vol.06~「こっちをお向きよソフィア」(1983) 山下久美子~
ガードレールを隔ててすぐ海、の道から、昔ながらの漁村道になる。
良寛ゆかりの地であるこの街は、高いところから見下ろすと、冬景色が絵になるような街だ。
立ち並んだ家々の瓦を背景に、容赦なく降る雪が特に絵になるはずだ。
住民は外に出ることなく、固く玄関の戸を閉じ、風雪に耐えて過ごしている。そんなイメージの写真や映像を何回か見たことがある。
果たして、それが、ここの住民の本意なのかどうかわからないけど、新潟を知らない人にとっては、印象的な絵であることは間違いない。
ちなみに、余談であるが、かつてジェロが歌ってヒットした演歌「海雪」の舞台になった街が此処、出雲崎町である。
僕の車は、そんなイメージとは関係なく、ひとっこ一人歩いていない漁村の道を疾走している。
速い曲になった。
少なくとも、当時は速く感じた。
「良寛さん、ごめんなさい。この街の雰囲気にはまったく不釣合いな曲で」
なんて謝ることもなくリピート再生させてもらう。
新宿歌舞伎町に、ディスコのテナントがたくさん入っているビルがあった。
田舎の高校の同級生たちと一度行ったことがあった。新潟県人会ディスコ大会だ。
料金を払うと、そのお店のロゴが入ったキーホルダーをもらった。
真夏だったせいもあり、朝まで過ごす覚悟ができてる若者がフロアにあふれていた。
そのお店が洗練されていたのがどうか知らないけど、そのお店のDJは、当時の洋楽ディスコサウンドをこれでもかと言わんばかりにかけて僕らを踊らせた。
僕は、カラフルな色のお酒を水のように飲むとき以外は、フロアに汗を飛び散らせて踊った。
あまりにも流暢過ぎるしゃべりでDJは曲のサビを歌い、誰だか知らないお客の誕生日を祝い、僕らは無意味な歓声を上げて応える。
プリンスの曲が終わったあと、突如、この曲だった。
「今夜の最後の曲になりました。」
DJのお告げをかき消す怒涛の歓声。
前奏が全て。
県人会のメンバー、全員フロアに集結。
この店に入って最初の曲以来の再会。
この短い曲に、体内に残っていた残りの汗を全部放出させる。
ディスコで「こっちをお向きよソフィア」。
これが最初で最後。
それ以来、どんなに大音量で車内で流そうとも、この曲ばかりは、このディスコ以上の感動を味わえていない。
♪山下久美子「こっちをお向きよソフィア」。
https://www.youtube.com/watch?v=EBhXmpZTSfM
現在地:新潟県三島郡出雲崎町鳴滝町 走行中
https://www.google.co.jp/maps/place/%E6%96%B0%E4%BF%9D%E9%AE%AE%E9%AD%9A%E5%BA%97/@37.5460322,138.6874155,16z/data=!4m5!3m4!1s0x5ff455952acb5e19:0x4dee5e10a9c5f70e!8m2!3d37.5481628!4d138.6964642?hl=ja
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