その32 ケモノのフレンズ
ジョボボボボ
「……これいいだろう」
「ほ、本当に! 本当に大丈夫なんだろうな!?」
「それは……たっ多分大丈夫だよ」
「あっ! 二人とも、この子たちを見てください!」
そんな声出すほどのことは起きな……ってなにこれ。
傷や血、折れていた骨がまるで動画を逆再生をするかのような……血も傷の中に戻っていくしどんどん形がくっきりしてきたが……あれ? もう完治したのか!?
すげーな地面に全く血がついてないしやぶれてるハズの服も戻ってるしヤバすぎでしょ。
寝転んでる獣人の子供を見る限り片方は髪が短く、もう片方は髪が長くゴムのようなもので束ねてるな。
そして片方はズボン、もう片方はスカートなのを見るあたりそれぞれ男の子と女の子なのだろう。
「す……凄い! ご主人様凄いです! さすがお医者さんです!」
「そう、そうだね! さすがお医者様だね!」
使った本人も驚いてるっていう。
もしかしてこれ二人の前で見せて使うのマズかったんじゃ……いや、こいつら全く詳しくなさそうだから大丈夫だろ。
「……サハタダ、それは毒ではないのか?」
「えぇ……これを何だと思ってたんだ?」
パトリックは先ほどの取り乱していた様子から一転して静かになった。
「君はこの子達を見て……何とも思わないのか?」
何とも思わないか? ってどうやって返事すればいいんだよ。
「いや……まあ痛そうだったなって」
「痛そうって……本当にそれだけなのか!?」
えー……まだ納得してねーのかよ、どうすりゃいいんだ。
いや、でもそうだな……
「……かわいいと思ったよ」
「えっ」
「えってなんだよ……いやホントに。このぴょこぴょこした耳可愛いじゃ……ってレフラン?」
「……あっ、すみませんご主人様。初めて目にする人達でちょっと気になってしまって」
「いやー俺も気持ちがわかるよ。かわいいよね」
「そうですね」
レフランは俺の言葉に反応してコクンと頭を下げた。
それを見たパトリックはまた無言で固まってしまった。
「……ふぁぁ。あれ……あれっ!? おにいちゃん!」
「……ん、あっ! シロナ! シロナ!」
起きた直後に抱き合う二人。
いやーケモノショタとロリが抱き合うっていい絵面だね。
天気が良いこともあって写真におさめたいくらいだ。
「喜んでいる最中悪いんだが、2人とも調子はどうだ?」
「とっととっトリのおばけ!」
「こっちにくるな!」
ぽす
ちょっと聞いただけにもかかわらず、ショタの大声と共に右手の拳が飛んで俺の頬にあたる。
……なんか子供のパンチって癒されるな。
「おまえたちがシロナを……!」
「おにいちゃんにげようよ!」
なーんか勘違いしてんな。
俺を攻撃してきた奴らの仲間だと思ってんのか。
「まーったく……俺が治してやったってのに、酷い仕打ちだぜ」
「えっ!? トリのおばけさんがなおしてくれたの?」
「あいつのなかまじゃないの?」
「あいつが誰かはわからんが……俺は医者だからな。医者は人の怪我を治すのが仕事だ」
医者じゃないけどまーちょっとカッコつけてみよう。
「ありがとうカラスのおばけさん!」
「おばけありがとう!」
うおおうめっちゃ素直じゃねーか。
さすが子供、やっぱピュアピュアなんだろうね。
「礼ならその鎧のお姉さんにもしてくれ。こいつが呼んでくれなかったらお前ら死んでたかもしれないしな」
「ヨロイのおねえさんありがとう!」
「ヨロイありがとう!」
「……ま、まあ……うん」
分かりやすいぐらいに照れてんな。
……さてと、ここで何があったのか聞いてみるか。
集落のおっさんが言ってたこととそれが関係あるのかはわからないが、聞くだけ損はないだろう。
「少し聞きたいことがあるんだが……えーっと、名前を教えてくれないか?」
それに反応した獣人の子供達は、こちらを向いて耳をぴょこぴょこ動かしながら元気よく右手を高く上げた。
「はい! おれがスワニ!」
「わたしがシロナ!」
もし俺の世界とこっちの世界の犬の特徴が同じだとしたら、この二人は何が楽しくて尻尾を振っているんだろうか。
「スワニとシロナ、一体ここで何があったんだ?」
「あのねあのね、おそわれたの!」
「襲われた? 誰に?」
「おおきいニンゲン! とってもつよくてカラダになにかラクガキあった!」
「そうか……わかった、ありがとう」
ラクガキがある大きい人間……何故この子達を襲ったのかはわからないが、それが集落に入ってくるなっていうほどの理由だとは思えないな。
ていうかまだそこらへんにいるんじゃね?
子供達を攻撃してからそんなに時間もたってねえし……不意打ちに対処できるように心がけとくか。
「あの……すみません、少しいいですか? おてての……そのぷにぷにしてそうなのを……」
「うわあ! ニンゲンがいる!」
「たべないで!」
「たっ、食べないですよ!」
えっなにこの状況。
レフランを見たとたんに身構えているのか?
「安心してくれ、こいつは悪い人間じゃない。俺の弟子なんだ」
「だけどだけどおかあさんがニンゲンはわるいいきものだっていってた!」
「ニンゲンはみんなのかわをはいでたべちゃうっていってた!」
「えっなにそのモンスター」
つーか何黙り込んでるんだパトリックの野郎。
しかしどうしたもんかねー……なんて説明すればいいのやら。
「そんなことねーよ、人間みんながみんなそうじゃないぜ。だってほら、俺とかあのお姉さんはお前たちのことを助けただろ? そんな良い人達の仲間だから良い人だよ」
「えっ!? おばけさんニンゲンだったの!?」
「逆に聞きたいんだけどさ、俺を何だと思ってたの?」
「カラスのオバケ!」
「そ、そうだな……じゃああっちのお姉さんは」
「ヨロイのオバケ!」
「そうだったな……」
てか鎧のおばけってなんだよ。
「じゃあ……はい、おねえちゃん!」
「ありがとうございます」
シロナは笑顔でレフランに右手を差し出すと、レフランはそれを両手で優しく包んでいき手のひらを親指で触り始めた。
プニプニプニプニ
「あぁ……凄い……」
薬キメてる人みたいになってんな。
レフランの顔が溶けたアイスみたいになっとる。
「あっそうだ! カラスのオバケはおいしゃさんなんでしょ!?」
「カラスのオバケって長いからサハタダってよんでくれ。あとそっちの鎧のお姉さんがパトリック、その溶けそうな女の子はレフランだ。でだ、俺はお医者さんだけどそれがどうした?」
「サハタダ! おかあさんのカラダなおして!」
「おねがい! おかあさんをたすけて!」
「病気にかかっているのか?」
「わからない! おクスリもきかないからみんなどうすることもできなくて……」
……そうか、もしかしてあのおっさんが戻ってくるなって言ってた理由は風土病のせいってこともあるかもしれない。
あのさっきの薬あればいくらでも治せるし、偵察兼観光がてら獣人が住んでるところを見るのも悪くないな。
まー薬を使えば嫌でも目立ってはしまうが……救える人がいるのなら救っといた方がいいしね。
「……わかった、行こう」
「「やったー!」」
スワニとシロナは二人そろってそう言うと、互いに見つめあいながら両手を掴んでその場でぴょんぴょんと飛び跳ね始めた。
「け、けどスワニとシロナ、君たちの家に人間である私達が上がり込んでいいのか?」
「だいじょーぶ! わたしとおにいちゃんたすけてくれたみんないいひと!」
「そうか……な……」
「……なあパトリック、何か不安なことでもあるのか?」
「えっ!? いいっいや、そんなことは……ないぞ!」
うーむ、こいつ嘘つくのが下手だな。
まあここで言わないってことは俺たちに関係する重大なことではないんだろうし、本人もこう言っていることだし無理に聞かなくてもいいか。
「じゃあお前ら、道案内頼んだぜ」
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