

 「酷いっ。私がそんな人でなしだと思いますか?! 本当に心配して、仕事なんてほっぽり出して駆け付けたのにっ! そんな人間だと思われていたなんて……よよよよ……」

 「さっき玄関で取材がどうとか言ってたじゃないですか」

 「ああ、聞かれてましたか。じゃあ改めまして、ここで何があったか取材協力お願いしまーすっ!」

 

 涙を浮かべたと思ったら、次の瞬間には笑顔を取り戻し、悪びれた素振りを一切見せずに頭を下げるアオマ。チェロットはあからさまに表情を引きつらせ、一連の動向を見守っていたアリスとリリィは早くもこの記者の質を悟り、苦笑いを零す。

 

 その中でアリスは隣のリリィを肘で小突いた。

 

 「ん、どうしたの?」

 「あいつ、いま自分のことを人間って言ったけど、人間じゃねーよな? だって翼があるし」

 「ううん、人間だよ。確かに少し前までは違う種族に分類されてたけど、今はみんな『人間』になったの」

 「みんな?」

 「うん、みんな」

 

 そう答え、リリィは辺りに視線を配った。通りを歩く通行人の中に混じる、動物の耳や尻尾を生やした者や動物の骨格や外観を備えた者などを眺めつつ、彼女は語り出す。

 

 「少し前はね、人間と『人獣族じんじゅうぞく』、そして『獣人族じゅうじんぞく』に分けられてたの。人獣族というのは人間が動物の特性を得た種族。逆に獣人族は動物が人間の知性を得た種族なの。分かるかな? チェロットちゃんと話してるあの人は人獣族、人間の体に翼があるからね。獣人族は動物がベースだから、人間と骨格や外観が大きく違うの」

 「ああ、全身が毛むくじゃらのヤツとか、異様にでかかったり小さかったりするのがそれか……」

 「人間がエルフィリアになってる実を食べて魔力を持つようになった、ってさっき説明したよね? どちらもその過程でそれぞれ進化した種族だと言われてるの。過酷な環境下で生き残るために動物の特性を身に付けた人獣族。魔力を得たことで長い寿命と共に知性を蓄え、やがて人間の能力を獲得した獣人族」

 「ふーん。で、それがなんで一律人間になったんだ?」

 「魔王が現れたからだよ」

 

 答えたリリィは、彷徨わせていた視線を足元に落とした。続く声色は、先ほどよりも明らかに低い。

 

 「人間と、人獣族と獣人族。この三つの種族は昔、とても仲が悪かったの。人間は二つの種族を化け物と見做して迫害し、人獣族はそんな人間を軽蔑して、獣人族はどちらも自分たちより劣った存在だと侮っていた。そして、魔王が現れた時、三者の対立はさらに激化することになった」

 

 人類の信仰、風習の成り立ちは大抵の場合、未知なる畏怖から始まる。

 己に降りかかる不幸や災難の裏に大いなる存在を見て、それを鎮めるため、または免れるため、未知なるものに祈り、縋り、時には残虐性を厭わない。

 

 魔王が登場した時、その未知なる巨悪を前にして、人類は何をしたか。

 人獣族や獣人族を魔王の手先と無条件に決め付け、惨たらしい制裁を始めたのだ。自分たちがやっていることは世直しだと捻じ曲がった正義心を滾らせ、その熱は次第に世界を覆い尽くしていった。

 

 結果として、二つの種族は人間と戦う他無く、皮肉にも人間たちの振る舞いによって、彼らは魔王と剣先を同じくすることを余儀なくされたのだ。

 そうした泥沼の争いは魔王が討たれた後も続き、多くの民族が理不尽に絶滅まで追いやられた。フィリア教団がその争いを収め、三つの種族の橋渡しに入ったことで、現在の共存体制に至ることができた――――リリィはそう、説明を紡ぐ。

 

 「『三族さんぞく同一どういつ宣言せんげん』――当時28カ国が加盟する国際連合で教皇エリエステルが宣言し、翌年に締結された世界条約。人間、人獣族、獣人族は全て平等の存在とし、不当な扱いや差別、弾圧をやめ、奴隷状態から解放する宣言が出されて、ようやく三種族の不毛な争いは無くなったの」

 「なるほど、つまり三種族を『人間』と呼んでんのは便宜上か。飽くまで自分たちは同じ種族なんだと、だから争い事は止めよう、っていう建前だな」

 「そういう言い方はどうかと思うけど……でも、遺恨や蟠りはまだあるって聞くのも確かだよ。多くの獣人族で形成されたオデキム諸島や、人獣族の中でも特別とされる竜人族が支配する『竜ヶ峪りゅうがたに諸公国しょこうこく』とか、国際連合に加盟して、その条約を受け入れても他の種族に排他的な国もあるし」

