その34 「おいしゃさん」の実力

△system

 白色の丸薬 ×1 を取得しました



 適当にとっちゃったけどさ……これさっきのアイテムと違うくない?

 いやまあ丸薬って書いてあるから体には悪くないでしょう、多分!

 これを口の中に入れて。



△system

 綺麗な水が入った木製のコップ ×1 を取得しました



 これでよし。

 ……で、これ薬ってどうやって飲ませればいいんだ?

 と、とりあえずまず顎を上にあげて気道を確保して、それから口に丸薬入れて徐々に水を流し込む感じで……ってえ?


「おかあさん!?」

「おかあさんのからだがひかってる!」

「えぇ……」


 えっちょおまなんで光ってんの!?

 それに体のニキビみたいなのがどんどん縮んで姿が完全に元に戻ったかのように見えるが……いや、それどころかしわというかたるんだ肌が戻っていってるのか!?

 もっと言えば体そのものの時間が巻き戻っているような……えっこれ大丈夫!? 確認とかしてないんだけど!?


「……ウッ! グエッゲエッ!」

「おかあさん!」


 獣人はいきなり上半身を起き上がらせると、下を向いて苦しそうにしたのちに口から何か小さい糸のようなものをせき込みながら吐き出そうとした。

 ちょっとまて、口の奥に何かがチラチラ見えるな。

 ……これ取っといた方がいいのか?

 まあ一応取っといて何かあったら戻しとくか。


「す、すみませーん。お口ズボズボしますねー」


 ズボッ


「……なにこれ?」


 何か小さめなものを掴んだような感触……これうわっキッモッ!!

 なんか白い長細くクネクネしているあたり、どうやら寄生生物みたいなもんか!?

 潰してどっかそのへんに捨て……いや、けど何かの役に立つかもしれないししょうがなく瓶の中にでも入れとくか。

 そういやいつのまにかあの変な臭いも消えてない?



△system

 空の丸いガラス瓶 ×1 を取得しました



「ゲホッ……うぅ……」

「「おかあさん!」」


 頭を上げようとするお母さんに元気よく抱き着く子供たち。

 様子を見る限りどうやら上手くいったみたいだな。

 いやー……マジでなんも起きなくてよかったぁ!


「スワニとシロナ……!? あれ? 体が——」

「おいしゃさんがおかあさんをたすけてくれたんだよ!」

「おいしゃさん……?」


 「おかあさん」と呼ばれている獣人は背景と化していた俺達に気が付き目線が合う。


「もしかして、あなたたちが私の病を……」

「いや、私は何もしていない。全て彼がやてくれたんだ」

「そうです、ご主人様が薬を使って治療したんです」

「おれとシロナのこともたすけてくれた!」


 全部チートのおかげのせいでめっちゃ騙してる感あるぅ!!

 

「見ず知らずの私たちを助けてくだるなんて……ありがとうございます!」

「えっ……あーまあ……うん……」


 ひざまずいてそう叫ぶ母親。

 いやー俺そこまで言われるほどなんもやってないんだよなぁ!!

 ……こういう場合どうすりゃいいんだよ。

 

「あの病は1か月ほど前に患ってしまい、それからというものは体が動かなくなっていきまた。私は独り身なので子供たちだけではどうすることもできず……けど……貴方のおかげで……」

「いやぁそんな——」


 ガサッ


「「―――!」」


 ん? 今の音は雑草が何かに掠れた音か?


「……ってパトリック、なにやってんだ?」


 背負っていた大剣の取っ手を握ってどっかを睨みつけるパトリック。


「何かがいる……」

「いや、まあそりゃそうだけどそんなことする必要ないだろ」


 そこまで構えるほど……あれ? そういや母親は? 

 さっきまでここにいたハズなんだが——


「……」


 いやなんで天井に張り付いてんの!?

 静かにじゃねーよめっちゃツッコミたいよ!


「私が外に出てさっきの音の原因を見てきま——」

「今ドアに近づいちゃ駄——」


バキッ!!


「うおっぉ!? ちょレフラン!!」


 ドアが急に倒れようとして——ってあっぶねぇ!

 俺がレフランの手を引っ張ってなかったら直撃してたぞ……。

 ん? 明るい光と共にゾロゾロと家の中にわんちゃん……もとい獣人が入ってきたのか?

 ……ってなんか物騒じゃね?


「すまないな……ラスマ」


 そう言った獣人の手には一本の鎌が握られていた。

 よくみると入ってきた数十人の獣人全員が武器らしきものを持っている。

 だがしばらくしてから俺達に気が付いたのだろうか、入ってきたときの殺気立った目から大きく変わり驚いた様子で一歩下がった。


「なっ! 君たちは誰だ!?」

「なんだよお前ら! 俺達の集落になんのようだ!?」

「もしかして……こいつらが病をばらまいたんじゃ?」


 まるで化け物を見るかのような目で俺達のことを見つめてくる。

 それになんか悪い方向に行ってるような気が——


「あーもうわけわかめなんだけど。つーか……ラスマ、ラスマさん? 降りてきて話してくれない?」

「ごめんなさい、元に戻ったのはいいのですが……予想以上で」

「なっ……!」

「あ、あんたラスマか!?」


 ストンと音を立てながら目の前に落ちてきたラスマを前に、獣人たちは構えていた武器を下げた。

 

「おいおい冗談だろ……あんなに醜かった体が元に戻っている!」

「それどころか個人的には若返ったような気がします。まあ私の気のせいでしょうけど」

「どうやってあの病を!?」

「いくらお祓いしても治らなかったのに!」


 若返った……?

 いや、言われてみれば確かに若返った……というか、まあ初めて見た時が一番酷かったということもあるが……そういえばラスマに使ったアイテムの説明見たっけ……?



△system

 説明:白色の丸薬


 種蒔きのバルトラが作り出した薬の一つ


 飲み込んだ生物の肉体を10年前に戻し、尚且つ体力と魔力を全回復する


 バルトラは友人との永遠の別れを悲しみ、だからこそ自らの種を薬に混ぜた

 だがそれを知ったタリスは丸薬を全てを秘匿したという

 生物が生に抗うことを、それは裏切りだと考えた

 

 

 え っ ・ ・ ・ な に そ れ は 。

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