第繧ソ話 樞包シ搾シ�ソ

「ん……」


どこだ、ここは?

俺は空白の空間で目覚めた。

そこは庭園のようでいて、空中回廊のようでいて、空に満たしたプールのようで、青と白が反転した空のようでいて、光に焼かれた白銀の鳥そのものだった。


(は? 俺はなにを言ってるんだダダdrdrdr?)


駄目だ、バグってる。


「よう、また死んだのか?」

「あん?」


そこには光をまとった、少年のような成人男性のような学生のような初老の女性が座りながら立っていた。


(ああ? 駄目だ。なんだ……情報量が多すぎるのか?)


目が飛び込んでくるものが重なりつつ、複合的に脳の中で多重に再生してもはや逆に構築でなにもわからない。


「アハハ、なに考えてるのさ? 無駄なんだよ、人間のお前には理解できるわけないっすよ」


俺は考えるのをやめた。


「ここはどこだ?」

「そんなことはどうでもいいのでは? どうせ、生き返らば忘れるんじゃから。オタク、ボクのこと覚えてますか?」

「……? またとか、死んだとか、生き返ればとか。どういう意味だ?」

「さあ?」


むかつくな。


「いいじゃん、いいじゃん。ゆっくりして行けや。どうせすぐ生き返るくせに」

「俺は死んだのか?」

「生き返るぜ」

「……お前は誰だ?」

「いいぜ。お前は?」

「俺は……傾山泰平だ」

「本当にー?」

「…………」


頭が痛くなってくる。


「本当にオタク、カタムキタイチ?」

「カタヤマタイヘーだ」

「ククク、カカカ、アハアハアハ……オマエは本当に自分が誰かわかっている?」

「どういう意味だ……」


そんなの――当たり前だ。俺は傾山泰平。

それで、俺は――。俺は――。俺は――。


「俺は――誰だ?」


わからない。なんだこれなんだこれなんだこれだんだこれなんだこれなんだこれなんだこれなんだこれだんだこれなんだこれなんだこれなんだこれなんだこれだんだこれなんだこれなんだこれなんだこれなんだこれだんだこれなんだこれなんだこれなんだこれなんだこれだんだこれなんだこれなんだこれなんだこれなんだこれだんだこれなんだこれなんだこれなんだこれなんだこれだんだこれなんだこれ。


「もしかして自分の前世は地球にある日本っていう島国で生まれ育ったごく普通の一般人だと思っているじゃん?」

「……? 違うのか?」

「じゃあ――その記憶はどこにあるんだよ?」

「…………」

「てめぇは死んだとき何歳でした?」

「……わからない」

「学校は? なに小学校を卒業? 中学校は、高校は卒業したのか? ぶっ壊した? 建築した?」

「……ワカラナイ」

「死因はなんだ? トラック? 電車? 投身自殺? 感電死? 無理心中?」

「なんで、死んだんだ俺?」

「ほらお前には、名前以外なにもないじゃないか」


なにもない。


「なにも思い出せないじゃないか。その日本でどうやって暮らしていたんだ? どうだ、なにも答えられないじゃないか!」


わからない、わからない、わからない。


「オマエの記憶は召喚ソウチの上で気がツイタ、ソこから先しかないじゃなイか。それってささ、ツまリ――お前のジンセイは召喚装置の上で作られたってことだよなあ???」


ジンセイ、は作られた。


「なあ、こうは考えられないか? 誰かが植え付けたんだ、改ざんされたんだよ、記憶をなあ? ウソ。違う、ソウジャナイ。くく、お前は自分のことをごく普通の日本人だと思っている精神異常者、もしくは自分のことを成人だと思っているゼロ歳児なのさ!」


傾山泰平、ゼロ歳です。


「や……やめろおおおおおおおおお汚おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお……!」

「ヤめる」


光の陰はやめてくれた。

助かった。助かった。


「一度目はスキルランクB、水準可視化」

「……?」

「これは駄目だった。有効に機能しなかった」

「なにがだ?」

「二度目はスキルランクE……最低レアリティ。快癒……モチベーションアップには役立った。だが有効に機能しなかった」


やっと言葉が通じたと思ったら、今度は意味がわからないことを言い出した。


「そして三度目のスキルレアリティSS……転――」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る