その41 赤い雨が降るピクニック
「いやーまじ今日いい天気だな」
「そうですね。とても気持ち良いです」
空を見上げるとほどよい温度の光が顔へと当たる。
どんな温度かっていうと日向ぼっこには最適みたいな感じだ。
俺達が今いる場所は木が開けており、10cmくらいの草が生えている草原の上から結構大きめの麻布をレジャーシート代わりに敷いて使っている。
そして俺が向いている方向には花畑があった。
話で聞いていた以上に綺麗なところだ。
「サハタダとレフランみてー!」
「みてー!」
「ん、どうした?」
スワニとシロナが両手で何かを包みこんでこちらに走ってくる。
そして俺とレフランの前で止まると、両手を差し出してゆっくりと手を開いた。
「これおかあさんをなおしてくれたおかえし!」
「おいしいきのみ!」
こ、これは……何の変哲もないただの木の実みたいだが……駄目だ、めっちゃ嬉しい……。
「わざわざ拾ってきてくれたのか……わかった。ありがたく頂くよ」
「二人ともありがとうございます。私……とっても嬉しいです!」
レフランは受け取ったドングリみたいなやつをじーっと見つめては嬉しそうに笑った。
なんつーか最初の頃に比べたらとても可愛いというか……元気になってきたな。
やっぱり人は人とできるだけ多く関わり合うべきだ、うん!
……異世界行く前の俺に刺さりまくってんじゃん。
「じゃあおれとシロナあっちいく!」
「もっともっとプレゼントする!」
「おう、あんま遠くにいくなよ」
「「だいじょうぶー!!」」
あの双子めっちゃ足早いな。
さすが獣人というべきか。
「……そういえばまだバスケットの中見てないよな。もう見てもいいんじゃねえか?」
「そうですね。一体何が入ってるんでしょう」
レフランはそう言いながらバスケットの中を漁る。
すると驚いた様子で何かを俺に向けて差し出した。
「見てください……これ干し肉です」
「えっ、あの村で貴重な肉入れてくれてんの!?」
まじかよわざわざこんなものまで用意してくれて皆で食べてとかどんだけ良い人なんだよ。
……だがまぁ、入れてくれて悪いが俺はこれを食うことはできないな。
レフランとスワニとシロナに三等分して分けて――
「あぁ? なんでこんな所に人間がいんだぁ?」
……ん? 今の声って後ろからか?
聞き覚えのない声だが――
「こっちの方向で会ってんだよなぁ? ほんとか~?」
「いいから行けっス。さっさと行かないと凍らして海に沈めるっスよ」
「……」
一人は人間サイズの鈴虫っぽいやつで、一人はマフラー首に巻いたぺンギン、そんで一人は人っぽい形はしてるけどガタイがヤバイ岩の塊……なにこれぇ?
渋谷の仮装パーティーか何か?
「いやだってよぉーそこに人間いるんだぜぇ~これはおかしいんじゃね~の? 人間と獣人っつーのはめーっちゃ中悪いんじゃね~の?」
「たまたまいるだけじゃないっスかね。ま、それに合ってようが間違いだろうが私達を見た人間は殺せって言ってたんで、ちゃっちゃ終わらすっス~」
「ま~そうだけどよぉ~」
「……」
おいおいおいなんか物騒な単語出てんだけど。
ちょ……これまた面倒くさい奴らじゃ——
リンリンリンリンリーンリーン
「
やっぱりそうじゃねぇかぁぁあ!!
ちょ、おま何その半透明のキャノン砲みたいな――
ドゴォォォォンッ!!
「……雑ッスねえ」
「な~に言ってんだ!? こうやってよぉ~一気に吹き飛ばすのが気持ちいいんだろうがぁ!」
「……」
シュゥゥゥ
ペンギンはため息を一つつくと、方向を変えて歩き出した。
「雑魚を片付けたらさっさと行くっスよ。また蝿野郎に文句言われるッスからね」
「へいへ~い、わかってるぜぇ。けどよぉ、やっぱりなんであんなとこに人間がいたのかが気になるわぁ」
「……」
「そんなことより考えるよりももっと大切なことあるッス。先に調子乗って先に行ったナンバー10のことも探さないといけない――」
「おいまてや」
「「……えっ?」」
「……へっ、あれ!? ご、ご主人様!?」
あっぶねー地面吹き飛ばすぐらいの威力とか聞いてねーよ。
まあレフランとかバスケットとかを掴んで避けれたからよかったけど……ていうかいやまじもう俺巻き込むなやぁ!
さっきの話聞いてたらさ、ちゃんと聞かないといけなくなるじゃん!
「レフラン、お前はスワニとシロナを見つけてこっから離れてろ。俺も後を追う」
「で、でもご主人様――」
ガシッ
「俺を信じろ」
「……はっはいわかりました!」
この状況を全く理解できていない様子で慌てているが、とりあえずは俺の言う通りスワニとシロナが向かった方へとレフランも進んでいく。
あとでちゃんと説明してやらんとな……まあそれよりもこいつらに吐かせるのが先だ。
~ペンギン視点~
あ~もう面倒くさいッスねぇ。
なんでよりによってこんな時に外してるんッスか……。
「オマエ達何で生きてるんッスか? もーちゃんと当てろッス、外してんじゃないッスか」
「えぇ~!? 俺ド真ん中に打ち込んだんだけどよぉ~……」
「……」
「いやそんなこといいからさ、お前ら今さっき何話してたか教えてくれよ」
「あぁ? ちょっと何偉そうにしてるッスか? 偶然生き残ってるだけなのによくそんな余裕あるッスね」
「……い、いやー実はですね。俺近くの獣人の村に居候させてもらってて……そんな中その会話が聞こえてきたんで気になったんですよねぇ。いやーなので詳しく教えてくれたら――」
「オマエには関係ないことッス! あーもう一々面倒くさい雑魚ッスね!」
ドポン
……さてと、どうするッスかね。
面倒くさいし窒息死させて……いや。
ズボオッ!!
