その31 未知との遭遇
「このハート型の葉っぱ……これがソプテマ草ですね」
「マジかよめっちゃあるじゃねーか」
とりあえず森の奥に足を進めて徒歩30分ほど移動していた。
すると突然、枝で隠れていた空が顔を出した……つまり開けた場所に移動した。
そこにはソプテマ草が一面にあり、数はよくわからないがとりあえず沢山と言いえるほど生えている。
この草特有の匂いなのだろうか、ハーブのような透き通ったいい匂いがあたり一面に漂っていた。
そして……周囲を見渡しても特に気になる点はない。
「私は向こうに行き30本ほど積んでくる。君たちは60本ほど摘んでおいてくれ」
「お……おう、いってら」
ソプテマ草だらけの奥にどんどん進んでついに姿が見えなくなったパトリック。
中には時々2mもの長さのものがあり、パトリックの身長も170cmぐらいのせいでその奥へ行かれると全く見えなくなる。
……これ本当に大丈夫か? 本当に気になる点はないのか?
もしかしたらどこかにお札が貼られた石碑があったりして……いやそれはさすがに和風すぎ、この世界だとやっぱり魔法陣とかそういうのだろう。
「……ご主人様? 下を向いてどうされたんですか?」
……もしかしてどっかの地面に書かれてないよな? それでそれ踏んだら目の前にキラーが瞬間移動とかないよな?
「……ん? アイツらは……人間か?」
「ご主人様? 大丈夫ですか?」
「なんで人間がここに……いや、こりゃ強くなった体を人間でも試す良い機会だぜ……」
「ご主人様! ご主人―――」
バサッ
「イーッヒッヒッヒッ! 俺は元殺人鬼のザビロンであり【新人類の子供達No.6】! 瞬間移動を使ってお前の首を掻きって―――」
「まさか後ろから来たりしないよな!?」
クルッ
バゴッ
「あびょぐれぇぇぇぇぇぇぇえええええええええ」
ビチャ ビチャ
「……あれ? 俺今肘に何か当たった?」
「……? すみません、私も見てませんでした」
「そうか……」
……なんだか気味が悪いな。
あんまり長くいたくないしさっさと帰ろう。
えーっと、持ってきておいた麻袋に適当に詰めていく感じで。
「サハタダ! サハタダはいるか!?」
今のはパトリックの声か?
「何かあったんでしょうか」
「……嫌な予感がするな」
草を両手で無理やり押し込みどんどん奥へと進んでいく。
すると草の長さが膝より低い開けた場所に繋がっており、その真ん中らへんでパトリックは地面に向けて何か必死に訴えかけていた。
「サハタダ! 君は医者だったよな!?」
パトリックはこちらに気が付いたと同時に、切羽詰まったような慌てた様子で俺に疑問を投げかけてくる。
「子供が二人血を流して倒れているんだ! 何度呼び掛けても意識がないし……だから、それを直せるような薬をこっちに投げてくれないか!?」
えっ!? 子供が血を流してって大事じゃねーか!
「いや俺がそっちに行くから大丈―――」
「来るなッ!」
「……は?」
来るなって……どういうことだ?
「……そ、そこから私に薬を投げて使い方を教えてくれるだけでいい! だから大丈夫だ!」
この異常事態で医者である俺を近づけようとしないなんてどういうことだ?
パトリックには医者の経験があるなんて聞いてなかったし……もしかして何かを隠そうとしているのか?
……ちょっと嘘ついてみるか。
「いやいやどの怪我があるかで薬使うかによってそんなの変わるよ! それにお前が思っているほど薬の使い方は簡単じゃない! それで子供の症状がさらに悪化したらどうするつもりなんだ!?」
もちろん俺なんかが薬を持っているわけないし、手順なんて関係ないし、症状が悪化するなんてことはない。
これを聞いたパトリックはどう動く?
「……いや、そんなことはない! 私が間違えないようにしっかり―――」
「あーもういい、時間の無駄だ」
子供が血を流して倒れてんのにこんなことする暇なんかないだろ。
「待て!」
俺が一歩近づくとパトリックはそれを止めようと立ち上がったが、それよりも俺が子供たちを視認する方が早かった。
そしてそれと同時に言葉を失った。
そこに寝転んでいるのは確かに血だらけで音をたてながら息をしている子供……だがとても人間には見えない。
全身から茶色の毛を生やしており、頭からはそれとはまた別の茶色の髪の毛のようなものが生えていた。
尻尾も生えてるし、手のひらに肉球があるし、頭には耳が生えているし……犬? これは犬なの……もしかして獣人ってやつなのか!?
いやーまさかお目にかかれるとは思ってなかった!
こんな時に言うのもあれだけどまさしくファンタジーってやつだな。
……まあそれはいいとして、よくよく見ると曲がった骨や中身が見えてる傷口があったりと痛々しいので早く治してやらんと。
回復魔法をここで使うと他に見られるかもしれないから、こういう時は し ょ う が な く チートで薬を出して使うか。
……種類はなんでもいいから、とりあえず全回復する薬か何かがあれば。
△system
白く透き通った水 ×1 を取得しました
△system、
説明:白く透き通った水
世界に1本しかないと言われている試験管に入った水
これが体に触れた者は、どれだけ肉体が潰れていようとも、体力と魔力を全て回復できる
タリスが薪へ贈った試験管は、のちに三つの国へとわたり、それは貴族達に夢を見せた
だが研究者達は知っていた
それは永遠にできることのない、生物には決して不可能な、神の領域なのだと
説明も問題なさそうだし変な薬ではないだろう。
これをポケットから取り出したかのように見せて……と。
「その薬は何の薬だ!?」
「俺の作った薬。いいから黙ってみとけ」
正直パトリックの前で使うのはマズいような気がしなくもないが、だからといって助けるたことができる瀕死の子供をほったらかしにすることもできない。
さーてこれをどれだけかければいいんだか……とりま半分半分でいっか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます