vol.07~「Sultans of Swing」(1978) Dire Straits~

 再び、海岸線間際の道路になった。

 この道は左右のカーブに加えてアップダウンもある痛快な道だ。

 砂浜海岸であるにもかかわらず、山が海岸線まで迫っている地形のために砂浜が狭い。

 冬の波はやはり高いが、基本的には遠浅なので、夏には低い波が幾重にも押し寄せる素敵な海岸だ。

 ウインドサーフィンでにぎわうこの海岸も、今は、茶色の名もない草だけが強風になびいているだけだ。


 今日、初めての洋楽。

 邦題「悲しきサルタン」を初めて聴いたのは、中学2年生のときだったか。

 ABBAを筆頭とするディスコサウンドが大流行のときに、不意をついたようにチャートインしたこの渋い曲を僕は、ただの“ストック”としてテープに録音した。

 だから、テープがこの曲の前奏を流し始めると、僕は、早送りのボタンをキュルキュルと押して、次の曲に移した。

 85年の『ブラザー・イン・アームス』のアルバムが大ヒットしても、「マネー・フォー・ナッシング」のプロモーションビデオをMTVで見ることはあっても、アルバムを買うことも借りることもなかった。


 悔しいけれど、覚えていない。

 時期も、いきさつも覚えていない。

 どうして、「悲しきサルタン」と「トンネル・オブ・ラブ」を繰り返し聴くようになったか。

 どうして、83年の『Alchemy Live in London』のビデオを買って繰り返し見るようになったのか。

 覚えていない。

 ただ、繰り返し繰り返し拝聴した結果、ライブビデオにノイズが入って状態が悪くなってしまった事実がここにある。


 僕のMDには、アルケミィライブの「悲しきサルタン」と「トンネル・オブ・ラブ」が入っている。ライブの方が、マーク・ノップラーのギターをたくさん聴けて堪能できるからだ。


 フィンガー・ピッキング。

 彼がかもし出す音には、好き嫌いがあると思う。

 以前、ギターの早弾きが好きな友人に聴かせたところ、

 「俺が好きなのは、こういうのじゃない」

とはっきり言っていた。

 だけど、僕は、大好きだ。


 マーク・ノップラーは、ギタリストによくありがちな「自分ばっかり弾いてますよ!」みたいなギターアクションがほとんどない。

 コードを押さえる手元もほとんど見ずに、「誰が弾いてるんだか?」みたいなすっとぼけた顔で、とんでもないプレイをしている。

 僕は、それが大好きだ。


 本当は、映像で観たいところだけど、車内でも十分満足できる。

 高い波も、茶色の枯れ草も、灰色の空も、時折射す太陽の光も、みんなこの曲を祝福している。

 そんな錯覚を覚えながら、

 マーク・ノップラーの音色に全身を委ねる。



 そういえば、腹が減ってきた。



♪Dire Straits「Sultans of Swing」

https://www.youtube.com/watch?v=8Pa9x9fZBtY


現在地:新潟県柏崎市宮川 走行中

https://www.google.co.jp/maps/place/%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%A0%E3%82%AC%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%B3%E6%9F%8F%E5%B4%8E%E5%BA%97%26%E3%83%A9%E3%82%B0%E3%83%8A%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%96%E3%82%A4%E3%83%B3/@37.4593516,138.6091165,16z/data=!4m12!1m6!3m5!1s0x5ff455952acb5e19:0x4dee5e10a9c5f70e!2z5paw5L-d6a6u6a2a5bqX!8m2!3d37.5481628!4d138.6964642!3m4!1s0x5ff453fb197725a3:0xbbbc224e4f70f05!8m2!3d37.4609843!4d138.6114228?hl=ja

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