その27 サハタダの内心

「……やばいな」


 武闘家こっち来てるぅぅううう!!

 やっべえよめっちゃ俺のこと探しに来てるよ! なんならちょっと感づいてそのこと聞きに来てるよ!

 

 どおおどどおすればいい!? ここからレフランを置いて外に行くか!? 

 いや、けど出入口は一つしかないしもう店の前まで来てる!

 

 じゃ、じゃあコスチュームを入手して変装する……いやこの服脱げねぇぇええ!!


 おっ落ち着け落ち着け。

 正直今レフランがいないこの状況はラッキーだ。

 せっかくこの状況があるんだし、どうにかしてバレないようにしなければ……いや、そういえば俺には魔法がある!

 こいつを使えば体が見えなくなるじゃん! なんだ、最初からこんなに考える必要なんて——。



△system

 魔法見えない体/ヒドゥンボディは一日に一度しか使えません。



 えぇぇぇえ!? まさかの制限付き!?

 いやまあ確かに敵から見えなくなるって強いし何かしらのデメリットがあるのもメタルギアで経験したからわかる。

 けどそれ入手した時にログで説明しろよぉぉぉお!! 

 

 くっそどうする!? チートコードを使えば書き換えて無限に使えるようにもできるかもしれないがそんな時間はどこにもない!

 もっと手っ取り早く見た目を変更できる方法が……ん? ユーザーインターフェースにあるキャラ画面の……性別?

 も、もしや……。


△system

 性別:男→女 変更を決定しますか? いいえ →はい



 ムニュ


 うえぇ!? おっぱいいきなり大きく!?

 ちょこれ……本当に女になってるぞ! エロ漫画か何か!?

 ……いやしかし、なんだか男の体よりムチムチしてて動きにくいな。


「あ、あの~ちょっとサハタダさん!」


 この声はもしかして武闘家か!?

 あっぶねぇぇぇえバレるところだったぁ。

 と、とりあえず落ち着け、落ち着け俺……いや私。


 クルッ


「んー……誰?」


 おっ、女の私を見て驚いているってことはサハタダだって気が付いてないみたいだな。

 ……だがめっちゃ胸とかお尻とか見てくるあたり怪しんではいるようだ。

 不審に思われないようにこっちから尋ねてみるか。 


「誰だお前? つーか私のことそんなにジロジロ見てどうしたん……ああ、そういう」

「ちっ違うわよ! あー……えっとその……あー……あなたには兄か弟がいるでしょ!?」


 えっなにその質問。

 これは……普通に答えるか。


「いないけど」

「そ、そう……ごめんなさい人違いでした!」


 よっしゃぁぁあああ勝ったぞぉぉォおお!!

 めっちゃガッツポーズ握りてぇ。

 いやーそれにしてもバレなくてよかった、そうなったら絶対面倒なことになるだろうからな。

 とりま武闘家が酒場から出たらさっさと男に戻るか。

 なんかこの体だと胸が大きいせいで方が張るし、お尻とズボンがぴっちりすぎて動きにくいんだよな——。


「ご主人様、ただいま戻りました」


 あっ。

 

「……えっ、あれ? レフランさん……?」

「あれ、武闘家さん。もう話し合いは終わったんですか?」

「は、話し合い? ……いやそんなことよりもなんであなたがここにいるの?」

「私はご主人様と一緒にご飯を食べに来ました。」

「ナイスタイミングね! サハタダさんはどこにいるのか知ってる!?」

「そこにいま……あれ?」


 やっべぇ。


「……あのー……どちらさまでしょうか?」


 やっべぇぇえええええ!!

 まさかのタイミングで戻ってきたぁ!!

 どうする……ここはごまかしてみればいいのか!?


「……えっ、わ私!? い、いやー私は旅人だよ! うん!」

「……」


 めっちゃ怪しんでるよ!! うわめちゃくちゃ見てくる!!

 これ敵が一人から二人に増えてんじゃねーか!


「ねえレフランさんどうかしたの?」

「さっきまでこの席にご主人様と私で座っていたんです。なのに……間違っちゃったのかな……」


 もう無理だ、早くここから出て逃げよう。


「こっここの席を使うならいいよ! わあっわた私ちょーっとよう、用事思い出したから!」


ガタッ

チャリン


「待って、認識票落としたわよ……って!?」


 あっ。


「……サハタダ・イネプトの認識票?」


 これが運最低ランクの実力か。

 本格的にマズくなってきた……武闘家の目が疑いから警戒に変ってる。

 どうにかしないと最悪本人なのに憲兵軍かなんかに通報されるんじゃ……!!


 ……あーもうめんどくせぇ。

 作戦変更!


蔓延る眠りスペリングスリープ

「ふえっ……ふえぇ……」

「なっ!? あんた——」


 とりあえずレフランに魔法を当ててからの——。



 △system

 性別:男←女 変更を決定しますか? いいえ →はい



「……あもうまじ勘弁してくれ」

「えっ……えっ!? 何々!?」

「何って……俺だよ、サハタダだよ」


 めっちゃ驚いてんな。

 まあそりゃ目の前の人の体の形がいきなり変わったらそら誰でもビビるよなぁ。


「いや、そんなあなたさっきまで女だったじゃ——」

「んなことよりも話をしに来たんだろ? あ、店員さんすんませーん椅子一持ってきて~……でだ」


 確かにこの女にはバレてしまったが……けどまだ俺の戦いは終わっていない。

 これからどうやって説明していけばいいのか……それを考えねえと。


 ……めんどくさっ!!

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