「おっおおっ」
……よし、コイツの手と足に土を巻き付けてやったッス。
「わーざわざ深いところにあった硬い地層の土を取ってきたッスよ。これでコイツはまーったく手足を動かせねぇッス」
俺っちの能力は「潜地」。
無機物の中を液体みたいに泳げる技ッス!
これを使えば楽に移動できるし、こうやって拘束することもできるしで便利なんッスよね~。
「んだぁ? 大切なことがあるるんじゃなかったっけかぁ?」
「考えが変わったッス。窒息死させてもよかったッスけど折角久しぶりに人間に会ったんッス、ここで肩慣らしは必用ッスよ」
「……」
「おおっ、オマエがやるッスか……!? なら一発一発じわじわと嬲って――」
「いや、俺がやるぜぇ」
「いやオマエさっき一発撃ったからもう十分ッスよね」
「だからこそってヤツだぜぇ~」
鈴男の癖に図々しいッスね……まあいいッス。
コイツの技はゴミを処理するのには持って来いの範囲攻撃ッスからね。
「……お前、怯えてんだろ」
「いや全然」
「い~や俺にはマスク越しでもわかるぜぇ! その目は目の前にいる強大な化け物の力を見ておびえている目だ」
「いやまず目ないんだけど」
「まぁわからなくもねえぜ……マグレで避けたっつってもあの威力を見てただろうからなぁ」
「ごめんあんま見てなかったわ」
「死ぬ前に一つ教えてやるよ。あの技は
「お、おう」
……何やってんッスかあいつ。
「俺は鈴虫だからよぉ、背中から音を出すことができるんだぜ。ちなみにドからレぜ~んぶの音を鳴らせる! つまりピアノ顔負けってこった! そんで、その出した音を俺の体の中で反響させる。俺の内側は内臓はちょ~っくら改造しててよぉ~その中を隅々ま~で巡らせることができるんだぜぇ。その巡らせた音はいわゆるナイフとなっていく。まぁ鉄を削るみてぇ~なイメ~ジっつ~やつだな。そ~んでそっからさらにほっそ~い槍みて~になっていく、そうなりゃあもう最強よ、なんつったって1mの厚さの鉄板を打ち抜けるんだからよぉ! これを上手く使えば鉄を切ったり蝿を殺したりでめ~っちゃ便利だぜぇ! そんでまぁそれを口元に持ってきて吐き――」
「話長ぇぇぇえッ!!」
バゴォォォォオオンッ!!
「えっぇぇぇえええ!?」
「……」
鈴男が……空中に飛んで行った!?
「な、何が起こったんッスか……もしかして間違えて地面に撃ったんッスかアイツ!?」
もしそうだとしたら面倒なことしてくれましたねアイツ……せーっかく盛って作った拘束も壊れたし……なーにやってるんッスか。
「……」
「おっ、オマエやる気っすね! いいっす、ボコボコに殴っちゃってくださいッス!」
コイツなら大丈夫ッスね。
なんてったって【新人類の家】の強さランキング4位の強さッスし、この世界で最も強度がある岩で作られた体のおかげで物理攻撃はぜーんぶ効かないッス。
それに両腕から繰り出される攻撃は超正確で超早いッスし、避けることはできないッス!
さすがにアイツの運もここで尽きたッスね~。
「……!」
ヒュンッ
ドガァァァッ!!
「おおっ!」
さっすがの突きッス! 一瞬すぎて攻撃が見えなかったッス!
ふっふっふ、これであの変な鳥野郎も消し飛んで――って。
なんでアイツ何もないところで殴り続けてるんッスか?
ヒュン
バキイッ!!
シュッシュッツ
ゴッ!! ガッ!!
バゴォォォン!!
「岩男、終わったならさっさとさっき逃げた奴を殺しに――」
「やっべ靴紐解けた」
ゴッ
メキッメキメキメキッ!!
バッゴォォォォン!!
「……えっ」
「あー……避けるの忘れてた」
岩男が……砕けた……?
……いや、っていうかなんであいつ生きてるんッスか?
なんで平然と靴紐結んでるんッスか?
なんで普通に立ってるんッスか?
なんで何事もなかったかのようにバスケット持ってるんッスか?
……も、もしかしてコイツ……め、めっちゃ強かったりとか――
「さーてと、これで残り一人になったよなぁ……」
やばい。
死ぬ。
ドポンッ!!
ズォォォォ!!
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!
なんなんッスかアイツ! あんなのがいるって聞いてないッスよ!!
で、でも地面から100m潜ったここにいれば俺っちを見つけるのは困難ッス!
このまま急いでダンジョンまで行かないと――
――リンリンリンリンリーンリーン
……あれ? この音って鈴男の――
ブゥゥオォォォンッ!!
ドゴォォォォンッ!!
……あれぇ。
俺っちなんで空中にいるのぉ?
ドサッ!!
「おいおい逃げんじゃねーよ」
「逃げんじゃねーよって……いや、それよりもどうやって鈴男の技を使ったんッスか!? あれはアイツにしか使えない技のハズ――」
「スタンドmod使った」
「……は?」
「いやスタンドmodだって。ほら」
メギャン
えっ……なんで後ろに虹色の鈴男が浮いてるんッスか。
「アイツに触れた時にデータをコピーして作り出したんだ。つまりこれはアイツではない……『幽波紋』つまりはスタンド『ベル・クリケット・マン』だっ!!」
……何なんッスコイツ。
なっ……何なんッスかこいつ!!
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