 「そりゃそうだろ。散々殺しまくっといて、これから同じ『人間』になるから仲良くしましょうねー、って言われて誰が諸手を挙げて喜ぶかっつーハナシだ。その三族なんちゃら宣言ってのは要するに、お互いの領域をきっちり枠決めする不可侵条約みたいなモンだろ。これ以上、干渉してくるな、って意味合いなんだろうぜ。少なくとも人間以外の種族にとっては」

 「それは、そうかもしれないけど……でもこのヴェネロッテのように三種族が仲良く暮らしてる国もあるんだし。ほら、あの人みたく、人間社会で仕事してる人獣族もいるし……」

 

 リリィはアオマに目を向ける。期せずして、彼女の瞳もまたリリィを捉えた。その途端、朗らかな笑顔に別の色を宿したアオマは、チェロットの脇をすり抜けてアリスたちに迫る。

 

 「これはこれは、はじめまして! 私、世界のニュースを誰よりもどこよりも早くお届けマホークス新聞社社会部記者、アオマ=チュチュリーと申します! おふたりはチェロットさんと同じ制服を着ていますが、もしかして新しく入った従業員の方ですか?! この店で起こった爆発騒ぎについて知ってることがあったら是非教えてください!」

 

 アリスとリリィの手を握り、アオマは一気に捲くし立てる。その勢いに圧倒され、2人は咄嗟に言葉を生み出せなかった。

 

 「ちょっとちょっと、あたしがダメだからってアリスさんとリリィさんに絡まないでください。というかもう帰ってください」

 

 見かねてチェロットが横槍を入れると、アオマは大きく頬を膨らませる。

 

 「ぶー。いつになく辛辣ですねぇ、本日のチェロットさんは」

 「忙しいんですよこっちは。もうすぐお昼になるっていうのに、いつまでもあなたの相手なんてしてられません。第一、あなたと関わると碌な事がないんです」

 「ちょっとぉ、初対面の人もいるのにそんな言いがかりは止めてくださいよー」

 「何が言いがかりなモンですか! はじめて店に来た時の事いまでも忘れてませんからね! 取材だとか言って突然やってきて、勝手に厨房に入ってきたりお客さんに無理やりインタビューしたり! 挙句の果てにお金も払わずに飲み食いして、そうして出来た新聞にウチの記事はほとんど無かったじゃないですか!」

 「いやー、あれはねぇ、私も心苦しかったんです。せっかく一日かけて取材して、オーブルさんたちにも協力してもらったんですけどねぇ。いざ文章に起こしてみると、思いの外つまらなかったんで。ああ、これじゃあ購読者は満足しないな、って思ってボツにしたんです。ホント残念でしたねぇ」

 「い、いけしゃあしゃあと……」

 

 飄々と述べるアオマに、苛立ちを募らせるチェロット。ちなみに当人は消沈した様子だが、胸の内ではほくそ笑んでいるように思えてならないから不思議である。

 

 「その後だって、ちょくちょくやってきては長時間居座って、話のネタはないかとお客さんに絡んだり、頼んでもない大量の新聞を勝手に置いていったり! あたし知ってるんですからね! あなたの書く記事は信憑性の無いゴシップ記事ばかりだって! 暇潰しに読む都市伝説みたいなものだって、みんな言ってるんだから!」

 「失礼な! 私はデタラメな記事など書きません! 世の中に蔓延る不平不満や社会の不条理を掬い取り、権力者たちが隠匿する事件を暴き、真実を国民の皆様にお届けする! それが私たちジャーナリストの使命なのですから!」

 「前にロイス・マリーの地下に違法の賭博場がある(かもしれない)とかいうワケの分からない記事を掲載しましたよねぇ……!」

 「時として真実より大事なものもあるのです。ほら、国民の関心事とか、売り上げとか」

 「ジャーナリストの使命はどこ行ったんですかぁ!!」


 言葉を容易く弄し、アオマはチェロットの追求をのらりくらりと躱していく。まるで声調を変えずに矛盾を口に出来る胆力と、さらに嘘で塗り固める話術は、人生経験の豊かさに裏付けされたものだ。

 しっかり者とはいえまだ子どもであるチェロットには荷が重い相手であり、礼儀正しい彼女の言葉遣いも徐々に乱れが生じてくる。

 

