vol.02~「ワン・ツー・スリー」(1963)園マリ・中尾ミエ・伊東ゆかり~
丘陵を越える峠の入り口で追いついてしまった軽トラックに僕はやっぱりいらついていた。
最初は「ウイークデーの休日」を理由に我慢ができたのだけれども、峠の頂上からの下りも40kmで走られると、さすがに、大音量の音楽もかすむぐらいにいらついた。
だいたい、「安全速度遵守=安全運転」なんて3万台に1台ぐらいだ。
ウインカーを出さないで急停車。そして、自転車のおばさんと談笑。
信号のない交差点で一時不停止。
黄色信号でフルアクセル、後ろに居た僕は赤信号。
追い越し禁止道路で100台後ろにいても40kmぴったし。
遅い車ほど、法もマナーもなっちゃいない。
僕の前を走っている軽トラも、間違いなくその類の車だ。
きっと、バックミラーなんて、年に2回、見るか見ないかだろう。
僕の後ろは100台ないけど、通勤を急ぐ7台がムカデのように連なっていた。
立て続けに吸った2本目の煙草をもみ消そうとしたら、ようやく左折してくれた。
気がついたら、丘陵を越え、真っ白な田んぼのど真ん中の道路を走っていた。
海に出るまであとおよそ20km。
このまま、ただ白いだけの退屈な冬の農道をパンチの効いた曲をバックに走る。
1960年代初めの「スパーク三人娘」をリアルタイムで僕は知らない。
しかも、中尾ミエは昔から大嫌いだった。
バラエティのゲストや司会など、露出度が多かった彼女を見ると、偏見たっぷりの昔の場末のキャバレーの歌い手のように思えたからだ。
伊東ゆかりは、子ども心ながら、どうにも胸の薄さが気になった。
園まりは、普通の顔も笑っていて気に入らなかった。
しかし、どうだ。この歌は。
リアルタイムで見たかった。聞きたかった。
なんだかんだ言って、中尾ミエはうまい。うますぎる。
昔、信濃川に掛かる万代橋を通るたびに偏見に満ちた目で見た川沿いにあるドーム型のキャバレーの大規模店を思い出す。
ホーンセッションを引き連れて、ノースリーブのワンピースを着て、こんなグルーブを出していたのなら、これは、とんでもないことだ。
僕は、やっぱり、何度もリピート再生して楽しんだ。
どこを、どう走ったのか思い出せないくらいに楽しんだ。
軽トラのことを悪く言えないくらいに楽しんだ。
♪スパーク三人娘(中尾ミエ 伊東ゆかり 園まり)「ワン・ツー・スリー」
https://www.youtube.com/watch?v=JYQ1JTFISN4
現在地:新潟県加茂市後須田付近 走行中
https://www.google.co.jp/maps/place/%E3%80%92959-1303+%E6%96%B0%E6%BD%9F%E7%9C%8C%E5%8A%A0%E8%8C%82%E5%B8%82%E5%BE%8C%E9%A0%88%E7%94%B0/@37.7031887,138.993071,13.75z/data=!4m5!3m4!1s0x5ff4e0b20a64249b:0x7934405e749b066b!8m2!3d37.6938045!4d139.0205939?hl=ja
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