第14話 タイヘーの現在××
俺は魔族大隊長を名乗るモンスターを殴り倒して憤慨する。
「こいつ偉そうにふんぞり返ってといて、カスみたいな攻撃しかよこさねえ……このカスが! ペッ!」
「あんたは
「暇ー……」
「ふぁ~あ、タイヘー私眠くなってきちゃいました」
BBとセシルがあくびする。
「ああん? 俺は保育園の保母さんじゃねーんだぞ。おんぶするか?」
「ううん、いいです」
「なんで、遠慮するの? しかもちょっと嫌そうに……」
傷つく。
俺たちは魔王城の奥深くまで侵入していた。
「あたしらは魔王退治にあの街まで来たんじゃないんだけど……」
「知らねえよ、ついてきたのはお前たちだろ?」
「アリシア、我慢して。これも研究の一環……」
「はいはい、BBの仰せのままに」
「しっかし、どうしてこうも弱い敵ばっかりなんだろうな」
「いや、あんたが強すぎるだけだから……」
アリシアのやつがジト目でこちらを見てくる。
「てか、ここらの敵のレベルは?」
「70そこそこ」
「そいつらがかすり傷も負わせられないとか、あんたのレベルどうなってんの?」
「知らねえよ……」
それは俺も疑問だ。
たった三ヶ月前まで50レベルのモンスターにも
それがいつの間にか70レベルのモンスターですら俺に1ダメージも与えられない。
「あんたがあたしよりモンスターを倒し……いや狩ってたのはたしかだけど、あたしのレベルはいま58。どの段階であんたがあたしを追い越したのか……皆目見当もつかないわ?」
それが一番の疑問だった。
モンスターを倒してレベルアップするのはわかる。
だがレベルアップには普通どこかで歯止めがかかる。
つまり一般的なRPGだと1れべるから2レベルになるときの経験値よりも、99レベルから100レベルになるときの必要経験値量のほうが多いわけだ。
この世界でもその法則は適用されるなら、レベルは自然とパーティ内で近づくはずだ。どうやっても追い越すことはない。
「BB、あんたの見解は?」
「んー?」
BBは少し悩んだあと、ぽつりぽつりと漏らした。
「一応国家機密として話す。他に漏らしたら燃やす」
「燃やせるものなら燃やしてくれ」
「ファイヤーボルト!」
躊躇なくやったなこいつ。
BBの小さな手のひらから放たれた炎の
「タイヘーは燃やせないから、機密漏洩しない。証明終了」
なにその逆転の発想。
「タイヘーにはわたしが予想するかぎり三つの特殊スキルがある」
「え、そんなにも……?」
俺は思わず聞き返した。
三つも?
それは少し予想外だった。
(俺は三つも……たとえばインディアンポーカーみたいな能力を持っていたのか?)
そんな自覚はなかったが。
そこからBBの考察が語られた。
「ひとつ。タイヘーが自分自身で見つけた
「BBさんの国ってすごいんですね、タイヘー」
「国家機密だから知られたら、燃やす」
「ぴぎゃっ!?」
「じゃあ自慢げに話すな!」
「ちっ……」
なんなんだよ、その舌打ちは。
「ふたつ目。これは憶測でしかないんだけど、タイヘーのその特殊な体質……」
「俺の?」
「回復魔法を受けることで何倍、何千倍もの快楽を得るその神経系……」
「あれ、特殊スキルだったのかよ!?」
どうでもよすぎるスキルでびっくりする。
正直いらない。
「――いや、いる。絶対いる。この世界で俺が生きるために絶対いる」
「名付けて
「勝手に名付けるな」
「ピッタリじゃない……ヒールジャンキー」
「あだ名にするな、妖怪ツインテール!」
「そして最後……三つ目」
「ろくな能力じゃなさそうだな……」
俺はもう諦めていた。まあまともな能力じゃないことは確実だろう。
「ニューディール……」
「は? なんだって?」
「巻きなおし……?」
セシルがつぶやく。
「
「り、りんか……なんだって?」
「…………」
ローブを目深にかぶりなおすBB。
(恥ずかしいなら、そんな名前付けんな……)
俺は心の中でつっこんだ。
「で、それはどういう能力なんだ?」
「生き返ればレベルがあがる……」
「…………」
いや、ちょっと待ってくれ。
「い、意味がわからん……」
「だから、生き返った時点でレベルが1以上自動的に上がる」
「……タイヘー、どういう意味ですか?」
「それ、本当だとしたら……
「待て……はは、待て」
なにを。言ってるんだ、このケモミミロリは。
「お、俺何回死んだ? セシル?」
「えっとまず馬車に轢かれて……それからビッグラビットに……」
セシルが指折り数え始める。
「えとえと……あのタイヘー、私の指全部使っちゃいました。指貸してください?」
「…………」
「ちなみにわたしの概算ではタイヘーのレベルは……」
「待て、それ以上言うな!」
俺は恐ろしくなってBBの口をふさごうとする。
しかしそれより彼女は言う。
「――――」
BBの計算では俺の現在のレベルは――1××らしい。
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