vol.14~「花の首飾り」(1968) ザ・タイガース ~
高校3年生のある日の放課後。
忘れ物を取りに教室に戻ろうと人気のない校舎の廊下を歩いていたら、なにやら自分の教室から歌声が聞こえてくる。
男の声で、オフコースの「Yes Yes Yes」だった。
“あ~、きっとMが歌ってるんだな”
って思って、ガラリとドアを開けたら、たしかに、Mがいたんだけど、立っているMのまん前の机の上にF子が座っていて、Mの歌を聴いていた。
「あっ、ごめん」
と、そそくさと忘れ物をロッカーから取り出して教室をあとにした。
MもF子も、別段気にしていない様子だったが、僕は、かなり、ばつが悪かった。
Mは、かねてから抜群に歌がうまかった。
小田和正と同じキー、惚れ惚れするようなボーイソプラノでオフコースの歌を歌い上げる。
廊下や教室、また外でも処かまわず口ずさんでいる男だったから安心して教室に入ったら、この有様だ。
誰もいない教室に女の子と二人きりで、自然な雰囲気でオフコースの歌を歌って聴かせているこのシチュエーション。
なんともうらやましい限りだった。
僕が人前で初めて歌ったのが、小学校1年生のときの「六年生を送る会」だった。
いきさつは覚えていないけど、当時の担任の先生が、僕一人に『さようなら』という歌を歌わせたのだ。連日、放課後、ピアノを弾く先生のマンツーマンの指導を受け、当日、たった一人で1200人の前で歌った。本当に覚えていないけど、きっと、当時は“天使の声”だったんだろう。
2回目が、中学校3年生のときの文化祭で、出演バンドのセッティングの合間に、ビートルズの「ミシェル」を歌った。歌はろくでもなかったけど、友達が、「俺、ピアノ弾くから」ってとても自然な感じで飛び入りで歌った雰囲気がよかった。
3回目が、なぜか、「花の首飾り」だった。
しかも、Mのように、二人きりの部屋で女の子に聞かせた歌だった。
1968年発売だから、僕が4歳のときだ。物心はついていても、GSは縁遠い音楽だった。
初めて聴いたのが、高校生2年生のときで、ラジオ番組だったように記憶している。
ほかに、「エメラルドの伝説」とか「小さな喫茶店」とか「トンネル天国」とか結構GSを聴いて口ずさんだりしていた時期があった。
そんな折、僕の家に遊びに来ていた当時の彼女に(たぶん)せがまれて歌った歌が「花の首飾り」だった。
6畳の部屋で、畳に彼女を座らせて、楽器もなく、最初に「1・2・3」とか言って歌い始めて、最後のフレーズ
♪はなのぉ~ くびかぁ~ ざぁ~ りぃ~
って歌ったのかと思うと、本当に恥ずかしいエピソードだと自分ながら思う。
“オフコースを教室で歌うMとの違いはどうよ!”
って思い出しながらの、夕闇ドライビング。
さて、今日は、いったいどこまで走ろうか。
♪ザ・タイガース 「花の首飾り」
https://www.youtube.com/watch?v=6qPmtCnagUk
現在地:新潟県上越市夷浜 走行中
https://www.google.co.jp/maps/place/%E3%80%92945-0067+%E6%96%B0%E6%BD%9F%E7%9C%8C%E6%9F%8F%E5%B4%8E%E5%B8%82%E8%A5%BF%E6%B8%AF%E7%94%BA/@37.2017016,138.2799769,16z/data=!4m5!3m4!1s0x5ff5b434b176c2a1:0xb6a35eb42711084b!8m2!3d37.3708159!4d138.5474601?hl=ja
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