 「いいから帰ってよ! 本っっっ当に迷惑なんだからぁ!」

 「わーかりましたわかりましたよもう。嫌われたモンですねー、まったく」


 顔を真っ赤にして叫ぶチェロットに眉を顰めつつも笑顔を絶やさず、アオマは再度アリスとリリィの手を取った。

 

 「お邪魔虫がいますので本日はこれにて失礼します。また後日、お話はその時にさせてください。ではっ!」

 

 2人から一歩を退き、アオマは背中の両翼を左右に広げた。幅にして優に三メートルを超えるシルエット。太陽の光を美しい勝色に反射する羽が波打ち、砂埃が舞う。

 

 アオマは膝を折って中腰になり、すぐに足を伸ばして地面を蹴った。彼女の体は易々と宙に上がり、羽ばたけばさらに上空へとその身を躍らせていく。


 数十秒ほどで空の点になったアオマは、そのまま雲の中に紛れていった。

 

 はあ、と疲労感に溢れる溜息。傍にいるチェロットが、項垂れるように頭を両肩を落としている。

 

 「……本っ当に……嵐のような人だなぁ……」

 

 搾り出すような声でチェロットが言う。それがどことなく様になっているように思えるのは、彼女の苦労話を聞いた後だからだろうか。

 情に絆されやすい父親に然り、先の記者に然り、この娘はそういう星の下に生まれた運命なのだろうと、1人考えては失笑を禁じえないアリスだった。

 

 (それにしても……)

 

 口元の緩みを消して、アリスは手元に視線を落とす。

 右手にあるのは一枚の小さな紙。それはリリィの左手にも存在し、アオマに握られた時に忍ばされたものだ。


 「ありゃあ中々の曲者だな。ちゃっかりしてやがる」

 「うん……どうしよう、これ」

 「お前は捨てといた方がいいだろ。口であれの相手が出来るとは思えねえからな」

 

 恐らく名刺であろうその用紙を眺めながら、アリスはリリィに答えた。表面にはこの世界の言語と思われる文字が並んでいて、その横には規則正しい記号の列が併記されている。そのどちらも解読不能だが、これが名刺だとすると、中心の文字の羅列が記者の名前および肩書きや所属社名で、記号が個人用の連絡先だろう。


 「あーあぁ、余計な時間を使っちゃった。さあ、早くお店に入りましょう。なにしてるんですか?」

 「あ、ああ。なんでもない」

 

 チェロットに呼びかけられて、アリスは咄嗟に名刺をエプロンのポケットに突っ込んだ。小首を傾げる彼女をそ知らぬ顔でやり過ごし、扉の無い玄関を潜る。

 

 施設内は3人が出て行った時よりもさらに整頓されており、廊下には溜まっていた塵は綺麗に拭き取られていた。食堂に進むと、集められていたゴミはそこになく、無事だったテーブルや椅子が端に追いやられた物寂しい空間に、リオナとオーブルがいた。

 

 「あ、おかえりなさい」と、気付いたリオナがチェロットたちを迎える。

 

 「なんか表が騒がしかったけど、誰かと揉めてたの? オーブルさんからほっとけって言われたから無視してたんだけど……」

 「ええ。どうぞこれからも無視し続けてください。それよりも……ずいぶんとすっきりしたね。もう厨房の準備はできたの?」

 

 部屋の様子を確かめながらリオナに応じたチェロットは、会話の途中でオーブルに話の行き先を切り替えた。

 オーブルはアリスとリリィから荷物を受け取りつつ、答える。

 

 「ああ、リオナが頑張ってくれたおかげでな。そっちはどうだった?」

 「こっちも大体は揃ったよ。安くて良い物もあったし、まあ……かなりの出費には違いないけど」

 「それはもうしょうがない。その代わり、おまえたちには精一杯働いてもらうからな」

 「「はいっ!」」

 

 リオナとリリィは力強い声を揃わせた。ちなみにアリスも返事はしたが、2人に比べると弱く、オーブルに届いたかどうか分からない。

 それでもオーブルは納得したように頷きを示し、荷物を持ってカウンターから奥の厨房まで歩いていく。

 

 「よしっ、それじゃあ食堂の準備も早く終わらせちゃいましょうっ」

 

 姉妹の意気込みに触発されたのか、妙にやる気を漲らせるチェロットは、抱えていたケージを近くのテーブルに置いた。

 

 「準備、っつったって肝心のテーブルや椅子はどこにあんだ?」

 「何を言ってるんですか。この中ですよ」

 

 ケージを軽く叩きながらチェロットはアリスに答える。そして、合点が行かずに押し黙るアリスを放置して彼女はケージの前に立ち、咳払いを一つ。

 

