抵抗


 

 空気がピリピリと張り詰めている。エルフ達が広場の一角に集められて、1時間ほどが経っている。集団の中心の方は熱気がこもり、村人達は汗臭さと暑さに耐えている。

 その中を男達の視線が鋭く駆け巡る。

 敵は4人。そのうち3人が壁に追いやった村人達を囲むようにして、それぞれ等間隔に間を空けて立っている。正面が猿男だ。残りの一人は少し離れたところから、こちらを見ていた。

 ジリ、ジリと、緊張がピークに達する。その瞬間先頭のエルフの男が、声を上げて猿男に殴りかかった。猿男、倒れる。反抗が開始された。すぐさま他の二人も殴り倒される。敵を殴った3人のエルフの男がそれぞれ剣を奪い、その近くの者が倒した敵を取り押さえる。老人、女達は子どもを連れて壁際に固まる。エルフの活発な男達約70人のうち半分がそれを守るためにぐるりと周りを囲み壁をつくり。残り半分の集団は少し離れたところいる変な雰囲気のフード男へ向かって走った。

 よし。いいぞ。興奮する男達は皆そう思う。武器も奪った。フード男の武器も奪えばこちらの武器は4、残りの四人が帰ってきても互角以上に戦える。人数のアドバンテージもある。一人の犠牲者も出さず済むかもしれない。そんな希望が芽生える。

 ああ、しかしなぜだ?取り押さえられていた猿男の口元が歪む。


「なあ、俺達はそんなにマヌケな集団に見えるか?」


 その一言で。安堵さえ生まれつつあった老人や女達の心には天敵睨まれた弱者エサの気持ちが沸き起こった。そして、それが引き金になったように前線の男たちに異変が起こる。

 殺気に満ちた群衆が目の前に迫っても、フード男は微動だにしない。己の剣に触れようとさえしない。哀れなエルフの男達は、彼が自分たちの覇気に怖気付いたのだと確信する。あと一歩。そこまで迫る。

 その一瞬だった。黒いフードの中、男の目が紅くギラつき光を帯びる。その紅い眼に睨まれたエルフの男達は突然脱力し、先頭の男は振り上げた剣をガシャリと落とす。それを合図に全員がその場にへなへなと崩れ落ちた。

 静寂が訪れる。

 それを見た猿男が高らかにキーキー笑う。おかしくてしょうがない。渾身の嘲笑が込められた笑い声が広場に響いた。

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