第13話 ××の憂鬱

『緊急連絡、緊急連絡! 至急増援求む! こちら……ぎゃあああっ』

『おるぁあああ……高レベルのやつはどこだ……魔物隊長くらいるんだろ……!』


――どか、バキ、ベコ……バコーン☆


『グエエエッ!?』

『び、B-2通路制圧されました!』

「なんだと? どうなってる、敵は……敵はいったいどれだけの人数を揃えてきた!」

『敵っ? 敵は四人パーティです……』

「はああ!? なんだって!」


魔王城の魔算室にて魔族大隊長が叫ぶ。

寝起きを叩き起こされたと思ったら部下の意味不明な報告ばかり入ってくる。

そもそもこの魔王城に敵の侵入者を許したのは三年ほど前に一度だけ。


「あのときも、まあ酷かったが……」


いやあれは思い出したくない記憶だ。大隊長は忌まわしい記憶を封印するように唸った。


『四人です、人間……? が、たぶん四人です』

「また人間か……」


あの種族はどうなってるんだ。

強い個体と弱い個体の差が激しすぎる。


(以前のやつは異界天昇がどうとか言っていたが……)


なにが、いったいなにがどうなっているんだ。


『というかひとり無茶苦茶なやつが……あっ』

『俺を攻撃しろ……』

『は?』


――は?

大隊長は我が耳を疑った。


『俺を、攻撃、しろ?』


通信機の向こうで誰か知らない――たぶん敵だろう――が、意味不明なことを言っている。


『お前はいったい……な、なにを……』

『いいから攻撃してみろ、お前の最大最強最高威力の攻撃スキル……あるんだろう、なあ? それで俺を攻撃してみろ!』

『……お前は頭がおかしいのか?』

『うるせえ、さっさと攻撃しやがれ! こっちは気が立ってんだ……攻撃しねえと殺す。俺にダメージを与えられなかったら殺す。ダメージが俺の自然回復速度を追い越さなくても殺す! あと念のため、もし俺を殺してしまった場合。そのときは次、ちょっとだけ手加減してくれ。いいな……早くしろ、殺すぞ?』

『ひっ!』


目茶苦茶だ。


『くっ、こうなりゃ自棄だ! 食らえ俺の最大最強の必殺技――マゾクスラーシュ!!!』


――ザシュッ!


『…………』

『…………』


しばしの沈黙。そして。


『あ、あの……判定は?』

『ブブーッ、不・正・解ッ!』


――バキッ! ガガ、ガーッ!


その後部下からの通信は途絶した。

大隊長は頭を抱えた。


「なにが、いったいなにがどうなっているんだ……?」

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