vol.15~「プカプカ」(1971) ザ・ディランⅡ ~

 すっかり、陽が海に沈んで、対向車線の家路へと急ぐ車のヘッドライトが、連続して続くようになった。

 今日のお宿のことをあれこれ考えながら、スピードを落として、曲に耳を傾ける。というか、この曲は一緒に歌ってしまう。


 多くのミュージシャンがカバーしていると聞くが、僕が聴いたことがあるのは、福山雅治バージョンだけだ。


 この曲のオリジナルは、5年くらい前の西岡恭蔵の追悼コンサートをたまたまBS放送で見たときに初めて知った。

 それまで、西岡恭蔵や大塚まさじの存在なんてつゆとも知らなかった。

 というか、“フォークソング”自体に昔から疎かった音楽経歴。

 また、彼らが世に出すフォークソングは間違いなくメジャーではない“リアルフォークソング”だったから。



 まず、詞がとてつもなくすごい。

 西岡恭蔵が大阪出身ということを知るまでは、この曲は、東京を歌ったものだと思っていた。

 東京といっても、新宿ゴールデン街のようなたたずまいの中、一見、生きることに疲れたような男女が、実は、最後のところで力強い魂を持って生きている…そんな印象を持っていた。

 おそらく、“大阪”を歌ったものだろうけど、いまだに、ピンとこない。それは、僕が大阪の街を知らないからだろうけど。


 論評家みたく語りたくはないけど、どろどろしている詞なのにあっさりと歌っていて、弱そうでいて強い芯がある(ここにでてくる)男と女の歌をかっこいいと思う。

 程よく酔いがまわってきて、速い歌を歌い疲れた頃に、この曲をチョイスする。でも、カラオケに行く仲間の中でこの曲を知っているものは大抵いない。

 「おもしろい歌だね」

 「なんか雰囲気ある歌だね」とは、言われたことはあるけど、

 いかんせん、歌っているのが若輩者の僕。

 人生のいろんなことを味わってないと、この曲の良さは引き出せないのだと思う。



 港町 直江津。

 ここは、もちろん、大阪ではないけれど、一昔前の直江津にも、この曲がぴったりとあてはまる情景があったのではないか。

 港町には、出会いよりも、別れ。

 諦めよりも、希望。

 執着よりも、未練が似合う。

 そして、

 無数の男女の懇ろ(ねんごろ)が生まれて、そして消えていったのだろう。




♪ザ・ディランⅡ 「プカプカ」

https://www.youtube.com/watch?v=JXWJRXKUh-Y


現在地:新潟県上越市港町1丁目 走行中

https://www.google.co.jp/maps/place/%E4%BD%90%E6%B8%A1%E6%B1%BD%E8%88%B9+%E7%9B%B4%E6%B1%9F%E6%B4%A5%E3%81%AE%E3%82%8A%E3%81%B0/@37.1823346,138.2456446,16z/data=!4m15!1m7!3m6!1s0x5ff5b434b176c2a1:0xb6a35eb42711084b!2z44CSOTQ1LTAwNjcg5paw5r2f55yM5p-P5bSO5biC6KW_5riv55S6!3b1!8m2!3d37.3708159!4d138.5474601!3m6!1s0x5ff5d7d99e33d403:0x4e6e6e0fc1a8ac43!5m1!1s2018-10-31!8m2!3d37.1825409!4d138.2508628?hl=ja

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