vol.10~「Hello, Again ~昔からある場所~」(1995) MY LITTLE LOVER~

 国道8号線に出てしばらく走った。


 道の端の茶色のススキの枯れ草は、折れんばかりに左に倒れ、これ以上ない小さな粉雪が絡み付いている。

 すれ違う大型ダンプは、「シャリシャリ」と大きなチェーンの音を立てて走っている。

 いろいろなお店の大きな看板は、みんな夏のためのもので、冬は、風雪に耐えるばかりの植物に見える。


 夏に此処を走ると、独特の期待感で心がくすぐられて、何度もやってくる上り坂の度に、坂の向こうに心をはせながら運転するのだけれど、冬は、重苦しく、強い風にハンドルが取られないように気をつけながらの運転になってしまう。



 別に、ファンではないけれど、この曲は別だ。

 ミュージックビデオを見て泣いてしまった、今のところ最後の曲だ。


 この曲には、何度も「僕」と「君」が出てくる。

 まず、女の子に「僕は…」と言われたり、「君は…」と言われるのに僕はとても弱い。

 けっしてきれいじゃないけど、AKKOの声は、手付かずでまっすぐな声に聞こえて、心が揺さぶられてしまう。

 男の子に「わたしは…」と言われても何も感じないのに。


 “僕は この手伸ばして 空に進み 風を受けて 生きていこう” 


 この詞の部分で、AKKOが、緑色の丘で手を拡げているところを上空から写していたと思うが、このシチュエーションにとても似ているところがこの近くにある(地図を参照してください)。

 この岬は県内ではそこそこ人気のスポットで、恋人たちがわざわざ南京錠を持って行って、岬の手すりに永遠の愛を誓うために鍵をかける場所がある。

 もちろん、僕はそんなことをしたことがないし、これからもするつもりも毛頭ない。

 それさえ無視すれば、この曲のビデオにかなり近い感覚が味わえる。



 8号線をもう少し進んだところに、北陸本線・青海川おうみがわ駅がある(地図を参照してください)。

  “ある”というか、本当は、8号線から下に“見下ろせる”。

 見下ろした風景は、季節を問わず、本当にすばらしい。

 実際に数十m降りて現地に立つと、プラットホームの後ろはすぐに日本海で、波しぶきが届いてしまう。


 かのテレビドラマ『高校教師』の最終回。

 女子高生と先生が、電車で逃避行した際に、この青海川駅に降り立ってホームに佇んだシーンがあった。


 そういえば、森田童子の「ぼくたちの失敗」でも、「ぼく」と言ってたっけ。

 う~ん…

 この「ぼく」には何も感じない(笑)




♪MY LITTLE LOVER 「Hello, Again ~昔からある場所~」

https://www.youtube.com/watch?v=RkF5_BpBQU4


現在地:新潟県柏崎市青海川 走行中

https://www.google.co.jp/maps/place/%E6%9F%8F%E5%B4%8E+%E6%81%8B%E4%BA%BA%E5%B2%AC/@37.3501227,138.485565,16z/data=!4m13!1m7!3m6!1s0x5ff5b434b176c2a1:0xb6a35eb42711084b!2z44CSOTQ1LTAwNjcg5paw5r2f55yM5p-P5bSO5biC6KW_5riv55S6!3b1!8m2!3d37.3708159!4d138.5474601!3m4!1s0x5ff5ca6d717ee745:0xd08636435c6f8995!8m2!3d37.3522323!4d138.4889638?hl=ja

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