vol.13~「Wondering up and down~水のマージナル~」(1989) PSY・S ~
「息をひきとるように死ねるときは、この曲を枕もとで流してくれ」
と随分前にかみさんに言ったことがある。
若かりしその当時は、結構、本気で言ったつもりだったけど、「死」へのイメージがそんなにないお気楽なときだったからそんなことを考え付いたんだろう。
PSY・Sを知ったのは、1987年の深夜の音楽番組だった。
猛吹雪でテレビの映りが悪かったが、BGV代わりに点けっぱなしにしていた。
ふと、目を上げると、歳に合わないロリータチックな衣装を身に着けたちっちゃい女がピョンピョン飛び跳ねながら歌っていた。
“砂の嵐”一歩手前のブラウン管を目を凝らして見ると、当時、付き合っていた彼女の顔によく似ているからびっくりして、慌てて、ビデオの録画ボタンを押した。
それが、PSY・Sとの出会いだった。
それ以後、アルバムやライブビデオを買い求め、音楽番組の出演も割と多かったのでビデオ録画も欠かさず…といった具合にはまっていった。
PSY・Sは、安則まみ(CHAKA)と松浦雅也のユニットで、1985年にデビューし、解散が1996年だったと思う。
“顔が当時の彼女に似ていた”以上に惹かれたのが、CHAKAの声だ。
言ってみれば、どこまでもまっすぐでスピードが速い声。地球から宇宙空間にまっすぐに突き抜ける光のような声。
すこし受け口なんだけど、それを目いっぱい大きく開けて子どものように歌う。
もちろん、見たことないけれど、CHAKAの腹筋は相当なものだと思われる。
その声が、CDでもライブでもほとんど質が変わらないのがまったくもってすごいと思う。
そして、もうひとつが、唯一無二のライブパフォーマンスだ。
好き嫌いがはっきり別れるところだと思うが、嫌いな人は「まるで、幼稚園の学芸会」という印象を受けると思う(実際に仲間から言われたことがある)。
今では、その業界では超メジャーになった、南流石のパフォーマンスは、最盛期のPSY・Sには欠かせない存在になっていたはずだし、僕は大好きだった。
「Wondering up and down~水のマージナル~」は、1989年発売のアルバム『ATRAS』に収められている。
PSY・Sの曲は大体が、直接的な詞ではなく「印象的」であるため、聴き手にいろいろな感想や想像をもたらす。
この曲もそうだ。
夏の夕方、白いランニングシャツと半ズボンを着て、寄り道しながら家に帰る自分の姿を想像する。これ以上はないセピアがかった橙色の夕焼けがこんがり焼けた僕の肩や腕を照らし、僕は、走ったり、しゃがんだり、立ち止まったり、川を歩いてみたりする。
夕陽が沈んで、空が薄い群青色になると、すこし曲がった電信柱のてっぺんがこちらに落ちてきそうな錯覚に襲われて、「早く家に帰らなきゃ」って走る速度を速める。
草がざわざわと波のように騒ぎ出し、とっくに白い月明かりに照らされているのにも気がつかずにただ走る。
そんな情景を繰り返し繰り返しこの曲は僕に想像させた。
僕は、笠島以上にお世話になった、上下浜の海岸に車を停めて、しばらくリピート再生させて時を過ごした。
砂浜は一隻の船もなく、夕焼けもなく、ただ、空と海が暗く深い色になっていく様を見ながら、この曲を聴いた。
♪PSY・S 「Wondering up and down~水のマージナル~」
https://www.youtube.com/watch?v=3Jjy20poF-Q
現在地:新潟県上越市柿崎区上下浜 走行中
https://www.google.co.jp/maps/place/%E4%B8%8A%E4%B8%8B%E6%B5%9C/@37.2497911,138.3480428,16z/data=!4m15!1m7!3m6!1s0x5ff5b434b176c2a1:0xb6a35eb42711084b!2z44CSOTQ1LTAwNjcg5paw5r2f55yM5p-P5bSO5biC6KW_5riv55S6!3b1!8m2!3d37.3708159!4d138.5474601!3m6!1s0x5ff5d1a349585129:0xad52157eeba2dac9!5m1!1s2018-10-31!8m2!3d37.2512843!4d138.3508703?hl=ja
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