少女の夏

 ロミイがまたいつもの遠い目になった。

 私を追いかけて、追いつけず疲れて、倒れ込む。私が彼のそばにしゃがみ、ちょっと触る。するといつもこの目になる。

 どこ見てるの?って聞くと、べつに……と答える……そこは、実は君を……って……もう、ばか。

 ロミイの視線の先、空を見る。雲が流れていく。ふと、彼が大の字に寝ているのを真似してみようと思う。そしたらロミイの気持ちがわかるような気がして。彼と顔を逆さに並べて私も寝転び、大の字に手を広げる。

 ぼーっと空を眺める。目の力を抜いて、出来るだけぼーっとしようと努める。でも、どんなに真似しようと思っても、ロミイの目は真似できない。それがおかしくって、吹き出した。ロミイがびっくりした顔で私を見る。それがまたおかしくって、もう一度吹き出す。なんだかよくわからないという顔をしていたロミイもそんな私を見て笑った。

 今見ている空は、ロミイのみてる空の逆さだな。

 隣に行けば、同じ空を見れば、ロミイの気持ちがわかるだろうか?根拠はないが、そんな気がした。


 ゴロゴロ〜っと転がって隣に移動しようとするが、ひまわりに邪魔される。仕方なく立ち上がって、ロミイの隣に座ったら、彼も体を起こして座ってしまう。そして私に向き合った。

 少し真面目な顔。なにか言うのだろうか?

 あのさ、と彼が話し始めようとしたとき、村から悲鳴が聞こえた。

 私とロミイの秘密の空間は外からの衝撃であっけなく終わる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る