 「いいですか? あたしが今からやる通りにしてくださいね? では、いきますよ。[ヴァルデルテ]!」

 

 チェロットがオゼットから教わった単語を叫んだ瞬間、ケージの小さなドアが開き、そこから煌くモヤが放出される。チェロットはそのモヤに全身を包まれ、それが急速にドア内に取り込まれた時、彼女の姿は完全に消失してしまった。

 

 「はあっ?! なんだ、チェロットがケージの中に入ってったぞ!」

 「うっさいわね。いちいち騒がないでくれる?」

 「いや、だけど……」

 「ま・ほ・う! 四の五の言わず、それで納得しときなさい」

 

 慌てるアリスを頭ごなしに黙らせ、リオナはケージの前まで歩を進める。そして、チェロットと同じように先の呪文を発し、同じようにケージの中へ。


 リリィもアリスに気遣いながらケージの中に入って、残ったのはアリスのみ。

 

 「……俺も、やるんだよな? えーっと、前に立って、それから……」

 

 恐る恐る前に出て、アリスはケージに体を向ける。

 3人を飲み込んだそれは、そこにあるのが当たり前かのように、ただアリスを見つめていた。

 生唾を飲み込み、震える唇をゆっくりと動かして、アリスはその単語を言葉にする。

 

 「[ヴァルデルテ]」

 

 小さくも確かに唱えたその呪文に、ケージは煌くモヤを吐き出して応えた。それは瞬く間にアリスの小柄を取り込み、彼女に刹那の浮遊感を与えた。

 

 「あぃてっ!」

 

 視界が瞬間的に窄まり、体感的に加速したかと思うと、急に静止してアリスはつんのめる。しかし、倒れたのは食堂のカーペットではなく、白一色の床だった。


 見上げれば、ドーム状の天蓋が曲線を描いて、冷たい床と繋がっている。半径20メートルくらいの円形の空間、そこには三つのテーブルと四つの椅子が置かれており、それらをチェロットたちが運び出そうとしている最中だった。

 

 「あっ、ようやく来た。遅いですよー」

 

 一つの椅子を抱えるチェロットが、床に女の子座りしているアリスを横切り、後方にある光に満ちたドアの向こうへ消えていく。

 リオナとリリィは協力して大きなテーブルを運んでおり、チェロットと同じ道筋でアリスの横を通過していった。

 

 「あの、向こうの、椅子とかが軽いからね」

 

 光の向こうに消える寸前、リリィがそれだけをアリスに伝える。


 非力な自分は椅子を運べということなのだろう。

 

 「本当になんでもアリなんだな魔法ってのは……」

 

 あえて口にする事で自分を納得させ、スカートの裾を叩きながらアリスは立ち上がる。そして、椅子の一つを持ち上げて、覚束ない足取りで光のドアへ向かった。

 


 それから全ての内容物を外に移し、食堂に設置していく。見た目や大きさは区々まちまちだが、同じ柄のテーブルクロスを被せれば一応の統一性は演出できた。

 

 そうこうしている間に時計の針は回り、時刻は昼時を迎える。

 

 町中に溢れる喧騒がいよいよ最高潮へと達する時間帯。

 間も無くして、ロイス・マリーの店先は多くの足音と話し声で占拠された。

 

 「うわっ、なんだドアが無えぜ?」

 「なんか朝に爆発があったとかな。けっこう騒ぎになってたぜ?」

 「マジか。おーい、オーブルの旦那ーっ。無事かー? 今日はやってるかーい?」

 「とりあえずメシ食わせてくれーっ。腹が減ったぜーっ」

 

 玄関の方から聞こえてくる、たくさんの人の声。

 楽しげな、親しげな、きっとこの人たちは今、笑みを浮かべているのだろうと分かる、心地よい響き。

 

 「さてさて、お腹をすかせたお客さんたちがやってきました」

 

 それに触発されて、自然と表情を綻ばせるチェロットがアリスたちに視線を配る。

 彼女の瞳を爛々と輝かせるものはなんだろう。

 それはきっと、彼女が野心の外で思いがけず見つけた、一つの愛着のはずだ。

 

 「さあ、ついにみなさんの初仕事です! くれぐれも粗相の無いよう、頑張っていきましょう!」

 「「はいっ!」」「うーっす……」

 

 チェロットの音頭に3人が乗りかかり、一同は玄関へと足を急がせる。


 表に出てきた4人娘にどよめく男たち。

 そんな低音の喚声を切り裂くは、チェロットの若く瑞々しい掛け声。


 

 「いらっしゃいませお客様方! ロイス・マリー、本日も通常通り営業中です!」

 

 

 



 














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