偶像
好意が質量を持ったらしい。人一人程度の好意なら、その程度の重みで潰れることはない。知覚することはできるけれど、決して重荷ではない程の。首筋に貼った絆創膏みたいな。
だから例えば、愛し合うカップルならば、お互いの質量を感じながら仲睦まじく過ごせる、という訳だ。
しかし男には関係のない話だ。親を亡くし、友達はおらず、勿論恋人もいない。好意の質量なんて知ったことじゃない。大学を卒業し、警察官になって早10年、愚直に仕事に生きてきた。
ところで最近、変死体が多く発見されるようになった。今月に入って3度目だ。警察も暇ではないというのに。もう二週間近く家に帰れていない。通報者は皆、口を揃えて、『身体が』と口にする。早い話が、遺体が原型を留めていないのだ。そして現場は大抵、密室だ。男は被害者のプロフィールを確認する。聞いたこともない名前だったが、その顔写真には見覚えがあった。
被害者は、男が推していたアイドルだった。
検死官が告げる。
「死因は、圧死です」
ままならない夢を見た 音菊 @otokiku
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